Solar Car Archaeorogy Research Institute
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ソーラーカーの歴史 第二巻 日本のソーラーカーイベント

テクノ・ドリーム・フェア

Techno Dream Fair


■■■ <概要> ■■■

 ソーラーカーレース鈴鹿が開催された数週間後に、鈴鹿サーキットにてもう一つのソーラーカーレースが開催されていることはあまり知られていない。鈴鹿サーキットの交通教習センターコースを利用し、三重県下のo主に工業高等学校チームを対象として開催されるテクノ・ドリーム・フェアのソーラーカー部門である。

 テクノドリームフェアは、1994年に開催された世界祝祭博覧会(まつり博・三重)にて企画された、県内の工業高校生の手によるソーラーカー・アトラクションにルーツを発する。その際に、県から助成された資源(太陽電池パネル、モーターなど)を活かして、持続的な催しとしようという動きがおこり、1996年に第一回めの大会が開催された。以後、毎年同時期に開催されており、県内の工業高校を中心に10校(2003年度以後は9校)が参加してきた。国際的な催しであるソーラーカーレース鈴鹿を開催する地でのイベントは地元の若いチームのモチベーションとなっていたものと想像する。

 ソーラーカー競技は11年目を迎えた2006年が最後となり、2007年からは代わって燃料電池自動車競技が行われることになる。工業高校生の教育の一環としては、トレンディな技術を取り上げるべきでありその主旨は十分に理解できるが、感情面では少々寂しいところがあるのも事実である。



■■■ 開催までの経緯 ■■■

(1)地方博覧会ブーム)

 1989年、名古屋デザイン博に端を発して、地方博覧会ブームが沸き上がり、日本各地の自治体が一斉に博覧会を企画・実行した。バブル景気のピーク時に企画され、バブル崩壊後に実行されるという経済的背景から、台所事情は苦しかったものと想像する。開催規模は年を追うごとに次第に小さくなり、一部には参加者が計画動員数に満たず、後処理に四苦八苦したであろう博覧会もあったようだ。

 1994年には以下の8つの地方博覧会が計画され、7つの博覧会が実施された。
世界都市博 東京都臨海副都心 中止 *1a)
世界祝祭博覧会 伊勢志摩 351万人入場 *1a)*1b)
世界リゾート博(リゾート博わかやま) 和歌山県 289万人入場 *1a)*1b)
けいはんな学研都市フェスティバル'94  *1c)
豊岡・世界のかばん博'94('94世界かばんフェスタ)  *1c)
但馬・理想の都の祭典(TAJIMA 四季彩'94)  *1c)
第11回全国都市緑化きょうとフェア(緑いきいきKYOTO'94) *1d)
第22回全国菓子大博覧会(1994金沢菓子博'94) *1e)
 東京都の地方博という特異な性格を持った都市博の開催要否が東京都知事選における政策論争の焦点となり、当初より中止を訴えて当選した青島幸夫氏により、公約通り中止されたことはよく知られている。


世界祝祭博覧会(まつり博・三重’94)会場跡地を利用した「県営サンアリーナ」


(2)世界祝祭博覧会(まつり博・三重’94)

 世界祝祭博覧会、愛称:「まつり博・三重’94」は、
主会場:三重県中部、二見町
期 間:1994年(平成6年)7月22日〜11月6日
にて開催された。博覧会の全貌をweb検索で掴むことは難しい。残されている断片の多くは、公演記録であり、各地の祭りを再現したパフォーマンスが博覧会の主役であったことが伺われる。

 会場内には、風力+ソーラー・ハイブリッド発電システムが導入され、自然エネルギー利用のデモンストレーションが行われた。*2)

 蛇足ながら、世界祝祭博覧会の主会場は、私の実家の目と鼻の先であったにもかかわらず、私自身は交通渋滞を恐れ、一度も足を運んでいない。跡地は三重県営サンアリーナとして利用されている。これは結構なことであるが、跡地に隣接する小山には戦国時代村なるテーマパークが作られ、安土城のレプリカが建設されている。少なからず歴史認識を誤る輩がでてくるであろう。これまた、当研究所の所在地である安土町にとっては迷惑千万なのである。


