The Place in the Sun

三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP
DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2008

2008鈴鹿 予告編

「SUNLAKE EVO 製作記」
How to Make the SUNLAKE EVO

Volume 5



SUNLAKE EVO ロゴ・ペイント用の特大テンプレート

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 試走会は無事終了、何年ぶりかにドライコンディションで走れた貴重な試走会だったのだが、積算電流計が動作せずデータ無しに終わった・・・トホホなところだが、ドライバーは二人ともニマニマしていたので車体の調子は良かったのだろう。試走会翌日はヘロヘロの身体に鞭打って東京日帰り出張だった。後一ヶ月、残課題は山積みである。

2008年7月2日 コクピット横の補修

 試走会でドライバーが乗り込む際に手をついてしまい「パキッ」という乾いた良い音と共に、補強スチレンボードが割れてしまった。「クニ〜」とならなかったのは補強構造が良かった証拠である・・・・と勝手に自己満足。



エポキシ樹脂を含浸させたカーボンクロスを貼り付け、添え木とクランプで押さえ込む


上から見るとこんな感じ。上下にも水平方向にも押さえ
なければならない場面ではクランプの個数が物を云う。
 メンパパ氏から鈴鹿のサブイベント「ピットツアー」が主催者お抱えのイベント代理店からレースキング氏に丸投げされたとの連絡有り。個別チームとの交渉もキング氏に依頼されたとのことだが、個別交渉を丸投げしておきながら、参加チームの連絡先は教えて貰ってないとのこと。こういうのは主催者の仕事だと思うのだが。で、唯一間接的なコネクションがあるメンパパ氏経由で当チームにコンタクトいただいたという次第だった。相当御難気の様子。

2008年7月4日 キャノピー部分の補強

 キャノピーを取り付けた部分は、カウル中央の稜線を含む部分。あらかじめ補強も入れておき、刳り抜いた際には十分強度がありそうに思えたのだが、填め合い加工に四苦八苦している間に前方部分の補強カーボンを剥がしてしまい、/\山型形状を自己保持することが出来なくなってしまった。そうなるとキャノピー取り付けの際に上から押さえると底辺が広がり、ますます填め込みにくくなってしまうのである。

 と、云うことで、


カーボンクロスを貼り付け、予め作っておいた木型で挟み込む


/\山型の角度をボディに合わせるのに木型必須。
実は形状はもっと複雑なのだが、これは翌日のお楽しみ。
 さらに、この日からメンパパ氏との合同マル秘プロジェクトが開始された。車も出来てないのに、そんな暇が何処にある?と、突っ込まれそうなので中身は内緒。


2008年7月5日 この日は、試走会の勢いのまま監督も参加して4人で突貫作業。



キャノピー前補強部、硬化完了


同、拡大 かなりクロスがはみ出してしまった。トリミングしなければ。
 新車の目玉の一つはPV入れ替えだが、入れ替えるのは16枚。残り4枚を旧パネルの中から選り分けなければならない。ソーラーシミュレータ等という上等な機器は無いため、これがなかなか簡単そうでやっかいなのである。

 

空を睨み、雲が切れた隙にサッとパネルを日なたに出して発電量をチェック。
日照は一定ではないので、なかなか全部を一律に比較することは出来ないので、
短時間に数枚を比較し、勝ち負けで選別を繰り返す気長で暑い作業なのだ。


ステアリングの感触がイマイチなようで、一度分解してみることになった
 
 どうやら、ラックピニオンの直線ギアとロッドの接続ジョイントがくたびれていた様子であった。この手の部品は定期的に交換したい所だが、なかなかそこまで気とカネが回らない。分解したついでに、前からその重さが気になっていたユニバーサルジョイントの軽量化も行いたいところだが、リスクと時間と効果を頭の中で天秤にかけ、今回は見送ることになった。(昔、ハンドル壊れてリタイヤ寸前に追い込まれた苦い経験もあるし・・・・・・・)

