The Place in the Sun

三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP
DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2008

2008鈴鹿 風の化身編

SUNLAKE EVOLUTION


セクション 4 「太陽の恵み」


2008年8月3日(日)

FIA Alternative Energies cup DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2008
4時間耐久レース、  8時間耐久レース第2ヒート

6:40 空は薄曇り


一晩寝ただけでは抜けきらない疲労回復にもう一本。メンパパさん、御馳。

6:58 鈴鹿サーキット国際レーシングコース ホームストレート


 エンジョイクラスのスタート前に会場入りするのは実は初めてである。アスカ号は既にスタート位置にグリッドされていた。エンジョイクラス4時間耐久レースのスタート時刻は7:20。せっかくの機会なので最後尾からポールポジションまでエンジョイクラス全車両撮影を試みた。

 全部、ここに掲載していると長くなるので、とりあえずご近所チーム



同じピットの近畿大学高専チーム 「空美2008」



同じく同ピットの龍谷大学ソーラーカーチーム 「龍龍」



さらに同ピットのポリテクカレッジ成田 「房総成田」


 後日解ったことだが、この「房総成田」号、実は柏会「武蔵」2001年時モデルのカウルを譲り受け、後尾部を切りつめて利用しているものであるとのこと。

 と、いうことは、同じピットに WSCC Malaysia 2001 のシャーアラムの一件に直接関わった二台のソーラーカーのカウルと、その時に使われていたソーラーパネルが、7年の時を経て同一ピットに集まっていたことになる。これは単なる偶然か、それともギリシャ・オリンピア紳の啓示か、はたまたセパンの魔物の気まぐれか?。
 
いったい僕たちのピットには何者(物)が潜んでいたのであろうか?



10分かかってたどり着いた先頭位置、なんだか、ほのぼのファミリーしてますねえ。



もうすぐスタートだというのに、こんなことしてる人がいるよ
リラックス通り過ぎて、緊張感が・・・・・感じられない・・・・・。

7:20 エンジョイクラス 4時間耐久レース、スタート


 先頭集団はさっさと走り去ったが、中位以後はマイペース、台数も多いため、スタート時点での無理な鞘当てはあまり無い。何しろ学生チームが多く、大半のドライバーにとって、初レースの初スタートなのである。



まだ、朝靄が残る中、50台以上のソーラーカーが静かに熱く走る。



レース開始15分



トップはベテラン パンダンサン・チーム



 続くは、昨年助っ人制度でデビューした千葉黎明高等学校



三番目は、昨年優勝のオリンパスRS (手前)



 四番手、こちらもベテラン、チーム・サウザンド
五番手、初出場の平塚工科高校



六番手、和歌山大学ソーラーカープロジェクト

 パンダサンチームとオリンパスRSは当確、昨年上位3チームの内のもう1チーム、長野県工科短大はオリンピアクラスに鞍替えしたため、そのポジションを何処が取るか?が今年のエンジョイクラスの一つの見所である。千葉黎明と平塚工科高校はダークホース。


 スタートして16分後にようやくホームストレートに姿を現したアスカ号。教科書通り、コース右側を丁寧に走って行く。左側をパスして行くのは先頭集団のオリンパスRS。こちらは既に3周回し4周目に突入している。これだけ速度差があるのがソーラーカーレースなのだよフクヤマ君。

8:30 エンジョイクラスのレースを観戦していたいところだが・・・・

 そろそろ、10:00からの充電タイムと、午後の部になる8時間耐久レース後半戦の準備を始めなければならない。ピットに戻ると、御近所は準備の真っ最中。



お隣のバカボンズチーム、カメラを向けるまでは、おくつろぎモードだったのだが・・・・。

 

 こちら、昨日、前輪の特製アルミ鋳造ホイールが割れて右前から胴体着陸してしまったアステカ・チーム。通常ならボディカウルも甚大な被害を受ける所だが、昨日の画像を見ていただいても解るように、致命的なレベルには壊れていない。ここのところが「柔と剛を併せ持つ」とコピーされるSK水化学さんの新素材「ゼットロン」で製作されたボディの実力だろうか。前輪がエキセルホイールに入れ替えられ、損傷したフェンダー周りもきれいに修復されていた。

 

 ふとピットを境界の壁に目をやると、なにやらアンテナが飛び出た怪しげな小箱が貼り付けられているではないか。これは何か?とコードを辿ると、その先にはハイテクの臭いが・・・・、なんとパンダサンチームがテレメトリーでデータチェックをしているとのこと。なんと似つかわしくない(失礼)ことを!。時代は変わっているなあ(高石ともやの古い歌が脳裏に)。

