The Place in the Sun

三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP MYNAVI SOLAR CAR RACE SUZUKA 2014

2014鈴鹿編 「継承される夢」

2014 SUZUKA / THE GENOME OF THE DREAM CUP


§4 「再生の風芽フーガ

Section 4 "Fugue, Regeneration of the wind seeds"


FIA Alternative Energies Cup "Mynavi Solar Car Race SUZUKA 2014" 4-Hours Endurance

2014年08月02日 05:24  ホテル ルートイン鈴鹿



ホテルの窓から  雲は低く、日差しは無い

 ホテルの朝食は06:30〜とのことで、さっさと諦め、チェックアウトして会場に向かう。先発隊は平澤、北村に前田の3名。

05:56  鈴鹿サーキット



鈴鹿サーキット9番ゲートに到着

06:00 鈴鹿サーキット 31番ピット



Rits V 出走前点検中

 パネル台の余り合板製フロントカウルが昨夜の内にメタリックに塗装されていた。お洒落する余裕が出てきたのは結構だが・・・・・・・・・・。



天候回復は望めそうもなく、むしろ雨対策が必要だ。

06:15  雨天対策

 Rits V チームの「Amel Clown」はご覧の通りのフルオープンカー。ドライバーが濡れるのは構わないが電装系に雨が掛かると感電の危険がある。モーターコントローラーは、一見すると太陽電池パネルの影に入っているが走行中には気流に巻き込まれて雨滴が車内に入ってくるだろう。両脇に抱かせたバッテリーケースの機密性も高そうには見えない。



緊急雨対策中

   面倒だが、一度取り付けたバッテリーカバーを外し、ポリエチレンの袋を切り裂いて作った防水シートで電装機器が収められた車体後部とバッテリーケースをカバーする。水の侵入を防ぐことは不可能なので、侵入した水がデッドスペースに溜まったり、電気系統部分に垂れたりしないように導く水の通路を作ってやらねばならない。

06:25 雨対策完了



 太陽電池パネルとバッテリーカバーを再装着しセットアップ完了。

06:40  スタート進行



スターティング・グリッドへの押し出し

 ピットロードのゲート閉鎖前にグリッドに付かなければならないが、20番グリッドはゲートのすぐ近くなので急ぐ必要は無い。上位チームがほぼ出払ったのを確認し、06:45から移動開始。

07:00  エンジョイI、IIクラス 4時間耐久レース スタート



4時間の長丁場が始まった。

07:14  鈴鹿サーキット 31番ピット



初レースだというのに、十分くつろいでるなあ、君たち

07:19  デグナーカーブで一台がコースアウト



見覚えのあるカラーリング、WAKABA GO(若葉号)だ

 序盤から荒れ模様である。エンジョイクラスは比較的経験値の低い学生ドライバーが少なくない。フリー走行で福岡工業大チームが全く同じパターンで、グラベルに突っ込んでいた。若葉号は、元々は大阪大正区の若手企業経営者の社交会である「若葉会」製。現在は大阪市立泉尾工業高等学校自動車部に譲渡されている。車両自体はプロによる剛健な作りなので大丈夫だろう(約20分後に自走でピットに帰還)。

07:22  鈴鹿サーキット30番ピット


 隣のピットがざわめいている。TEAM THOUSANDの車両「サウパンダ」のゼッケンが剥がれかけており、ピットインしての修正するようにとの指示があったようだ。

07:25  チーム・サウザンド ピットイン



ピットインして捲れあがったゼッケンを貼り直し、さらにガムテープで補強

 積層で仕上げたところは表面がざらついており、ゼッケンの粘着剤の付着力が弱くなる。最初から補強しておくべきだったね。とピット責任者の細川さん。

 序盤からお馴染みの平塚工科高校、千葉黎明高校、オリンパスRSら有力チームらによるトップ争いが激しいのは例年通りだが、今年は新たに伏兵2チームがそこに絡んできているではないか。開成工業チームはペースを上げて故意に全体のペースを引っ張って終盤に疲弊するチームが出るのを誘う作戦だったようだ(どこかで聞いたことがあるぞ、この作戦)。もう一つの伏兵は今年、平塚工科高校のコンセプトに倣って低重心+細身の車体に平板パネルを組み合わせた立命館大学現役チームの新車である。

07:49  立命館大学現役チームがトップに躍り出た。



 僕たちは10年間のデジャブを見ているような感覚に襲われた。2004年の鈴鹿、二日間、4時間+4時間の長丁場だった時代、ほとんどのチームが翌日の雨天予報を気にして電力をセーブした低速レースに推移していた中、一台だけ快調に飛ばして初日をチャレンジクラス首位で終えたのは、立命館大学チームだったのだ。(バッテリーはほぼ空になっており、翌日は数えるほどしか周回できなかったのは云うまでもない)今回は、そういう訳では無かろうと信じるが、第三者的に見て走り方が、かなり強引なのは否めない。