 さて、次は試走会直前に気が付いたバッテリー搭載台の補修である。単に角にカーボンを貼り足すだけでは構造的な解決にはならない。なんとか上に引っ張り上げる要素を組み込みたい。なにせ片持ち棚構造で、片側40kg重のバッテリーがドサっと乗せられる時の衝撃荷重と、それが走行中にユサユサと揺すぶられる連続負荷に耐えねばならないのである。


と、いうことで写真のように三角板を取り付けてみることにした。
 さて、取り付けるのはサスペンションの真横、さらに後付リブがすぐ上にあるという、かなり込み入った場所である。引っ張り上げるためには、単に、この場所に貼り付けるだけでなく、底板とシャーシ側板の両方にしっかりと接着しなければならない。本来ならば、今から一ヶ月前の状態、すなわち機械系も電気系も組み込んでないカーボンコンポジット部分だけに戻して作業するべきなのだが、とてもそんな時間は無い。少々横着ではあるが、思案と木工のしどころなのだ。


カーボンクロスを広げて作業開始


こうやって貼り付けようという作戦である。
 
 クロス一枚でも可能なはずだが、あまりに複雑すぎる形状だと作業中にクロスがバラバラに解れてしまいかねず、二枚に分けることにした。それでも織り目を斜めに切断する箇所が出来てしまうため、切り抜いた際に周囲が解れないように、あらかじめセロハンテープを軽く貼り、セロハンテープの上から外形を罫書いて切断する。そのクロスを、まず三角板にクロスの端がフリーになるようにエポキシ樹脂で貼り付けておく(写真、撮るりわすれました)。今日の作業はここまで。


2008年7月6日 

 さて、昨日のうちに準備した三角板と、床下の補強となる平板を合わせて接着する少々複雑な貼り込み作業の開始である。

 
 まず三角板を所定の場所に置く。フリーにしておいたクロスの端部を床板に挟み込んで積層行くのだが、その前に、さらに上に引っ張り上げるチカラを強化するため、三角形自体をシャーシ本体に縛り付けることにした。縛るのに使った糸は、ザイロンクロスを解して得た繊維を手撚りした特性糸である。

 シャーシのコクピット内側の床に開けた貫通孔と、シャーシ壁面に元から開いていた孔(バッテリー固定用ベルトを通す孔)を利用して糸を通し、3重に巻き付けて縛った後、硬化剤を多めに配合(粘度を下げ、硬化速度を上げる)したエポキシ樹脂を染みこませて素早く固めてしまう。この上からさらに一枚、曲面にフィットさせやすいザイロンクロスを重ね合わせ、床板のカーボンと重ね合わせるのである。



 押さえ板、あて板準備完了。 積層枚数が多いと、クロス継ぎ目の段差が大きくなり、単なるベニア板では完全に押さえつけることが難しい。硬めのクッション材が欲しくなるわけだが、ここではレジャーシートをクッション材代わりに使っている。この季節、DIYショップのキャンプ用品売り場で安売りされていることが多い。アルミ箔面側をボンドG17でベニア板貼り付け、裏側の青い面が押圧面に使う。ポリエチレン製なので、離型フィルムがずれたりしても、接着してしまうことがない。
 
左:まず壁面と床面に樹脂を塗る。

右:カーボンクロスにも予め別の場所で十分に樹脂を含浸させる
  この時、はみ出した樹脂は丁寧に拭き取っておく。
 
左:クロスと底板を、角が浮かないように重ね合わせる。

右:重ねた後は御覧のように、あて板と重りで面圧を加える。
  片持ち棚のままで重りを乗せると項垂れ方向に曲がってしまうため、
  予め逆方向に反るようにシャーシの端を台に乗せて浮かせてある。


