安土楽器博物庫

Azuchi Museum of Musical Instruments

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体鳴楽器 イディオフォン Idiophone

 弦や膜(皮)など張力を必要とする発音部を持たず、楽器本体そのものが振動することにより発音する楽器の総称。乱暴に言えば、叩いたり振ったり擦ったりして音が出れば、大抵の物は体鳴楽器と言うことが出来る。音の出し方により、打撃で音を出す楽器、摘み弾いて音を出す楽器、摩擦して音を出す楽器とさらに分類されている。摘み弾いて音を出す摘奏体鳴楽器には口琴類とカリンバなどの薄板楽器(Lamellaphone)が該当するが、本サイトでは便宜上別分類としている。

体鳴楽器 分類 奏法、楽器例
 打撃奏   直接打撃奏   相互打撃奏 同じ形状の一対(以上)を打ち合わせる楽器。
 カスタネット、シンバル
 単打撃奏 バチ等で打ち鳴らす楽器。
 トライアングル、シロホン
 間接打撃奏   振奏
 振り鳴らす楽器
 内粒式   共鳴器の内部に打撃要素を持つ楽器。
 マラカス、シェイカー
 外粒式   共鳴器の外部に打撃要素を持つ楽器。
 シェケレ、カバサ
 掻擦奏 こすり付けて鳴らす楽器。
 ギロ
 摘奏 はじいて鳴らす楽器。
 口琴、カリンバなど薄板楽器
 (当サイトでは便宜上別分類とする)
 摩擦奏 摩擦して鳴らす楽器。 グラスハープ

****************** 直接・相互打撃奏・体鳴楽器 ******************


左からクラベス、フラッパー・カスタネット、(スパニッシュ)カスタネット
left:Claves, center:Flapper Castanets, right:(Spanish) Castanets



板ささら または びんささら Bin-Sasara (Japan, Toyama Pref.)

富山県五箇山地方に伝わる「こきりこ節」の伴奏に用いられる。

****************** 直接・単打撃奏・体鳴楽器 ******************

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****************** 間接打撃・振奏・体鳴楽器(内粒式) ******************


(A) ウッド・シェイカー Wood Shaker
(B) プラスチック・シェイカー Plastic Shaker
(C) レインツリー Rain Tree (Peru)
(D) マラカス Maracas (Cuba)
(E) ホショー・マラカス hosho maracas (Zimbabwe)
(F) アフリカン・ラットル African Rattles



上:モダマ(藻玉) 下:パカイ
upper:Modama, lower:Pacay(South America)

 いずれも巨大な豆の鞘を乾燥させた物。振ると鞘の中の種子がカタカタと音を出す。

 モダマは東南アジアからマダガスカルにかけての熱帯地方に分布する蔓性の豆である。日本では西表島に自生しているとのこと。その巨大さから「ジャックと豆の木」のモチーフになったとの俗説があるが、少々怪しい。

 パカイは南米産。こちらは蔓ではなく木性の豆の木である。食用にもなるとのことであるが、鞘を割ると出てくる実を包むふわふわした綿のような部分が甘くて美味しいらしく、種は吐き出すらしい。

****************** 間接打撃・振奏・体鳴楽器(外粒式) ******************


(A) シェケレ Shekere(Nigeria)
(B) カバサ Cabasa (Latin America)
(C) メタル・カバサ Metal Cabasa (Latin America)

 乱暴な分類では、「マラカス」も「カバサ」もまとめて「シェイカー」と十把一絡げにされることが多いが、共鳴器の内側に粒を仕込むか、外側に仕掛けるかで楽器構造上大きな差がある。

 このシェケレ、「LP」マークが付いてはいるが、プラスチックの紛い物ではなく、本物の瓢箪に、硬い木の実を編み込んだネットが被せられたワイルドな作りである。瓢箪の皮の厚さからしてアフリカ製であることは間違いない。木の実の種類は不明。ガシャガシャと非常に大きな音が出て微調整が難しいため、未だ本番に使われたことがない。
 この楽器を模して、家庭菜園で採取した干瓢に、数珠球を編み込んだネットを被せてシェケレを自作してみたが、こちらは干瓢の皮が薄く、ショボい音しか出なかった。

****************** 間接打撃・振奏・体鳴楽器(相互式) ******************



インドの鈴(鋳造) Indian Brass Bells (casting)



インドの鈴(板金) Indian Bells (sheet metal working)



上:足鈴(南インド) 下:足鈴(北インド)
upper:Ghunghuru (South India), lower:Ghunghuru (North India)



左:セミーヤ(ペルー)  右:チャフチャス(ペルー)
left:Semilla (Peru), right:Chajchus (Peru)

 セミーヤないしセミージャ(Semilla)は木の実のガラガラ。日本語のサイトには何処を見ても「マイチル(マイチチ)の実」と書いてあるが、皆コピペの同じ文章である。マイチルが如何なる植物なのかは何処にも書いてなく、さっぱりわからない。ちなみに「Semilla」はスペイン語で「種」の意味である。

 チャフチャス(チャスチャス)はアルパカの爪。山羊の爪と説明されているサイトも多いが、同じ偶蹄類とはいえ、アルパカはラクダに近い種類である。元々は山岳地方に住んでいた動物なので、本来、爪は自然に擦り切れて、同じ長さに保たれるはずなのであるが、家畜化され(羊と同じように体毛を使う)平地の草原で飼われるようになったので、定期的に爪を切てあげないと、伸びすぎてしまうのである。


クルミのガラガラ   Walnuts Rattle



ウインド・チャイム   Wind Chime

****************** 間接打撃・掻擦奏・体鳴楽器 ******************



左:ギロ(不明)  右:カエルギロ
left:Guiro (unknown), right:Frog Guiro (Viet Nam)

 ギロは木製、プラスチック製、金属製、竹製など多種多様だが、瓢箪を使うのがラテンアメリカの正当ギロである。この楽器は、瓢箪製ではあるが、描かれている絵が、画像に移っている方は二頭の象、裏側にはインデェオ風の人物が角笛を吹きつつ山羊を追っている絵が描いてあり、国籍不明である。特に瓢箪を切り取ったり刳り抜いたりした痕跡はないが、傾けるとレインツリーのような音がする。恐らくは乾燥して立体網状になった内部で種子が動いているものと想像する。

 カエル形のギロはベトナム製。背中のギザギザを附属の棒で擦ると、コロコロと蛙の鳴き声の擬音が出る。元々は雨乞い儀式に使われたとの記述が多数見られるが、真偽のほどは不明。竜王町公民館吹奏楽教室が小学校器楽バンドフェスティバル西日本大会に出場した際に演奏したベートーベン田園交響曲の金管合奏アレンジにおいて、中間部の嵐が過ぎ去り穏やかな天気に戻った場面での効果音に使用した。2011年、「ウイーンのベートーヴェン」をテーマに開催されたラ・フォル・ジュルネびわ湖事務局から再演依頼があったのだが、メンバーも編成も全く変わってしまっていたのでお断りせざるを得なかったのが残念。

****************** 摘奏・体鳴楽器 ******************


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****************** 摩擦奏・体鳴楽器 ******************

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last update 2011.05.05.

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2007.12.31.