2液混合常温5分硬化型のエポキシ接着剤を手早く調合し、部材を接着、同時に接着剤をザイロンクロスにヘラを使って手早く含浸させ、ポリエチレンフィルムを離型シートに用いて貼りつけ、あり合わせの板材で挟み込んでクランプで押さえつけ硬化を待つ。「5分硬化」は便宜上の名称。この日の気温であれば30分で実用強度の7−8割まで硬化が進むだろう。5分硬化型エポキシ接着剤の硬化物は、粘りがある反面、低硬度なので「接着力」が欲しい場面で有効だ。
09:08 車検用第一ロールバー修正完了

「ドヤ」顔の監督
09:16 車検継続中
僕たちがもたついている間に、車検会場はエンジョイクラスの時間に入っていた。早めに出て行った RitsV チームであったが制動テストでひっかかった。

ブレーキを踏み込んだ際に、ロッドに使っているM6のネジ棒が曲がってしまったのである。Amel Clown のブレーキシステムは天秤構造を使って狭い場所に無理矢理詰め込んであるのだが少々機工が複雑すぎる上に、ロッドに加わるチカラが全て圧縮方向になっている。

曲がったロッドを伸ばし、ナットを抱かせて補強すると、次は別のロッドが曲がるというお決まりのネガティブ・パターンにはまりこんでしまっているようだ。

Rits V 車検行列から抜けて、ブレーキ修正中
09:55 アライメント調整
ロールバーの修正は終わったが、エンジョイクラスの時間帯に移行した車検会場は大混雑で列が途切れる様子はない。ぼけっとしていてもしょうがないので、お決まりのアライメント調整タイムに入った。前輪平行度チェックの方法は極めて原始的だ。前輪チェッカーと呼んでいる二本のアルミアングルを左右の前輪に平行に押し当て、車輪の前側と後ろ側の距離をメジャーで測定して合わせるだけである。ポイントは、これを、車体を前後させたり、ゆさゆささせたりして何度か繰り返し、統計的(現実には勘だが)値を把握すること。シャーシの剛性が低く、結構ばらつくからだ。

前輪平行度合わせ
10:26 鈴鹿サーキット51番ピット(車検場)
車検待ちの列が短くなる様子はない。エンジョイクラスの車検が終了するのを待つしかないかな・・・・という雰囲気が濃厚に漂い始めたときに、しびれを切らした竹原が動いた。車検担当者と「車体を持ってくれば、再検査しよう。」とい交渉を成立させたのだ。

早速、車体を車検場に持ち込み再検査を受け「合格」を頂いたのだが、修正部を一瞥しただけで触りもせず「来年はきちんと作り直して来てくださいね。」の一言のみ。喉元まで出かけた言葉をぐっと飲み込み、31番ピットに引き返した。僕たちには次の大事な別の予定があったからだ。
10:33 車検合格 記念撮影

少々手間取った今年の車検。車検一位は芦屋大学チームにお譲りした。
受け取ったゼッケンは1枚だけで、車体の右側に貼るようにという指示。もう一枚はドライバーブリーフィング時に配布するとのこと。
僕たちの次の行動はレースを乗り切るための滋養強壮である。11時の開店と同時に注文しないと、12:30からのドライバーブリーフィングまでに鈴鹿サーキットに戻って来れなくなってしまうのだ。
11:15 鈴鹿市南玉垣 「あおき」

おいしゅうございました。
12:10 鈴鹿サーキット 31番ピット

本戦用バッテリーの充電ために配線組み替え中。
12:30 鈴鹿サーキット・コントロールタワー2階 ブリーフィングルーム

ドライバーブリーフィング

初心者ドライバーが少なくないソーラーカーレースでは、
国際コース走行上の注意点を説明するガイダンスが必須だ。
それでも「あわや」という場面を何回も目にすることになる。
ところで、ここで珍客到来。挨拶されたときには目を疑った。僕たちの間では「あーちゃん」で通っている前監督Jrが現れたのだ。現在、立命館大学の一年生で現役チームのメンバーだそうだ。物心付いたときには鈴鹿のピット、二回(マレーシアとギリシャ)の海外遠征も同行している大ベテランである。立命館大学チームの数年後が楽しみになってきた。
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FIA Alternative Energies Cup "Solar Car Race SUZUKA 2014" Free Pructis
2014年08月01日 13:40 鈴鹿サーキット 国際レーシングコース
ドリーム、チャレンジ、オリンピアクラスのフリー走行時間は 13:40 - 15:10。血気盛んなチームは数分前からピットロード出口に並んで順番待ちするが、僕たちは一呼吸おいて、最初の一団がコースに出て行くのを見送ってから出走する。

最初は高橋ドライバー。彼の任務はタイムアタックだ。規定周回は一周。コントロールラインを通り、一周してもう一度コントロールラインを通過して一周とカウントされるのだが、コントロールラインは、ピットロードの入口と出口の間にあるため、実質的には最低3周しなければならない。
名称こそ「フリー走行」だが、規定周回で計測された各チームの最も短いタイム順で、明日の本戦のスターティング・グリッドが決まるため、実質的には「予選」である。