両側を仕上げた後、今度は側板側にも押さえるよう特大木製クランプで挟み込む。
 
作業終了。上下、左右、前後に面圧をかける複雑な押さえ方。二日がかりの準備と作業であった。
 
勢いで、車体塗装を開始した。 脱「ブリの照り焼き」プロジェクトの着手である。
少しでも軽くしたいので(水性ペイントって意外に重い)、裏側の見えない部分は未塗装。


焦げた皮が白く塗られて、照り焼きには見えなくなった。
が、この三色カラーからは太めのシマヘビを連想してしまう


「to do」リスト。まだまだ課題山積み
2008年7月9日


バッテリー台部分の、あて板を外してみた。なかなかGoodな仕上がり。強度も十分


キャノピー尻尾部分の塗装のための養生中。


カウルの太陽電池パネルで隠れない所(コクピット周辺)を先に塗装

2008年7月11日 夕刻〜夜 立命館大学

 試走会直前に車両を大破させてしまった立命館大学。太田鉄工所の助けでシャーシはなんとか修復されたが、カウルの方は手を付けられず、旧車「ヴィマーナ」を使っての試走になったのは「2008試走会レポート」で紹介した通り。

 当初は、本来のブラタリウスのカウルを修復する方針だったが、試走会での状況を見て、ヴィマーナのカウルにブラタリウスのパネルを組み合わせて出場するのが得策と助言した。カウル自体の空力特性は断然ヴィマーナの方が良いのだ。なにせ、サンレイクがチャレンジクラス4連覇したときのカウルそのものなのである。


引き出された「ヴィマーナ」=サンレイク1999-2002モデルのカウル
 問題は、今現在ヴィマーナに貼られている太陽電池パネルがボロボロに割れている点。割れたパネルを剥がし、ブラタリアスのパネルに張り替えなければならない。そのためには両車両のパネル、合計40枚をいったん剥がさなければならないのである。おまけに、ヴィマーナのパネルはシャープNT3432BD、一方のブラタリアスは昭和シェルのセルを使ったKISのFT132-E サイズが違うのでパネルレイアウトも練り直さなければならない。

 前置きが少々長くなったが、「ヴィマーナのカウルを使うことにする」という彼等の判断をうけて、ならばパネルの剥がし方を伝授しようと、この日某監督と僕が立命館大学を訪問することになった次第である。そもそも今現在のヴィマーナの太陽電池パネルが使い物にならないのは、彼等の先輩がさらにその前の車両に貼られていたパネルを乱暴に剥がしたからに他ならない。パネル剥がしの経験者は現役学生メンバーには一人もいないのである。

 作業を始める前に、彼等の計画を聞いて、早速某監督の雷が落ちた。

(1) パネル配置案がなってない。

   FT132の方がNT3432BDより大きいため、全く同じには貼れないのであるが、それにしても、もう少し工夫しようが有るだろうと、さっそく段ボールを使った模擬パネルを車体上に並べての練り直しが始まった。紙の上(平面)だけではなく、実物=立体がある訳なので、それを十分に活かして欲しいところだ。これはまあ、予想の範囲内であったが、さらに

(2) エネルギーマネージメントの概念が・・・・・・。

 レース戦略をどうやって立てるか?という話がどうしても噛み合わない。どうやらバッテリーに予め蓄えたエネルギーに、太陽光発電で得られるであろう予想エネルギー量を足した総エネルギー量を見積もり、それを一周あたりに必要な消費エネルギーで除して目標周回数を決め、計画的に走るという思想そのものが欠落していたようだ。



某監督の説教を受ける羽目になった現役メンバー達
 彼等のために少しだけ弁護しておこう。

 最近出版された「エコ電気自動車のしくみと製作」を含む新旧の参考書を改めて読み返してみたのだが、レース戦略をどのように立てるか?という基本中の基本がズバリ書かれている箇所は何処にも無いのである(あまりに自明すぎると云ってしまえばそれまでだが)。毎年、関東/関西で開催される太陽エネルギー学会の主催の講習会や、鈴鹿サーキット主催の講習会でも、話題の中心は各機械要素や電気要素の特性を如何に向上・改善するか、車両の総合性能を如何に上げるか?というところにあり、レース戦略論が解説されることはほとんど無い。

