■■■ <概要> ■■■
ソーラーカーラリーin能登は、1990年に北陸3県(石川、富山、福井)と電機、電力関係の各種団体、北陸経済連合会などが設立したグランドソーラーチャレンジ(詳細別項)の一環として行われた。第一回、1992年の大会は、国内でソーラーカー人気が高まってきた時期と一致し、主催者発表では15万人の観客が観戦したと伝えられている。競技内容は、悪路(砂地)と自動車専用道路の両方を使ったユニークな内容で、当時ソーラーカー実用化に対する期待が高かった事が反映されているように思われる。
全102台の参加は世界最大級規模であった。参加台数内訳を詳細に見るとグランドソーラーチャレンジ構成企業からの参加車両が25台を占め、特に電力会社からの参加が目立つ。メンバーについては社内公募等も行われたようであるが、車両は必ずしも手作りされた訳では無く、レーシングショップなどに製作が依頼された物も多かった。*9)*10) この時期、工業高校からの参加は3台と寂しい。
イベント終了後、ソーラーカーラリーを含むグランドソーラーチャレンジの運営をどのように引き継いでゆくかについて、石川県県議会にて取り上げられた記録が残っている。これらのイベントによる北陸経済全体への活性化効果も期待されていたことが伺える。*8)
第2回目1996年の大会では公道使用許可が下りず、なぎさドライブウエイだけを使った小規模な競技内容になってしまったが、海外7カ国から10チーム、国内59チーム、合計69チームが参加した。
1992年次に、砂地でスタックする車両が続出した反省を受け、1996年次はコース全面にプラスチックメッシュが敷き詰められ、折り返し点はアスファルト簡易舗装によるコース整備がなされた。*6)
主催団体であるグランドソーラーチャレンジ事業継承委員会が休眠に入ったため、以後は開催されていない。
■■■ <詳細> ■■■
1.ソーラーカーラリーイン能登1992
開催時期 *1)
整備 車検 1992年8月22日〜29日
本戦 1992年8月30日
場所 石川県能登半島
主催 (第一回)グランドソーラーチャレンジ推進会議 *2)
(第二回)石川県グランドソーラーチャレンジ実行委員会
(
内容
周回競技:なぎさドライブウエイ(砂地)と、平行する
能登有料道路(今浜インター〜千里浜インター間)からなる
周回コース 約11km/周
往復競技:周回コースを回った後
能登有料道路(千里浜インター−終点穴吹町比木)約60kmを往復。
全完走車が折り返し地点にゴール後、指定時刻に再スタートする *1) *5)
参加者
周回競技に50台、往復競技に52台、全102台出場 *1)*4)
海外から8台参加。
参加チーム一覧
クラス *5)
車体寸法はWSC準拠
カテゴリー1限定 パネル定格800wp以下 鉛バッテリー
カテゴリー1フリー パネル面積8m2以下 バッテリー2kwh以下
カテゴリー1フリー 2人乗り
カテゴリー2 2人乗り、4輪、限定無し
結果
往復競技
優勝 ホンダドリーム *3)*13)
2位 京セラA(SCV-2) *13)*14)
3位 SOFIX「PFU」 *13)
4位 中部電力「走快陽太」(3位同点) *18)
5位 日産 *13)
28位 チームドラえもん *13)
周回競技
優勝 トヨタRaRaII *12)*13)
2位 ビール工科大学 *13)
3位 関西電力・庄川(にゃんだソーラ)*13)
5位(特別賞)中部電力・関営業所 *10)
学校の部で県立工業高校が第一位 *8)
日本(世界)最大のソーラーカーイベント、当日の観客動員数15万人。*1)
往復競技のは、区間目標時間の正確さを競うラリー競技で、ペナルティは早着:−3点/秒、遅着:−1点/秒と定められていた。暫定発表順位は
1.SOFIX、2.ホンダ、3.日産、4.京セラA、5.中部電力
であったが、SOFIXと日産がチェックポイント直前で停車して時間調整したとのことでペナルティ−10点を科せられ、先の順位となった。*18)
往復競技に出場した育英高専チームの「SP-IMPULSE」は、バッテリー切れで止まった車両をドライバーが手押しして走行を継続、疲労困憊のため意識朦朧となったドライバーを富山高専チームメンバーが励まし、最後は一緒に手押しして競技終了3秒前にゴールしたという。*17) 手押し走行は、本来は規定違反であり、その場で制止すべきものであると思うが、この当時はまだ、その場の雰囲気で容認するような「おおらかさ」が残されていたのである。
ロシアから参加したポポロフ一家のソーラーカー「MOSCOW」は自転車を改造した足こぎペダルを持つ人力とのハイブリッドソーラーカーであった。この様式自体は、スイスのツールドソルでは一つのカテゴリーとなるほどにポピュラーな物であるが、能登のレギュレーションの想定範囲外であるためドライバーズミーティングで問題となった。規則書のロシア語訳が用意されていなかった事が主催者から明かされると参加者から参加に同意する暖かい拍手が起こったとのエピソードが伝えられている。周回競技に出場したポポロフ氏は観客からの大声援を受けて力走した。*17)
2.ソーラーカーラリーイン能登1996 *1)*6)*15)*16)
開催時期 *6)
受付・車両搬入 1996年8月21〜22日
車両検査 1996年8月21〜23日
(ここまでは、金沢市の石川西部緑地公園内)
本競技 1996年8月24日 (予備日25日)
場所 石川県能登半島
主催 石川県、石川県グランドソーラーチャレンジ実行委員会 *2)
支援 (財)北陸産業活性化センター *2)
石川県商工労働部観光推進室 *6)
NHKエンタープライズ21 *6)
内容 *6)*7)
「なぎさドライブウェイ」特設周回コース(一周7km)
学生クラス 午前 2時間(8:30〜10:30)
オープンクラス 午後 2時間30分
参加者
国外7カ国から10チーム、
国内から59チーム、合計69チームが参加 *1)
石川県内 14台 北陸三県 22台 *8)
観客動員数 約3万人(主催者発表) *15)
参加チーム、結果一覧
カテゴリー 学生の部、オープンの部
クラス Fクラス、Sクラス、Jクラス 詳細不明(2005.11.13)
結果
オープンクラス優勝 ジョージ・ワシントン大学 *2)
学生クラス優勝 若松第一高校 *2)
関西大学 WINGLARE III 学生の部10位、ジュニアクラス5位 *7)
■■■ < グランドソーラーチャレンジ > ■■■
1990年(平成2年)8月、通商産業省の指導により、地球環境問題、エネルギー問題についての啓蒙を目的とした「グランドソーラーチャレンジ推進会議(以下GSC推進会議)」が設立された。電機、電力関係の各種団体と北陸経済連合会、(財)北陸産業活性化センター、石川県、富山県、福井県などが設立賛同者となり、その活動は北陸地方を中心に展開された。活動内容は以下の通りである。
