The Place in the Sun

三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP
DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2008

2008鈴鹿 風の化身編

SUNLAKE EVOLUTION


セクション 5 「風の化身」


2008年8月2日(日) 午後

12:41 ピットからグリッドへの移動開始



昨日同様、先発は監督自らがハンドルを握る。
12:46 12番グリッド着



奇しくも、昨日と同じグリッドである。天気は日差しが痛いほどの「晴」、
積乱雲が出来かかっているのが少し気になるが、日照は十分
 伊勢湾と鈴鹿山系に挟まれ、薄曇りがちで日照が散乱光的である場合が多い鈴鹿サーキットであるが、この日に限れば直射日光が鋭かった。コース上にくっきりと鮮明な影が出ているのがお解りいただけるだろう。

 御近所は、

 

左:Aurora        右:H・A・T レーシングチーム
 

左:再輝チーム「ENAX]  右:MAXSPEED
12:50 スターティング・グリッド


待機中も冷水をスプレーして太陽電池パネルを冷やす。


各チーム、少しでも充電しようと足掻く中で、クールにカバーしている車両(右奥)は?・・・
エネルギーが有り余っているOSU:大阪産業大学「Model S’」


Aurora Team の David Fewchuk さん 本日はご機嫌。
私事ながら喇叭も決まり、エール交換である。
昨日のピットスタートの憂さを晴らしていただきたい。
12:55 スタート5分前

 サイレンが鳴り、警笛が響く中、ピットクルーがコースから退去する。スタートの瞬間はプラットホームからも離れなければならない。ピット内で固唾を飲みながらスタートの瞬間を待つ。

13:00 第2ヒート スタート
 トップで飛び出したのは芦屋大学「TIGA」、次いで高雄応用科技大学「Apollo」、Aurora、呉武田学園呉港高等学校の順。チャレンジクラスではMaxspeedがサイドから猛然とダッシュし、柏会をかわしてクラストップに躍り出ている。

13:12 ピット探検隊ツアー 第二陣


8耐出場組はスタート直後で慌ただしい、ということで、
この時間帯はエンジョイクラスのチームにお願いした。
昨日はオリンパスRS、今日は Team Asuka である。
 アスカ・エントラントによる事始談から太田氏による技術解説。実車を前にしての解説なので参加者もぐいぐい引きつけられ、最後はちびっ子撮影会、本大会最長のピットツアーとなった。

13:22 立命館大学チーム ピットイン


突貫工事で作ったキャノピーの調子が良くない。
ガムテープによる応急補修が続く。
14:10 大森学園高校 ピットイン


昨日の後輪が折れるという大トラブルを乗り越えての復活である。
14:11 芦屋大学Bチーム ピットアウト
 スカイエース2号車にてチャレンジクラスに参戦。こちらは学生主体のチーム運営となっているとのこと。 今年は高雄応用科技大学と中東工科大学のメンバーがドライバーとピットに参加した国際混成チームとなっている。

14:12 ピット探検隊 第三陣
 今度は柏会チーム。同じ型からおこした兄弟車:オリンパスRS(4耐に出場)の車両を使っての解説。午前中にレースは終了しているのであるが、このために格納を待っていただいていたのでした。多謝

14:14 堺市立工業高等学校 ピットアウト


ドライバー交代にしては少し早すぎる。どうやらパンクらしい。少々不安がよぎる。
14:26 そろそろドライバー交代
 メタボ気味の某監督をあまり長く乗せておくのは、本人にも車体にも良くないので早めのドライバー交代である。ピットメンバーでイメージトレーニングを行った後、本番に臨む

 走行中に縁石に乗り上げた、とのことでタイヤの状態が少々気がかりな様子、最悪の事態に備えて交換用タイヤを準備し、カウルをはずすためのスタビドライバーをポケットに入れる。

 キャスティングは以下の通り、
   (a)正面で車体を受け止め、発進指示(後方確認)
   (b)主電源(外部スイッチ)操作+キャノピー開閉補助
   (c)パネル冷却(冷水噴霧)
   (d)左前輪と後輪、車体チェック
   (e)ドライバー降車補助1 →乗車補助
   (f)ドライバー降車補助2 →右前輪、車体チェック
   (g)第2ドライバー 乗り込み
   (h)第1ドライバー 降車後タイヤ&車体チェックに加わる