 もちろん、書いてある、教わる、ということでなく、周回数を増やすためにどうすれば・・・・と考えれば自明的に辿り着くべきところであるのは間違いないのだが。基本、総体を見失っている、という意味では、競技のあり方自体が混迷し始めている今年のソーラーカーレース鈴鹿自体の状況と同じなのかもしれない。

 某監督の説教は2時間半におよび、その間、僕は一人でパネルの剥がし方をコーチしなければならなかった(パネル剥がし方は製作編vol.1.を参照のこと)。彼等には申し訳ないがついでに書いておくと

(3) 刃物の使い方が下手。そもそもカッターナイフの刃の交換方法を知らない。

 職業柄、作業前には危険予知訓練を行ったのだが、早速、指を切る「赤チン災害」が発生した。そもそも危険を経験していない人に危険予知など出来るわけもないのだ。ともあれ、企業であれば管理職が事故報告書を出さねばならない事態である。

 学生の間にせいぜい軽い怪我をたくさん経験しておいて欲しい。君たちの責任ではなく、ゆとり教育と過剰な安全策の歪みに問題があったのだが、幼小中高と彫刻刀も持たせて貰えずに過保護下に置かれたツケは、これから社会に代わって自分が払っていかなければならないのだ。

ああ、今日は僕まで説教オヤジモードになってしまった・・・・・・


2008年7月12日


シャーシはこれで一段落。バッテリーボックスもギリギリだが搭載OKである。
 
 太陽電池パネルを装着して、はやく「ソーラーカー」にしたい。FT132-Eはバイパスダイオード外付けである。これが思いの外、大きいので、パネルから離して空中配線の中に仕込むことにした。突き合わせ向きの圧着端子には少々抵抗があるのだが、配線を横に並べての抱き合わせ圧着はヨシとしよう。

 恥ずかしながら、当初、バイパスダイオードの向きを逆さまに付けてしまい 全部やり直しになった。原因の99%は僕のミス、この場で懺悔。残りの1%は、某太陽電池メーカーが出願した特許の実施例の図面。逆さに書いてあるのである。このメーカーのPV製品は金輪際買わないぞ。
 

カウルに配線を通す小窓を開け、バイパスダイオードがくぐれるかどうかをチェックする
 

試走会で動作しなかった問題の積算電流計(センサー部は分流器)。単純な配線ミスだった。一安心
 

続 脱「ブリの照り焼き」プロジェクト
 さて、パネルを貼る前に一仕事、今回の車両ではチーム名ロゴを大きく入れよう、ということになったのだが、そうなると従来の、工業インクジェットプリンタで耐水フィルムに印刷しておいて貼り付ける、という方法が使えない。直接ペイントするためのテンプレートが必要になる。

 サンレイク専属デザイナーの指示に従い、テンプレートはトレードマークの三色斜めラインとSUNLAKEのロゴの二枚組である。


2008年7月13日 京都工繊大 学生フォーミュラチーム見学

 午前中、京都工芸繊維大学の学生フォーミュラチームが見学に来た。軽量化のため部品製作にFRPを導入したいとのこと。学生フォーミュラ競技についてはほとんど知らなかったので、こちらも勉強になった。

   午後は脱「ブリの照り焼き」プロジェクトの仕上げである。



楽しい工作 その1


まず、緑/黄/赤 三色ベルトをスプレー


同じく反対側


乾くのを待って SUNLAKE の文字をスプレー


最後にチャームポイントの赤い点を二つ入れて出来上がり

これで、もう「ブリの照り焼き」とは呼ばせない

2008年7月14日 タイヤ到着

 ダンロップ社の「SOLARMAX」 少なくとも僕が参加した2001年からずっとこのタイヤを使っている。災いの元凶になろうとは勿論夢想だにしていない。


2008年7月15日 金沢工業大学 欠場!?