高橋は、4分27秒73(初の4分20秒台)を叩きだし、8番ポジションを獲得
14:17 ピットイン

本番さながらに、ドライバー交代の練習・・・・・のつもり

結果は・・・・・・・2分弱かかるボロボロの出来映え
オマケに連絡用の携帯電話ヘッドセットを壊してしまった
こちらは芦屋大学チーム

「QUAD」のタイヤ交換練習

「TIGA」のタイヤ交換練習
ドライバー交代と全タイヤ交換を1分未満で済ましてしまう。装備ももちろんだが、練習量が違いすぎる。なんせこっちは前日に初めてやってるくらいなので、比較することすら失礼。

ホームストレートから第一コーナーへ。速度は70-80km/hr
14:40 平澤から緊急電話が入った。
「後輪が外れそうだ。」
ピットに緊張が走った。新方式のモーターマウントに原因があったとしたら、一晩で対策するのは難しい。慎重にドライブして戻ってきた車両をピットに導き、即座に点検するが・・・・・後輪は緩んでいない。前輪にも異常なし。
「????????」
全員の頭にクエスチョンマークが浮かびかけていたが、その時、車体をユサユサと揺らすと、それ以上にバッテリーボックスが揺れることに気が付いた。
「これだ!」
左側のバッテリーボックスを固定するベルトが緩んでいるではないか。いや、緩む訳がない。最初から締め付けが甘かったのである。
鈴鹿チャレンジクラスのソーラーカーが搭載するバッテリーは制御弁式鉛蓄電池限定だ。僕たちが使っているバッテリーは一個が9.5kgあり、これを4個ずつ二台のバッテリーボックスに収めて、コクピットの両脇に抱きかかえるような形で積載している。左右それぞれ38kg。ドライバーを含めた総車重は260kg程なので、片方のバッテリーボックスだけで総車重の15%程だ。これがユサユサ揺れれば後輪が緩んだと勘違いしても無理はなかろう。

原因さえ掴めれば一安心だ。出走前にはベルトの締め付けを念入りに確認しよう。それで大丈夫だ。大丈夫、間違いない・・・・・・
僕たちは鈴鹿の魔物の恐ろしさを忘れかけていた。それほどに長い間、僕たちは遠ざかってしまっていたのだ。 鈴鹿サーキットとの真剣勝負から。
つい、この間まで芦屋大学チームと大阪産業大学チームを例外として、予選上位はチャレンジクラスの独壇場だった。この変わり様はどうだ、ドリームクラスどころか、オリンピアクラスの車両が上位に食い込んできている。4輪の安定性に加えて、どの車両も高性能な太陽電池(チャレンジクラスは出力800W制限だが、オリンピアクラスは面積制限(6m2)なので、高性能太陽電池を使えば得られるエネルギー量が増える。)と、価格的に入手しやすくなったLi系のバッテリーを搭載しているからだ。

車両能力的にスピードが出せるようになると、勢い、フリー走行時のトラブルも多くなる。フリー走行中にコースアウトした2台はいずれもオリンピアクラスの車両、無駄に大きなFIA公認シートを使い、なおかつ前方投影面積を最小にするために非対称型を選択した車両だった。
試走時間は15:10までだが、新モーターのマネージメントに必要な一応のデータは取り終えたので切り上げ、明日の本戦に備えての準備に入ることにした。
15:24 スライム(パンク防止剤)注入中

15:27 鈴鹿サーキット 国際レーシングコース ピットロード
エンジョイクラスのフリー走行は15:30-17:00。ピットロードの出口には既に行列ができている。

シグナルが変わるのを待つエンジョイクラスのソーラーカー
Rits V チームの「Amel Clown」。ブレーキシステムの細いネジ棒に、目一杯ナットを抱かせて補強し、なんとか制動テストを乗り切ったようだ。タイムアタックには車両試運転を兼ねて立命館大学時代にドライバーを務めた政井が挑む。
15:32 政井が駆る「Amel Clown」の初陣である。

Rits V / "Amel Clown"
16:07 平澤監督が2番手ドライバー星野にコーチング

いつもより丁寧そうな気がする。
16:24 Rits V ピットイン
政井のタイムは5分56秒12、35チーム中20番グリッドを獲得
16:36 Rts V ドライバー交代

政井→星野にドライバー交代、ブレーキの状態が気になる。
明日の本戦では、軽量の星野の担当時間を長くする作戦のようだ。
16:55 星野→中川にドライバー交代

フリー走行終了5分前にピットアウト。
さて、Rits V チームの皆さんは、これから明日に向けての準備が始まる訳だが、オジサン連中は一足先に引き上げさせて頂く事にした。壊してしまった携帯電話用ヘッドセットもどこかで仕入れなければならない。F1マートのサーキット通り店を探せばなんとかなるだろう。もう一チーム来るはずだった愛知工科大学ソーラーカークラブは出場取りやめたようだ。明日は、2チームで2ピットを遠慮無く使わせて頂こう。
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夕食はいつもの「TAKONOSUKE」
道を挟んだ向かい側、旭化成の敷地では社員向け納涼祭か? 花火が打ち上げられていた。

このテラスの雰囲気が極上なのである。
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三文楽士の休日
FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP MYNAVI SOLAR CAR RACE SUZUKA 2014
2014鈴鹿編 「継承される夢」
公開 2014.08.18.
微改訂 2014.08.19.
Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
The Place in the Sun