| 予選のドライバーは平澤。
タイヤの摩耗とエネルギーを節約するため、最低周回数で済ます。
調整のためにモーターを触っている時に、なんとオフィシャルの計測ミスで、もう1周走れという。
予選残り時間10分弱、大あわてで組み立て直し、コースに飛んで戻るが、今度は時間切れで、今の一周は無効だという。
下手な英語の怒号が飛び交う中、今度は、「周回は足りているよ」との訂正が入る。極めてギリシャ的な対応に戸惑いながらも予選は2分6秒という好タイムで4位に付ける。
本戦第一ヒート、4番グリッドと好位置からのスタート。ハンドルを握るのはロケットスタートの高橋。
順調に周回を重ね、ラップタイムから推測するに3位を伺おうかとの状況であったが一転する。
6周回目にモーターから異音、スピードが出せなくなり、ピットロードを過ぎたところでストップ。FIAのルールでは、ピットクルーはコースに入ることはできない。サンレイク号はゆっくりと再スタートし、歩くようなスピードでコースを自力で一周してピットに戻る。
早速 異音がするモーターを分解すると、モーターの回転子の磁石が剥がれてしまっている。
しかしトラブルには慣れているチームサンレイクにとっては、この時はまだ、このトラブルの本質に気がついていなかった。
剥がれた磁石を元通りに貼り付ければ、なんとか修復できると考え、貼り付け作業に入る。剥がれた磁石の裏側に残っていた古く劣化した接着剤をヤスリで落とし、新たに接着剤を塗り硬化を待つ。
この時点では硬化さえすれば第2ヒートは出られると楽観視していた。
しかし、硬化後にモーターを回すと期待とは裏腹にシャックリするような不安定な走り。高橋に言わせると状況は変わらないとの事で、再度モーターを分解し剥がれた磁石の磁極を確認する。
小さな磁石を近づけて、加わる力の向きで、剥がれてしまった磁石の部分を詳細にチェックすると外周部の磁極が逆になっている。これではスムースに回るわけが無い。
おそらく剥がれた際に磁石がコイルに触れ、コイルの発熱に摩擦熱が加わりキュリー点を越えて、その部分の磁性が消えてしまい、正常な部分の影響で逆極性が誘起されてしまったと思われる。
磁性がおかしくなった部分を切り落とし、その部分に正規の方向に新しい磁石を埋めない限り、まともな回転は得られない。しかし、脆い磁石を切り分けるための工具も、代わりになるような都合の良い向きに磁化された磁石もここにはない。
第2ヒートは絶望的であり、それどころか、このままでは、翌日からのラリーのスタートラインに立つこともできない。ようやく事態の深刻さを悟ったチームサンレイク、暗く重い沈黙がピットを支配していた。 |