 KITゴールデンイーグルが鈴鹿欠場との情報。何故に?と調べると、夢工房(複数のプロジェクトの総体、ソーラーカーもプロジェクトの一つ)の中での審査で落ちたとのこと。ブログなどで見る限り、今年も活発に活動している様子だったため不可解の一言である。モーターを自作するほどのハイレベルな学生チームなど、国内ではKIT以外に存在しない。激戦のチャレンジクラス上位で、並み居る社会人チーム、工業高校チーム(内実の主体は顧問の先生なので社会人チームみたいなもの)と互角に戦う唯一の学生主体チームである。

 当初のスケジュール通りに進んでいない、というのがその理由らしい。しかし、学期当初に判断されるなら兎も角、大会2週間前である。スケジュールの最終納期はもちろん大会車検日であろう。スケジュール終盤に、当初計画に対する細かな遅れや計画の食い違いなどは出てきて当然、挑戦的な目標であればあるほど、思い通りには進まないのが常だ。開発が進めば進むほど、着手時に想定出来なかった新たな課題が出てくるものだ。しかし、それでも最終日に間に合わせてしまえるかどうかが、工学的現場力の見せ場だと思っている。ソーラーカーを製作して競技に出場する、という事自体が教育的に見れば、このチカラを鍛えることに他ならない。後二週間、ここからが正にその時ではないか。その機会を奪うなど教育機関の行為とはとても思えない。

 必ず達成できる目標と納期設定を求めれば、前例のある、だれでも遂行出来るできる甘い計画しか立てれなくなる。そこに進歩は無い。


2008年7月19日 今日から3連休である。

 どうだ、これでブリテリなどと呼ばれることはないぞ、と自信を持って監督に見せたら、いきなりの駄目出しである。車体裏面と後輪スパッツが黒いのが(カーボンむきだし)お気に召さないようだ。

 前輪を覆うカバー部分が非常に大きいので全部を真っ白にしてしまうとデブく見えてしまわないか?と考え、車体下面にむかってグラデーションをかけてわざわざ黒くしてあるのである。炎天下の鈴鹿のホームストレートで見れば、車体下側が影になり、あたかも空中に浮かんでいるように見えるはずだ。

 と主張したが、聞き入れられず、哀れ、車体裏と後輪スパッツは監督の手で真っ白に塗られてしまった。


ここはチーム安泰のために、デザイナーさんの指示であると納得しておくことにしよう
 さて、全20枚の太陽電池パネルの内、4枚はシャープ製のNT3432BDである。このパネル、シリコンセルをフィルムでラミネートした物なのだが、端っこの部分が強烈に上反りしてしまうのである。ラミネートの際のテンション設定が不適切だとしか思えない。

 毎回、車体制作時には、この部分の処理で苦労する。粘着テープくらいでは矯正できないのである。放置すれば空気抵抗が増すばかりか、パネルが走行中に剥がれてしまうリスクも高くなってしまう。そのため例年は捲れ上がった所をコーキングで埋めていたが、このコーキング材の重さがバカにならないのである。

 今回は、この懸案をなんとかしようと、ヒートシーラーで矯正することにした。過去にもトライはしているのだが、ヒートシーラーで暖めた直後は反りが直るのだが、冷えると再び反ってしまったという。ならば、ヒートプレスの要領で、形状を矯正したまま冷やせば良いのだ。

 
 ヒートシーラーで、フィルムを十分に熱し、冷めない間にアルミアングル二本で素早く挟み、やや下ぞり反り方向に矯正して、シーラントが完全に冷えるまで数分間手で押さえるのである。アルミアングルが熱を奪ってくれるので冷却速度は速いはずだ。

 結果が右側の画像。上のパネルが矯正前、下が矯正後である。かなり改善されている。

 逆側は、配線がぶら下がっているので単純にアルミアングルで挟めない。少し工夫して、一部を切り欠いたアルミ板、押さえベニア板とアングルを組み合わせて同様に反りを矯正した。

 
 これまで、ほぼ初期状態のままモーターを使ってきたのだが、巻線密度向上まで踏み込んだ勢いで、さらにモーターのパラメータを細かく弄ってみることにした。そのためには、まずコントローラーのROMを書き換えねばならないのだが、これが毎回失敗していて、メンバーが常時使っているパソコンでは、どれを使っても上手く書き換えることができないのである。今回は、高橋が見つけてきた古いVAIOで挑戦、不思議なことに一発でOK。一体何処の相性が悪いのだろう???

