Solar Car Archaeorogy Research Institute

The Histrical Solar Car Museum
太陽能車考古学研究所 付属博物館


Simon 89


 Simon89 は1989年に日本で最初に開かれたソーラーカーイベント「ソーラーカーデザインGP'89」出品作品として制作され、グランプリを受賞した、非対称3輪型のソーラーカーである。製作した「紫紋」は安井輝雄氏により設立されたファクトリー。安井氏はディーラー所属の自動車整備士を経て輸出商社に勤務し、西サモア、マレーシアの工場への赴任経験の後、独立して自動車用エアロパーツ製作を主とする会社「紫紋」を設立した。ソーラーカー時代以前より、自社の名を広めようと大阪産業大学と共同でエコノミーラン等に参加、1987年に、チーム・ソーラージャパンから童夢に委託されたSJM−1 ver.2. の製作の下請けによりソーラーカー製作の基礎を習得した。

 「Simon89」は「紫紋」最初の自主製作ソーラーカーとなった。デザインは童夢系のデザイン会社「ジオットデザイン」所属の大正一哉氏が行い、設計には大阪産業大学の藤田久和氏も参画した。車両としての完成度も高く、「ソーラーカーの貴婦人」と呼ばれた。

 2012年現在、実写は大阪産業大学に保管されている。

関連ページ:太陽能車考古学研究所 ワークスの章 「シモン」

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JR住道駅から大阪産業大学シャトルバスに乗って5分ほど揺られると、見えてくるのがこちら。
関西で3番目に大きな規模を誇る「大阪産業大学」のキャンパスである。高校野球で有名な
大阪桐蔭高等学校が隣接・・・というか同じ敷地である。実は経営する学校法人が同じなのだ。



広大なキャンパスのほぼ中央に、



新産業研究開発センターがある。研究施設ということで、残念ながら一般公開はされていない
のだが、今回は藤田久和先生、村上雅享先生の取り計らいで特別に見せて頂けることになった。



エントランスから二階の踊り場にあがると、そこに貴婦人がお待ちであった。



製作から20年以上が経過しているとは思えない美しい保存状態。



夢は挑戦から始まる Team Simon



20年以上経過した太陽電池パネルには、さすがに劣化が見られる。



封止に用いられたEVA樹脂が黄色く着色してくるのである。
樹脂合成時の複製生物の影響であるが、近年の封止樹脂では
改善されている(はず。本当の結果は20年たたないと解らない)。



片翼式に広げられた太陽電池パネルの裏側を失敬。
軽量化のためにフィルムで処理された部分は破れていたが、
内部のフレーム構造の一部を見ることができた。



側車にあたる車輪カバーの内側、外からは見えない
部分に製作に携わった方々の名前が刻まれている。



側車カバーの外側(手ぶれしてます。ご勘弁)。よく見ると紀北工業高等学校の名前も

 

以前から興味津々であったコクピットの中も見せて頂いた。
ずいぶんと狭く窮屈そうだが、操舵系は、意外に普通である。

ところが、逆サイドから中を見て仰天。



なんと、外からは見えないサスペンションと前輪が、コクピット内側に
剥き出しである。ドライバーの右足をスリスリしながら前輪が回り、
ドライバーのお尻の下でAアームの付け根がユサユサと揺れているのだ。

優雅な外観の中身は、なかなかスパルタンであった。
美人は見えないところで苦労(努力?)しているだ。



車体の横には大阪産業大学の「愛・地球博」出展時のポスターと、
デザインGP'89の書類選考に提出された大正氏のデザイン画。

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さらに、もう一枚、似て非なるソーラーカーの写真。
こちらはWSC90参戦のために製作された二代目「Simon90」である。
ただいま(2012年現在)ATC(Asia and Pacific Trade Center)にある
「おおさかATCグリーンエコプラザに貸し出し展示中とのこと。



こちらは、当研究所ライブラリから、
江口倫郎氏からご提供頂いた、デザインGP'89での貴重なスナップ。




さらに1989年に開催された国際太陽エネルギー学会での展示風景。
この会議の実行委員長だった濱川圭弘氏(当時、大阪大学教授、
日本太陽エネルギー学会会長)は、デザインGP'89の審査員の一人であった。



最後に、貴婦人の全身像を再び



2012年1月 大阪産業大学にて
公開 2012.04.15.

附属博物館エントランス

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関連ページ:太陽能車考古学研究所 日本のソーラーカーイベント「ソーラーカー・デザインGP’89」

      太陽能車考古学研究所 日本のソーラーカーチーム、ワークスの章 「紫紋」

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太陽能車考古学研究所 2006.01.01