戦国時代村の安土城



世界祝祭博覧会(まつり博・三重’94)会場付近の航空写真


(3)ソーラーカー・アトラクション

 当研究所の立場において重要であるのは、世界祝祭博覧会に協賛して、県下の工業高等学校生の手によって製作されたソーラーカーのアトラクションが行われたことである。この催し自体の記録も極めて乏しい。web上では、津工業高等学校の旧サイトに、同校の手により製作された「ソーラートーマス」の記録が残されている。
 「ソーラートーマス」は、名前から察せられるとおり、SLを擬人化した人形劇「機関車トーマス」を模した牽引式ソーラーカーである。機関車部と客車部の屋根に50w(推定多結晶Si)のソーラーパネルを総計6枚搭載。モーターには24V16A定格のゴルフカート用モーターを使用。リレーシーケンスによる直巻、復巻の切り替えと、抵抗制御により速度速度制御を行っている。*3)

 同サイトには機関車型ソーラーカーを選択した理由として「ありきたりのレースタイプではおもしろくない」との記述があり、また、掲載されたスナップ写真には、駐車場ならびに会場内を子供達を乗せて走るソーラートーマスの他に、平板パネルと黄色い矩形のオープン型ボディを持つソーラーカー、白いボディを有する(推定)ゴキブリ型のソーラーカーの一部が写っていることから、少なくとも3台以上のソーラーカーが本アトラクションのために制作され、アトラクションに参加した物と思われる。*3)

 なお、ソーラートーマスは、2003年津工業高等学校の文化祭(津工祭)、にて「ソーラートーマスに乗ろう」と題した企画に用いられており、少なくともこの時点では動態保存されていたことが解る。*4)  また、同名の「ソーラートーマス」が(推定)2002年に松坂工業高等学校にて制作され、市内外の各種イベントに駆り出されたとのことであるが、津工業高等学校との関係は不明である。*5)


世界祝祭博覧会(まつり博・三重’94)会場跡地を利用した「県営サンアリーナ」
おそらく、この駐車場の一部がソーラーカーアトラクションに利用された。



(4)テクノドリームフェア開催へ

 県下の工業高等学校の交流と活性化を目的とし、先のソーラーカーアトラクションにおいて、三重県から助成された太陽電池パネル等の主要部材を活かしたイベントを、ということで1996年に第一回テクノドリームフェアが開催された。最初の幹事校は上野工業高等学校であった。*0) 初期の頃のイベントの詳細については、現在のところ全く資料が入手できていない。会場には当初から鈴鹿サーキットの交通教習センターコースが用いられていた模様である。少なくとも2001年以後は、ソーラーカー競技以外にガソリンエコラン、ソーラーラジコンカー競技、ロボット相撲、人力発電コンテスト等が行われている。




■■■ イベント内容 ■■■

1.主催
 ・三重県教育委員会
 ・三重県高等学校工業教育研究会

2.後援
 ・鈴鹿市教育委員会
 ・中日新聞社
 ・中部電力(株)三重支店

3.参加校
  桑名工業高等学校
  四日市工業高等学校
  四日市中央工業高等学校
  上野工業高等学校
  名張西高等学校
  津工業高等学校
  松阪工業高等学校
  伊勢工業高等学校
  伊勢実業高等学校
  尾鷲工業高等学校(2002年度末にて廃校)
  尾鷲高等学校
4.開催年月日
 毎年8月中旬。個別データ項参照

5.会場
 鈴鹿サーキット交通教育センター及び、園内ASIMOロボット会場

6.競技内容
 ・ソーラーカー部門
 ・ソーラーラジコンカー部門
 ・省エネカー部門
 ・相撲ロボット部門
 ・人力発電コンテスト

7.ソーラーカー部門詳細

 ・競技形式
   規定時間(2時間)内での周回コース(約500m)の周回数にて競う。
   (2006年度は1時間に短縮された)
   スタートグリッドは、ブレーキテストの制動距離が短い順。

 ・車両規定
   パネル発電量480w以下。
   蓄電池は鉛バッテリー限定 最大容量504w(カタログ値、5時間ないし10時間率)
   (2006年度は312w)

   車両規定詳細

8.一般市民、小中学生へのアピール

 テクノドリームフェア開催目的の一つに、一般市民、小中学生に対する「工業高校のアピール」がある。そのため県下の小中学校に17000万枚を超える招待入場券が配布されている。入場者はおおむね4〜5000人で推移しており、この種のイベントとしては高い集客力を維持している。