 パラメーター切り替えは16進のデジタルスイッチなのだが、レーシングモードで走行中に皮手袋した手でこれを操作するのは不可能。表示も小さすぎて読めそうもない。かといって、コクピットは狭く、トグルスイッチを16個並べるだけのスペースは無い。勿論16なのでトグルスイッチ4つの組み合わせOKなのだが、サンレイクのメンバーは二人とも畑違いで二進数には慣れていないのである。

 困ったなあ・・・・・

 後輪タイヤ。 数日放置すると空気が抜けていたので、少々心配になりバルブ部分をよく見ると、やはりコーキングが剥がれかけているのが見つかった。どうやらここから漏れていたようだ。去年はこれで走っていたのかなあ?

 さて、いよいよソーラーの配線である。二人一組で、車体天板を縫うようにケーブルを通して行く。



パネルが載るとぐっとソーラーカーらしくなってくる

2008年7月20日



太陽電池パネルの仮付け完了。外に出してみる、いよいよソーラーカーだ。
 パラメータ切り替えスイッチは、結局16段階を4段階に端折ってトグル2個の二桁二進とした。ハンドルから手を離さずに操作できること、とのドライバーからのリクエストに応じ、取り付けはマジックテープ、位置は正面かサイドのどちらか、操作しやすい方を選択することが出来る。

 フロントの方向指示器取り付け孔開け。この部分はカーボンクロス2枚とザイロンが重なっていたため、カッターナイフは刃が立たず、ディスクサンダーが出動した。画像はバリ取り作業中のもの。

 パネル最端部の反りは直ったが、パネル全体が上側に引きつられるように反っている状態は矯正することが出来ず、結局安全を見て、端部をシリコーン樹脂でコーキングすることにした。それでも以前よりはかなり少ない使用量に抑えることができた。コーキング後は画像のように端部に重りを置いてコーキング材の硬化を一晩待つ。



そろそろ充電台を作ろうと材木を並べてみたが


この日は設計で力尽きた・・・・・。

2008年7月21日

 朝方、太田鉄工所に寄ってブレーキキャリパーのシリンダー部品を受け取る。なんとかこの三連休中に、一回は駐車場で試走させてみたい、そのためにはブレーキを仕上げておかなければ、ということで、三連休初日、引きずりが改善されないブレーキのキャリパーを分解し、部品加工を太田鉄工所にお願いしておいたのであった

 使っているキャリパーは、ディスクを挟む二枚のブレーキパッドの両方がフローティングしており、一度ブレーキを踏むと、パッド位置が元に戻るのに相当の時間がかかってしまう。その間ずっとブレーキを引きずったまま走ることになってしまうのだ。それではまずいので、パッドの片側を強制的に固定してしまいたい。そのためシリンダーにネジを切り強制的に固定してしまおうという策である。  結果は狙い通り、引きずりはバッチリ解消されたが、肝心のブレーキの効きが悪化。はたしてブレーキテストの関門をくぐることは出来るのか・・・・・・ともかくエア抜きを完全にやってしまわないと。

 ブレーキは少々心許ないのだが、さほどスピードを出すわけではないので、そろそろと試走。まずは、ベテラン高橋、次いで新人の北村。 続いて正午頃に発電量をチェック。うーん期待していた程ではないなあ・・・・夏の湖国は湿度が高く、晴れの日も微妙に薄く雲がかかっていることが多いのは確かだが・・・・・。

 悩んでいても発電量は増えないので・・・・・・ピットツアー時のプレゼン資料用に撮影をすることにした。



まず分解した状態と


フルセットアップ状態


やや、斜め後ろからも、けっこうカッコイイ


真横から、車体裏面の曲線が美脚的でしょう(自画自賛)
 まだ日は高く、充電台製作に取りかかりたいところだったが、猛暑の三連休でかなりグロッキー。ともあれ車体本体の格好がついた、ということで体力が残っている内に今日は店終いである。