14:30 ドライバー交代 画像はない。

 汗だくで飛び降りた監督自ら車体の下に潜り込みタイヤチェック。

    「問題ない!」

 の声に安堵と同時に願いを込めてエース高橋を送り出す。所要時間54秒



司令席に着くなり矢継ぎ早に指示を出す某監督
 車体自体は問題なく調子は上々。中古とはいえ、耐パンク性能に優れるとの触れ込みを信じて採用したIRC製タイヤは頑丈そのもの。これをパンク寸前まで追い込むTIGAって、いったいどんな走り方をしているのだ?。反面、消費はやや落ちるだろう、という情報も的確で、昨日の消費ーラップタイム曲線に比べて微妙に悪い側にずれている。しかし、この差を4時間分積算しても、パンク一回で生じるエネルギーロス量相当に達することは無いだろう。

 誰も口には出さなかったが、最も緊張しているのは今現在ハンドルを握っている高橋だ。なにせ昨日のトラブルは全て、監督から彼に運転を引き継いだ後に起こっていたのである。トラブルの原因は掴み、現時点で出来る限りの対策は講じたつもりである。憑神が去ったかどうか、見えない敵との心理戦が始まっている。

14:33 H・A・T レーシングチーム ドライバー交代



リアにナンバー貼れるソーラーカーは希少かも
ミツバ社のステッカーが目立つが、モーターはユニークDR086のはず ??
14:36 長野県工科短期大学 ピットイン



オリンピアクラス首位を堅持。
14:47 芦屋大学 Aチーム ドライバー交代

 

ドライバー交代と同時に全車輪のタイヤ交換、
それを30〜40秒でこなしてしまうピットワークは見事の一言


ライバルOSUが、前日のトラブルで沈んだため、独走状態になったTIGA
14:58 手前:日向工業高等学校・チーム 後方:OSU大阪産業大学 ドライバー交代

 鈴鹿参戦3年目の日向工業高等学校。昨日はトラブルでチェッカー受けれず。本日は順調に周回している模様。
 取材陣に取り囲まれている後方OSU、なにやらトラブルらしい。


スピードが落ちきる前にキャノピーを開けてしまい、風圧で破損してしまった様子
両脇をガムテープで押さえる応急処置の様子がモニターに写し出された。

「OSUでもガムテープ使うんやなあ。」

少し親近感を感じたヒトコマだった。
 カートレーサーとしては有名な新人ドライバー嬢だが、ソーラーカーのドライビングには、まだ慣れていない様子。マシン性能が格上なのでチャレンジクラスより速いのは当然だが、ライン取りが違いすぎ、コーナーで無理に突っ込まれ、抜かれる側がブレーキを踏まされる場面が多かった、との声多し。



OSU:大阪産業大学 OSU Model S'  ピットアウトは15:02
15:08 ピット探検隊ツアー 第4陣



最後のピットツアーはバカボンズ・チーム
 ほとんど片づけられてしまったガランとしたピットで説明できるのはこの人しか居まい、とお願いした黒幕氏には「5周分と引き替えに引き受けよう」と条件を付けられてしまったが、この分は「7周くらいの価値はあるだろう」と逆提案したレースクイーンとの撮影会で精算した。差し引き2周分の貸しである。

15:09 ポリテクカレッジ滋賀SPD ドライバー交代


WSC参加経験もあるベテランチーム。今年はドリームクラスに鞍替え。
キャノピーごと車体上面中央部が外せる構造はなかなかユニーク。
15:09 堺市立工業高校 ドライバー交代


たいていのことは生徒に任せるヒゲ親父先生が自らタイヤチェック、
僕たち同様、昨日からパンクに悩まされている。
15:13 キョンシーチーム ドライバー交代


一人が安全靴履いた片足を車輪止め代わりに右前輪前につっこみ、
同時に噴霧器と如雨露でパネル冷却用の水を巻く老獪テクニック。

車体が軽いから出来るのです。
良い子は絶対に真似をしてはいけません。
15:15 再輝チーム ドライバー交代


昨年まではNGMユーザーだったが、今年はミツバモーターに変更。
15:15 Aurora ドライバー交代


昨日の、ピットスタートと終盤の前輪トラブルのダメージをはね除けるように爆走している
 カットアウトサイズからWSCチャレンジクラスに縮小されたボディ 前1輪、後ろ2輪で前輪駆動という基本は変えずに車体全体を流麗な曲線で包んだ美しいフォルム。カットアウトサイズ時代の威圧感が消え、エレガントさが醸し出されている。