 さて、ヒトサマのことはさておき、まずは自分たちのタイヤである。

 昨日のパンクの嵐に見舞われたのは僕たちだけでは無かった。某監督の聞き込み調査の結果、パンクしたのはダンロップ社のSOLARMAX、それも2008年製造品だけだったという事実が浮かび上がってきた。限られたエネルギーで極限の走行距離を競い合うチャレンジクラスのチームでは、ソーラーカーレース用タイヤの中で最も転がり抵抗が低いSOLARMAXを採用しているチームが多い。

 

 と、いうことで、昨夜ヘロヘロになりながらも身体に鞭打って用意した前輪セット:SOLARMAX+緑のスライム:パンク防止剤を解体し、他チームに分けていただいたIRC製のタイヤに入れ替えることにした。予選、フリー走行などで使用した中古タイヤであるが、そちらの方が遙かに心強い。


 芦屋大学チームから分けていただいた貴重な緑のスライムは一本全てタイヤに注入してしまっていた。PETボトルを切断して作った即席カップを使い、外したタイヤからスライムを掻き集めて、新しいタイヤに、先に流し込んで、それから、やおらホイールへの填め込み作業が始まる。全員両手を緑色に染め、ニュルニュルである。ニュルニュル


 柏会チーム、関ドライバー氏と情報交換。この不可解なパンクトラブルはフリー走行時から発生していたようで、それにいち早く気が付いた柏会チームは、タイヤをバックアップ用に用意していた2007年製造品に交換して難を逃れたようだ。鋭すぎます、F北監督。


 こちらの画像は、後輪のスペアに入れるために、手にへばり付いたニュルニュルを掻き集めている図。貴重なスライムを、洗い流してしまうことは出来ないのである。

 そうこうしている間に、エンジョイクラス4時間耐久レースも中盤にさしかかってきた。

9:19 オリンパスRS ドライバー交代
 


千葉黎明と2−3位争い中のオリンパスRS

9:24 パンダサンチーム ドライバー交代


 スタートからトップを維持してきた細川さん、後方確認を全くしていないドライバーが多すぎる、とかなり御立腹。インから追い抜こうとした際に不意に幅寄せされ、回避するために芝生の上を数回(それも全輪)走らされたとのこと。

9:30 充電タイムの準備開始

 そろそろ8時間耐久レース組が動き出す時間である。



台湾チーム、カウルを充電スポットに移動中

9:45 サンレイク、カウルセット完了



昨夜からリザーブしておいた場所で、太陽を狙ってカウルをセット。

9:56 オリンパスRS、再びピットイン


 道具を取りにピットに戻った所に、つい30分ほど前にドライバー交代を済ませたオリンパスRSが再びピットインしている。タイヤトラブルのようだが、バッテリー解除直前なので顛末を確認している時間がなかった。(ZDPによれば作業に9分を要したとのこと)



充電エリアに戻ると、各チームの健脚がスタートラインに着き、秒読み直前

10:00 バッテリー保管解除


 時報と同時に、80kgの鉛バッテリーを乗せた数十台の台車が充電エリアになっている駐車場内を爆走する。監督の手招きに従ってサンレイク若手二人は真っ直ぐに向かってくるのだが、画像左から、サンレイク台車の前をかすめて右手方向に向かおうとしている台車が二台。あわや接触!という直前に相手が停まろうとしたが、台車と人間は止まっても、慣性がついた80kgの質量は直ぐには止まれない。あわれバッテリーはエネルギー保存の法則に従ってケースごと宙を飛ぶ。
  「おいおい、大丈夫か?」
と、声をかける間もなく、高校生と思しき彼は地面に投げ出されたバッテリーケースを両手で抱えて脇目もふらずに走り去った。進路妨害したという自覚もなく、要するに前方しか見てないのである。ソーラーカー運転してるのも、こういうタイプ多いのかなあ・・・・・などと嘆きつつ・・・・ほんとに怪我無かった?・・・・8時間耐久レースで最も危険なのは、実は、この時間帯なのかもしれない。

 

 朝は薄雲が広がっていたが、この時刻には青空が広がり、絶好の充電日和である。氷水を散布してセルを冷やし、同時にMPPTを団扇であおいで冷却する。久々に行われたZDP冷え冷えグランプリで二位を獲得。


 充電タイムは、御覧のようにカウルとシャーシが分割されている場合が多く、他チームの車両を観察する絶好のチャンスである。またこの間、レース関係者や有力チームのメンバーが充電エリアをウロウロすることが多い。昨日はパンク騒ぎで余りゆとりが無かったが、なんとか落ち着きを取り戻したのでロビー活動再開。

 野村氏がFIA派遣のGeorg Brasseur氏を直接捕まえ直談判。結果、オリンピクラスの提案はJAFサイドからであり、FIAは承認するだけで内容にはタッチしていないということが明らかになった。続きは別頁で。
11:00 4時間耐久レースも残りわずか



トップを走っていたパンダンサンチームに異変が!?