2008年7月23日

 スパムと間違えて、危うく消しそうになった。私に英語のメールをくれる人は多くはない。この日から、また一つ、新しい私設イベントが企画されることになった。まずは、ちょうど良い大きさの国旗を探さねばならない。


2008年7月26日

 この日は前日からの合宿研修で午後からの参加。文句は言うまい。もう一週間後ろにずれていたら、車検と予選に立ち会うことが出来なくなったのだ。



バラバラの太陽電池配線をスパイラルチューブで結束のまとめ上げる。
ブラブラさせたままだと作業中に引っかけたりしてトラブルの元になる
チューブの分だけ重くはなるが、車体の機械的tanδは改善されるはず。


ボックスにバッテリーを入れて組み上げる


MPPTの調子はイマイチ。(レース前日まで悩まされることになる)
 

タイヤの準備。遅まきながら、今年は全車輪チューブレスに


勢いで組み上げた充電台。サンレイクカラーである(余ったスプレー
ペイントを使ったのだ)。決してジャマイカ風を狙ったわけではない。

2008年7月27日 レース前の最後の日曜日となった

 

前輪サス下カバーを調整しているのは新人北村。すっかり風景に馴染むようになった。
 

バッテリーボックスの最終仕上げ。「高電圧危険」シールを貼ると、らしくなる。


大掃除ではなく、出陣準備である。

2008年7月28日

 ようやく先週にレース関係の正式書類が郵送されてきたのだが、その中に入っていなかった当日のパドック駐車場入場用ステッカーが、さらに遅れて週明けの、この日に到着した。我がチームはメンバー居住地が大阪から東京まで分散している。Weekdayに日本中を飛び回っている営業マンの自宅や職場に送っても、今週木曜日までに確実に届く保証は無いのだ。せめて先週末に届いていれば作業に集まれた人だけにでも手渡し出来たのに・・・・・・。数年前、9番ゲート前でいくつもの小競り合いが起こったことが担当者に引き継がれていないのだろう。

 さらに夕刻に送られてきたこのメールで僕の苛々は頂点に達した。

   ソーラーカーレース鈴鹿事務局
   2008/7/28 18:58
   件名 乗員最低重量について

    エントラント 各位
    乗員最低重量について
    今大会の技術規則では「乗員最低重量」は削除し、車両検査時に
    ドライバーの重量測定は行いません。
    よって、8月1日(金)書類検査時の公式通知をもって、
    今大会の特別規則 16.2.5 を削除します。

 日本中をメールと電話が飛び回ったことだろう。レギュレーションを引っ張り出して確認する。ドライバー重量(この日本語は許せないので、以後「ドライバー体重」に直す)は最低70kg、これに満たない場合はバラストで補う、というのが初回から継続されてきたルールだ。

 同様のルールはソーラーカーレースの元祖、豪州のWSCでも採用されている。こちらは欧米人の体格に合わせて80kgになっているが趣旨は同じだ。この項目は、他の自動車レースではあまり一般的では無い。僕はこの項を、ソーラーカーレースの特殊性に配慮されて設けられた特別な位置づけの項目であろうと解釈してきた。

 表面的には、競技条件をイコールコンディションにするということである。が、それ以上に重要なのは、ソーラーカーレースのドライバーが、無理な減量に走るのを、この項が未然に防止しているということである。灼熱の炎天下で行われる競技でドライバーが、少しでも自チームのためになどと考えて、水分補給を控えたりすれば、一つ間違えば生命にかかわることになるのだ。

 4月末に予告無く、突然、最低車重100kgという項目が追加されて公開された技術規則「案」にも、5月に入ってから公開された、最低車重が削除された2008年度版技術規則にも、たしかにその項目はない。しかし、2008年度版特別規則には、