08:04  Rits V ドライバー交代



 1時間が経過したところで Rits V は早々とドライバー交代である。序盤担当ドライバーの中川と2番手ドライバー(兼エントラント)の星野との体重差は実に30kg。曇天で太陽光発電量が望めず、おまけに容量がかなり低下したセコハンバッテリーとなれば、軽量ドライバーの担当時間を長く取るのは自明、タイムアタックを担当した政井は本戦は乗らずにエネマネに徹する作戦である。



08:29  トップ交代

 平塚工科高等学校が、再び首位を奪還。激しいバトルになっている。

08:50  府立堺工業高校チームの大下ドライバー。


 表彰台経験のあるベテランドライバーの大下氏、前半のドライブを終えてホッとしているべきタイミングのはずだが、ご機嫌斜めだ。今年は新車での参戦だが、昨日からモーターコントローラーの調子が悪く、一つずつ原因と思われる要素を潰していっているのだが改善されず、本日も1時間ほどで不調に陥り上位争いから転落してしまった。

09:00  立命館大学現役チーム緊急ピットイン



Rits 2014 緊急ピットイン

 レース開始から2時間弱が経過、ドライバー交代のためのピットインが重なる時間帯に、ひときわ大きな擦過音を立てて立命館大学現役チームが戻ってきた。左前輪をバーストしている。



カウル構成が解る。アンダーカウルとタイヤの間が狭すぎる。

 

車体内に大量のグラベル。バーストが先か後かは不明だがコースアウトした模様。
このタイヤ交換はキツイ。結局、タイヤ交換に20分近くを要してしまった。

 このトラブルが無かったとしても、あの走り方を続けていたら終盤にバーストした可能性は高かっただろう。ピットワークと車両のメンテナンス性改良は今後の課題だ。

09:00  ついにコースに雨粒が落ちだした。

09:12  若様御来場



秋田大会の組織委員会重鎮であらせられる。
今日はプレスパス=お仕事スタイル

09:40  「ちょっと問題が・・・・。」と呼ばれてSUNLAKEの車体を見に行くと

 肝を冷やす事態が待ちかまえていた。こちらの話題は後ほど

10:30  太田氏、御来場

 流石、鈴鹿お助けマン。トラブルの臭いが立ちこめると現れる。

10:40   4時間耐久レースも残り20分を切った

 星野に交代して2時間半が経過。Amel Clown は一周あたり8〜10分と、ゆっくりながらも着実なペースで、一度も止まらずにラップを積み重ねている。ソーラーカーレースの基本中の基本だ。だが、バッテリー電圧が、かなり怪しくなってきている。エネマネ担当が、ペースを少し上げて電欠停止リスクを承知でチェッカー前にコントロールラインを通過し一周稼ぐ方に賭けるかか、あるいは確実に周回してチェッカーを受ける方を選択するかを悩む時間帯だ。、

「大丈夫、まだまだ行ける。もう一周稼げるところまでスピードアップだ。」
「でも、○○ボルトまで下がってるんすよ。」
「なに? うーんちょっとリスキーかな。」
「でも、NPX12240Hだろう?」
「チェッカーは受けたいよね。」
「受けようが受けまいが、止まるときは止まるし・・・・」
「牽引されるってのも、ナカナカできない経験だよ。」

  ・・・・・・・・・・・・・・騒々しい野次馬オジサン連中に政井の一言。

「あのー・・・・今の会話、全部ドライバーに聞こえちゃっているんですけど。」
11:00  チェッカー



エンジョイクラス 四時間耐久レースの終わりを告げるチェッカフラッグが振られた。

 トップの平塚工科高校、終盤まで5分台のラップを重ねていたが、最後一週前は6分10秒に落とし、さらにラストラップは8分を越えている。最終ラップがチェッカーの2分33秒前、最終のトータルタイムは4時間7分25秒なので最後の一周には10分近くをかけている。エネルギーを絞り出して最後の一周を積み上げたのだ。2位のオリンパスRS、ラストラップが5分57秒。こちらはまだ少しだけ余力がありそうだが、積算電流計の故障で冒険ができなかったようだ。3位は伏兵の開成工業。SUNLAKEと同じ企業内クラブチームである。鈴鹿参戦2回目で表彰台は見事。メンバーはオジサン中心の様子で親近感が湧く。序盤でペースアップして若気チームの電欠を誘うなど、レース展開もオトナだった。


 個人的にはエンジョイ総合5位、エンジョイIクラス2位に地元の松坂工業高等学校が入ったのが嬉しい。昨年のクラス3位から一段ステップアップである。三重祭博のアトラクションにルーツを持つ三重県下の工業高等学校チーム全体の底上げになって欲しい。Fastet Lap には大阪府立堺工科高校、意地の4分53秒が残った。

11:10  最後の力を振り絞り、コース閉鎖直前に Amel Clown がピットレーンに戻ってきた。



最後は超ベテラン太田氏自らピットレーンに出ての陣頭指揮

 

Rits V "Amel Clown" 初出場、22周回ノンストップでの完走であった。


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三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP MYNAVI SOLAR CAR RACE SUZUKA 2014

2014鈴鹿編 「継承される夢」

公開  2014.08.18.
微改訂  2014.08.19.

Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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