15:15 長野工業高等学校 ピットイン
 
 昨年チャレンジクラス4位と年々順位を上げてきている長野工業高等学校。昨日はパンク修理に時間を要し、さらに前を走る車両との接触事故にも遭遇し、車両前部を大きくクラッシュしてしまい、33周で切り上げて懸命の復旧作業。第二ヒートも調子は今ひとつのようで精彩を欠いている。それに加えて、本日は痛恨の太陽電池入力スイッチの入れ忘れ。バッテリーが干上がってしまい、カウルを日差しのあるピットエリアに出して充電しながらの車体の整備を強いられる事になった。

15:26 第二ヒート後半に入った
 ドリームクラスのトップは独走する芦屋大学、次いで台湾科技大学、3位にはAuroraが浮上。呉港高等学校も大健闘であるが、背後からは怒濤の勢いでOSUが追い上げてきている。チャレンジクラスは昨日のラップ差があるのでバラけているように見えるが、第二ヒートだけを取り出せば、柏会、堺市立、紀北工業、マックススピード、バカボンズ、キョンシー、サンレイク、ほとんど団子状態の大混戦である。エネルギーが有り余っているドリームクラスとは異なり、エネルギー残量をゴールと同時にゼロにする算段でギリギリを狙って走るチャレンジクラスのサバイバルゲームがこれから始まるのだ。

15:38 再び特別企画タイム


 昨日の企画タイムはレース開始約1時間後、ということで運転中の第1ドライバーからあがった「不公平だ」という声をくみ上げたレースキング氏が時間をずらしてくださったのである。クイーンさん方は汗まみれのオジサンたちに囲まれて迷惑だったかもしれないが。

 束の間の癒しタイムで少しは楽になったが、ドライバー交代後は憑き神との心理戦が続いていた。レースはマックススピードと付かず離れずの展開。ソーラーカーレースは性能が近い車両との接近戦が最も消費電力的には負担になる。コース取りや加減速の微妙な差が、後続車のドライバーにとっては苛立ちの種になり、不必要なブレーキングやハンドリングを招き、消費電力を増やしてしまうのである。

 監督からドライバーへの当初の指示は、
     「常に視界の中に入れて置いて行かれないように走れ。」
だったが、
     「走りにくかったら抜いても良い。」
になり、その次は
     「抜かれるな。」
に変わっていた。

15:45 残り1時間

「魔の時間帯は過ぎ去ったかな?」

 監督の安全宣言に、メインスタンドからの撮影に移動することにした。このスタンドからコースを見下ろせるのは今回が最後になる。

 ガランとしたピット。エンジョイクラス参加チームのほとんどは既に片づけを済ませてしまっている。8耐参加組も、必要最低限の工具類を除いて、撤収のために荷物をまとめ終えているのである。

15:50 



上野工業高等学校とJTEKTソーラーカーチームのピットワーク


ホームストレートで競り合う台湾応用科技大学とOSU大阪産業大学


サンレイクEVO
 昨日も本日もレース中プラットホームには出ていない、昨日はピット二階からしばらく観戦したが、今日、EVOがコース上を走る姿を肉眼で見るのは初めてだ。

 ボディ上下のバランスが悪いとテールエッジ付近に渦ができ、後尾の上下振動が誘発される。かなりのスピードでホームストレートを下っているのだが(自画自賛で恐縮だが)アッパーカウルは安定しており、全くぶれてはいない。

15:59 



長野県工科短期大学とAurora
16:10 Auroraチーム ピットイン



昨日の反省からか、40周を超えた所で前輪の交換を実施。
操舵輪兼駆動輪である前輪の負荷は、後輪一輪駆動車の後輪よりずっと重いだろう。


御大自ら車体下に潜り込んで作業指示、比較的希な場面である。
16:13 バカボンズチーム タイヤ交換



右前輪のスローパンクチュアー。僅差のチャレンジクラス、このトラブルで
結果的にサンレイクとバカボンズの順位が決定づけられることになる。
16:36 残り30分を切った

 意地を張り合ってきたチャレンジクラスであるが、そろそろバッテリーの底が見え出し、ポーカーフェイスがバレる頃合いである。


 ドリームクラス上位3位までは変化無し、総合4位の柏会にドリームクラスの呉港高等学校が迫っている。OSUが8位まで浮上、煽りで続くチャレンジクラスが総合順位で一つずつ後退するという形になっている。チャレンジクラスで5分前半タイムを維持しているのは 柏会、堺市立、マックススピード、サンレイクの4チームに絞られてきた。