ソーラーエネルギー国際フォーラム(全国各地6カ所)1991.09.23 - 1992.07.09 *2)
ソーラーボートレースイン三方五湖(1992.08.23:福井県三方五湖) *2)
ソーラーフェスティバルイン金沢(1992.08.22:金沢市内)
ソーラーカーラリーイン能登(1992.08.30:石川県能登半島)
ソーラーエネルギーキャラバン
・ 前期(1991.08.20 - 1991.11.03:全国27カ所)
・ 後期(1992.04.11 - 1992.08.29:全国10カ所)
ソーラーエネルギー国際シンポジウム(1992.09.05-06:金沢市内)
ソーラーカーラリーin能登参加車両の中から、北陸電力チームの「ほくでんフェニックス」がGSCを代表してWSC1993に参加した。詳細は別項に譲る。
GSC推進会議は1993.01に解散し、1994.11GSC事業継承委員会が設立された。活動内容は以下の通り。
グランドソーラーチャレンジ国際会議1995.10.07、千葉県幕張「シャープ幕張ビル」
ソーラーカーラリーイン能登 '96 (開催支援)
GSC事業継承委員会1996.10に計画事業をすべて終え休眠中。事務局は(財)北陸産業活性化センター *2)
■■■ <資料> ■■■
*1) モータースポーツの部屋(金沢工業大学・夢考房、山岸進氏のサイト
http://www.spacelan.ne.jp/~y-susumu/index.html
Solar Car Rally in 能登 '92
http://www.spacelan.ne.jp/~y-susumu/page034.html
http://www.spacelan.ne.jp/~y-susumu/page036.html
Solar Car Rally in 能登'96
http://www.specelan.ne.jp/~y-susumu/page032.html
http://www.spacelan.ne.jp/~y-susumu/page037.html
*2) 財団法人北陸産業活性化センター(Hokuriku Industrial Activation Center)
http://www.hiac.or.jp/main_2.htm
実施事業
http://www.hiac.or.jp/works/index.htm
プロジェクト支援事業 グランドソーラーチャレンジ
http://www.hiac.or.jp/works/03_02/
*3) 本田技研労働組合(Labor Union of Honda Motor Co., Ltd.), http://www.honda-roso.or.jp/guest/history/index.html
*4) 久留米工大ソーラーカーVirtual Automobile Research Institute (VARI), http://www.cc.kurume-it.ac.jp/home/general/fujii/vari23.html(閉鎖中)
*5) 後藤公司著,「ソーラーカー」, 日刊工業新聞社, pp163-167, 1992.02.29.
*6) ジョナサン オービットタイムス ソーラーカーラリーイン能登'96情報
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/gsc.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/noto96.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/notokara.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/n22_2100.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/n23_0700.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/n23_1200.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/n23_1800.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/n24_1200.html
http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/n24_1800.html
結果 http://www.jonasun.com/oldsolarcar/info/noto96rs.html
*7) 関西大学太陽エネルギー研究会 ソーラーカーラリーin能登1996結果情報
http://www.kunitake.org/solar/race/noto_result.html
*8) 石川県議会議員 北野進のサイト, http://www.nsknet.or.jp/kitano/
石川県議会 1992年(平成4年)9月議会
http://www.nsknet.or.jp/kitano/92.9giji2sora.html
*9)Michiro Eguchi,Solar Car Design,"Car Styling",vol.93,1993.03.31.
*10) Shinoda Racing Shop, http://www.ccn2.aitai.ne.jp/~srse4510/infoproducts.htm
*11) ソーラーカーラリーin能登 公式プログラム
*12) http://www.spacelan.ne.jp/~y-susumu/page036.html
*13) 特集:ソーラーカーが走る日,「'93 the Car 世界の自動車アルバム」, 東京交通毎日新聞社, 1993.01.01.
*14) Tadao Takimoto, "The Arts of Management", East Press, 1999.01.30.
*15) ソーラーシステムズNo.66,p39,ソーラーシステム研究所,1996.09.16.
*16) ソーラーカーラリーin能登'96 公式プログラム,1996.08.24.(江口倫郎氏提供)
*17) SOLAR NEWS FLASH Vol.1,「ソーラーカーラリーイン能登'96」事務局,1995.09.(江口倫郎氏提供)
第一稿 20060225
追記改訂 20060618
追記改訂 20061027
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太陽能車考古学研究所 2006.01.01