 16.2.5 公式車両検査において、登録ドライバーの体重測定とバラスト検査を行う。

と明記されており、両者は明らかに矛盾している。この矛盾を正すために16.2.5の方を削除するというのである。

 しかし、3月末のオリンピアクラス説明会で配布された資料には従来カテゴリーの欄にも、オリンピアクラスの欄にもドライバー最低体重70kgが明記してあるのである。(オリンピア車両規定にドライバー体重の項は無い。ドライバーは車両の一部ではないので車両規定に書かれていなくても不思議はない。車両規則とは別に競技規則が別途定められる物だと信じていた。)そもそも、当初より意図的にドライバー最低体重制限を撤廃するつもりであったなら、技術規則、特別規則の両方を改訂するはずだ。この経過を見る限り、ドライバー最低体重項が意図的に削除されたとは考えにくい。最低車重100kg項の改廃時に誤って削除してしまったと考えるのが自然である。ならば、技術規則と特別規則を整合させるには最低体重項を復帰させるのが本筋であろう。

 見落としていたのは確かに迂闊だった。それは認めよう。しかし、なんとも騙し討ちにあったような実に嫌な気分である。さらに裏を勘ぐれば、別の仮説を導くことができるが、それはまた別の機会に論じることにしよう。

 自分のチームに限って云えば、つい先日も、年々小さくなる鉛バラストをドライバー二人が嘆きながら、さらに小さく削っていたのである。バラストの有無は数kgの差に過ぎない。某チームのサイトではサンレイクが軽量ドライバーを擁しているために有利などと書かれていたが、これは大きな勘違いである。

 この日からレース当日まで、当チームのドライバーは「苛々するのは身体に毒だ」とばかりに、連日メタボ度数を更新し続けていたようである。僕はというと、23日に開始された私設イベントプロジェクトのために国際公約した新曲の構想が、苛々のおかげでまるっきり進まなくなり大迷惑なのであった。


2008年7月29日

 苛々を治めるには作業に集中するのが何より有効だ。

 試走会時に、即席バッテリーボックスをネジ込むためにカットしたカウル底部のエッジが気になっていた。切り欠きは最低限に抑えたのであるが、それでもその部分の強度が明らかに下がっているのだ。場所はシャーシの後端に近く、カウルのほぼ後ろ半分が上下に揺れた際に圧縮と引張りがモロに加わる部分である。

 ということで、この部分にカーボンクロスを貼り足して補強することにした。かくして、レース直前のweekdayの夜中に積層作業を行うという、あまり嬉しくない伝統は、4年連続で守られる事になったのであった。


2008年7月30日


shataiteibu カウル底部の補強部仕上がり確認。カウルの剛直性は格段に改善された。
 

前日までに、シコシコと刳り抜いた余分な発泡スチロールを計量してみる。0.6kg、
それほどバカにしたもんじゃない。もう少し時間があればさらに1kg位は削れそう。

2008年7月31日 東京ビッグサイト東ホール

 ソーラーカーレース鈴鹿の前日だというのに東京日帰り出張である。とはいえ、行き先は悪くはない。続きは番外編 PVJapan2008で、

 仕事は早めに切り上げて戻ってきたが、サンレイク基地まで戻る余裕はなかった。サンレイク母艦タケハラ号への積み込みは夕刻、竹原隊長指揮の下、北村、平尾、鶴野の手で順調に行われた模様。メンパパ氏と進めてきた極秘プロジェクトは無事に完了したようだ。しかし、まだまだやらなければならないことが残されていた。夜には国際公約にそなえたウォームアップに、ピットツアー資料、小物Goods類、恒例の団扇製作セット準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2008年8月1日 気が付けば日付が変わっていた。

今から寝て3時間後に起きるくらいなら目が冴えている間に出発しよう。

4時間後に出会う鈴鹿の太陽の下で僕たちの夏が始まるのだ。




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2008鈴鹿 予告編

「SUNLAKE EVO 製作記 Volume 5」

遅ればせながら、ようやく公開 2008.10.26

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