■■■ <個別データ> ■■■

月日
結果
学校名
車両名
周回数
資料・備考
第1回
1996
8月20日前後
詳細不明
 
第2回
1997
8月20日前後
詳細不明
 
第3回
1998
8月20日前後
詳細不明
 
第4回
1999
8月20日前後
詳細不明
 
第5回
2000
8月20日前後
優勝
上野工
不明
不明
*6)
第6回
2001
8月20日
優勝
上野工
不明
 
*6)
不明
津工業
TENTEL Jr
 
*7)
第7回
2002
8月18日
優勝
上野工
SHOOTING STAR
140
*6)
準優勝
尾鷲工
Critical Cristallzation
 
*8)
3位
松阪工
創立100周年記念号
 
*8)
企画
四 工
It’s Automatic
 
*8)
技術
桑名工
ECOパワー桑工
 
*8)
努力
伊勢工
くちだけDXU
 
*8)
アイデア
津 工
TENTEL Jr
 
*8)
デザイン
尾 鷲
疾風(はやて
 
*8)
第8回
2003
8月17日
雨天中止
*9)
第9回
2004
8月17日
雨天中止
 
第10回
2005
8月17日
優勝
上野工
Shooting Star09
 
*10)
準優勝
津工
TENTELライジングサン
 
*10)
3位
伊勢工
ID−Omini(電気技術部)
142周
*11)
不明
四中工
サンエナジ四中工号
 
*12)
第11回
2006
8月22日
優勝
四中工
サンエナジ四中工
 
*13)
激励賞
松坂工
機械研究部
 
*14)
完走
尾鷲
システム工学部
55周
*15)
第12回
2007
8月20日
ソーラーカー部門休止、燃料電池車部門新設
 

1999年度には、三重県より「活力ある高校生育成事業費」助成*16)
2000年度には 三重県エコイベント評価会議から、優良エコイベントとして表彰された。*17)
2001〜2006年度 三重県より「集まれ高校生支援事業費」が助成されている *18)




■■■ <資料> ■■■

*0) 奥守孝氏インタビュー
*1a) http://www.fantastics.co.jp/hakurankai1-2.htm
*1b) http://japanexpo.net/j_expo.html
*1c)http://japanexpo.net/l_expo.html
*1d)http://japanexpo.net/t_expo.html
*1e)http://japanexpo.net/s_expo.html
*2) 「まつり博・三重’94」に風力+ソーラー・ハイブリッド発電システム納入, ユアサ時報, No.77(1994) http://www.gs-yuasa.com/jp/technic/yuasa/no96/pdf/
*3) http://www.mctv.ne.jp/~de_san/seisaku/thomas/thomas.htm
*4) 「ソーラートーマスに乗ろう」 http://www.mie-c.ed.jp/ttu/html/seitokai/bunkasai/h15bunkasai/h15_posuta_kankei/h15_kikaku.htm
*5) (平成16年12月2日付け中日新聞から)http://jr2uat.net/space/press2004/hotnews73.htm
*6) http://www.iga-younet.co.jp/news/education/2003/08/030807.html
*7) http://www.mie-c.ed.jp/ttu/html/01techno2.htm
*8) http://www.yokkaichi-th.ed.jp/~techno/seiseki.html
*9) http://www.pref.mie.jp/pdf/jh/jh03k/job20030000004320.htm
*10) http://www.e-plane.or.tv/kiji_koramu/kijikoramu-050818.html
*11) http://www.ith.ed.jp/denki_gijyutsu/page3.html
*12) http://d.hatena.ne.jp/yoncyuko-pta/20050818
*13) http://www.yokkaichichuo-th.ed.jp/topics18/tekuno0822.htm
*14) http://www.mctv.ne.jp/~mths/topics/summer06.htm
*15) http://www.mie-c.ed.jp/howase/
   http://www.mie-c.ed.jp/howase/club/club_info/kogyo-system/system.html
*16) http://www.pref.mie.jp/pdf/jh/99k/2a221004.pdf
*17) http://www.eco.pref.mie.jp/data-syu/pamfh/houkoku/h14/04-5.HTM
*18) http;//www.pref.mie.jp/BUNKA/gyousei/eco/h13eco.xls
   2005 www.pref.mie.jp/pdf/jh/jh05k/job20050000003507.htm
   2006 http://www.pref.mie.jp/pdf/jh/jh06k/job20060000004736.htm


着稿     2006.03.05.
第1稿公開  2007.08.16.
サンアリーナ画像追加  2007.10.07.

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