   「これ、空力かなり良いんやで。高速側でも消費カーブがあまり上向いて来ないもん。」

 と、監督が消費電力−ラップタイム曲線を僕たちに見せる。空気抵抗は速度の二乗に比例する。空力が悪い車体は高速域で消費電力が急激に増加するのだが、5分台で走っている限りグラフに放物線カーブは現れて来ていない。

 「乗っている時も空気の壁が感じられないし、風切り音も聞こえない。」

 ガソリン車に比較すればほとんど無音と云っても良いソーラーカーだが、良く聞けば、それぞれに個性有る走行音がある。

風は妨げられたときに怒って音を出す。

風の気持ちに成りきれたとき、そこに音は無い。

 EVOが走るときに聞こえるのはタイヤの摩擦音が車体と路面との間の空間で共鳴するゴーーーっという低周波の唸り音だ。甲高い風切り音はほとんど聞こえない。一年間、激しい議論と試行錯誤を繰り返しながら発泡スチロールを削り続けた僕たちの気持ちが、今、風の化身となってサーキットを駆けている。

16:50 残り10分



応援団がピットに集まりだした。
 コース上では、最後の力を振り絞って、堺市立、サンレイク、マックススピードの3台によるチャレンジクラス第2ヒートのトップ争いが続けられている。

16:58 残り1分半

 コントロールラインを通過した高橋への指示は  「全開」


17:00 チェッカー

 昨日の雪辱に燃える高橋は、先行する堺市立工業をS字で追い抜き、そのまま後続を寄せ付けずに第2ヒートのベストラップでチェッカーを受けた。

17:03 プラットホーム



ベストラップの余韻を残し、ホームストレートを
全速で駆け抜ける SUNLAKE EVO (谷田部純氏ご提供)

あまりに速すぎて僕のカメラに写っていたのは尻尾だけだった。


8時間完走したソーラーカーには惜しみない拍手が贈られる。


最後の一周は予選タイムに匹敵する4分50秒

 第2ヒートは当初の目標としていた90周/8時間に相当する45周/4時間を達成することができた。


周回数
ペナルティ
ドリームクラス
チャレンジクラス
オリンピアクラス
確定周回数
TotalTime
54
 
芦屋大学A
 
 
54
4:04:20
53
 
OSU
 
 
53
4:02:16
51
 
高雄応用科技大学
 
 
51
4:00:24
50
 
AURORA
 
 
50
4:01:24
45
 
 
サンレイク
 
45
4:03:12
45
 
 
堺市立工業高校
 
45
4:03:30
45
 
 
マックススピード
 
45
4:04:01
45
 
呉港高等学校
 
 
45
4:04:12
44
 
 
柏会
 
44
4:00:35
43
 
 
紀北工業高校
 
43
4:02:12
43
 
 
バカボンズ
 
43
4:08:10
42
 
サレジオ高専
 
 
42
4:03:34
40
 
鈴鹿高専
 
 
40
4:03:44
40
 
再輝
 
 
40
4:03:26
40
 
アステカ
 
 
40
4:06:39
39
 
 
名古屋工大
 
39
4:05:34
38
 
 
キョンシー
 
38
4:00:19
37
 
ポリテク滋賀A
 
 
37
3:48:37
35
 
JTEKT
 
 
35
4:02:23
35
 
 
芦屋大学B
 
35
4:04:21
34
 
 
日向工業高校
 
34
4:03:12
32
 
 
上野工業高校
 
32
4:00:53
31
 
 
H・A・Tレーシング
 
31
3:55:01
31
 
尼崎工業高校
 
 
31
4:01:51
31
 
 
 
静岡SC
31
4:03:06
30
 
 
 
長野県工科短大
30
4:06:28
28
 
 
エネマックス
 
28
4:01:22
27
 
 
長野工業高校
 
27
4:00:25
23
 
 
立命館大学
 
23
4:03:15
22
 
 
飛龍高等学校
 
22
2:32:56
19
 
大森学園
 
 
19
2:14:13
18
 
 
大阪工大B
 
18
3:21:20
18
 
 
津工業高校
 
18
4:01:49
5
 
 
 
神奈川工大
5
1:11:10
3
1
 
 
岡崎高等技術専門校
2
4:06:08
2
 
 
 
静岡工科自動車大
2
4:00:45


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2008鈴鹿 風の化身編

SUNLAKE EVOLUTION SECTION FIVE

第一稿 2008.08.14.
公開稿 2008.10.13.
微改訂 2008.10.25

Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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