 5分台だったラップタイムが7分台に。昨年エンジョイクラスに初参戦して2位、今年は万全の準備で表彰台の一番上を取るべく万全の準備で臨んでいるはずの細川さんがエネルギーマネージメントをミスるはずが無い。ましてや今年はテレメトリーシステムまで持ち込んでの上でである。この後、S字を登れずにストップしてしまったらしい。予想外のトラブルが生じたとしか思えない。

11:20 エンジョイクラス 4時間耐久レース チェッカー

 

 左:2ラップの差を巻き返し、首位でチェッカーを受けたオリンパスRSチームのピット
 右:アチャー、やられたー、という表情のパンダンサンチーム。


 画像右:初出場で2位に入った平塚工科高校
 画像中:3位に入った宇都宮工業高校
      僅差のように見えるが実は1ラップ差がある
 画面左:停止して充電、3位を目指して再スタートしたが、コントロールライン直前で
      宇都宮工業高校に抜かれてしまったパンダンサンチーム「テクノラプトル"カイ"」

 今年購入したバッテリー容量が、昨年ロットより1割も少なかったとのことである。タイヤだけでは無かった。昨今の原料高の影響で、材料をケチったとしか思えないではないか。いったいどうした? 日本の工業製品



パンダンサンチーム「テクノラプトル"カイ"」無念の4位


 エンジョイクラス上位の結果は御覧の通り、前半の日照が今ひとつだったこと、昨年も上位に入賞していたオリンパスRSとパンダサンチームにトラブルが生じたことから周回数は後退している。


 5位には長野県勢のサウザンドが入った。公式プログラムにはPVを新調と書かれていたが実際には昨年と同じ(将来デビューの新車に確保しているとの噂)あの割れ割れの太陽でここまで走りきる車両性能が凄い(←ほんとに軽くて、良くできています)。前半を沸かせた千葉黎明高校は終盤に大幅なペースダウンで6位に後退したが大健闘であった。

11:30 4時間耐久レース チェッカー終了


 この時刻になると、GaAs組は充電を終了して撤収を始める組が出始める。前輪トラブルで昨日の終盤を棒に振ってしまったOSUチーム、今日は有り余るエネルギーで爆走することだろう。


11:40 レースキング氏先導によるピット探検隊ツアー、

 充電シーンは御氏名ででサンレイクの受け持ちになった。「氷水吹きかけて太陽電池を冷やしてます。何故かというと・・・・・」。JAF公式サイトでは、別途、参加チームメンバーによる説明会(定員200名)が同時間帯に案内されていたが、少なくとも充電エリアにはそんな大勢のツアーは現れなかった。

12:15 充電台からピットへの移動開始


 既に出走前点検の時間帯である。15分後にはコースへの押し出しが開始されるため、ピットへの移動を開始した。太陽が真上近くに来る絶好の充電タイムであるため、移動中も充電コードでシャーシとカウルを連結したまま慎重に移動する。エンジョイクラスの車両保管が解除されるまではピットレーン側の車体を出すことは出来ず、日陰で待機することになったりすると太陽が勿体ない。一方で車両保管解除直後は入れ替わりで大混乱になる。出走直前なので無用のトラブルは避けたい。最も神経を使う時間である。


 充電中は不慮の事故でタイヤを痛めたくないため予備タイヤである。
 ピットに帰って大急ぎで本番用のタイヤに交換する。


 エンジョイクラスの車両保管が終わったピットレーンにカウルを出し、寸暇を惜しんで充電しながらも、スパッツなど足回りを慎重にセットして行く。今日はノントラブルで乗り切りたい・・・・・・いきなり後輪ロックリングを締めていたハンマーの手元が狂い、後輪固定用ネジを曲げてしまった。曲げた当人は大あわてだったが、この程度はご愛敬。

12:30 スペシャル・イベント・タイム

 メンバーは準備と点検に忙しいが、僕にはもう一つやらなければならないことがあった。昨日、オーロラチームがバッテリー過充電トラブルでピットスタートになってしまったため、果たせなかった約束が残されていたのだ。


詳しくは、オーロラチーム公式サイトより
鈴鹿直前プレス発表資料
http://www.aurorasolarcar.com/press/suzuka_2008.html

鈴鹿2008レポート 8月3日の項
http://www.aurorasolarcar.com/programmes/2007-08/2008_suzuka_reports.html"
ご参照。

12:42 コースへの押し出し開始


 昨日のパンクトラブルで、予定以上のエネルギーを消費してしまっていたが、8割を入れ替えたPVがフルに働き、MPPTも調子よく動作、なにより日照に恵まれ、レース戦略を立てるだけの十分な電力を蓄えることが出来た。

 巷の電気自動車はプラグインが大流行であるが、電力システムにパラサイトしなければ走れない、というのであれば、それはガソリンスタンドという燃料の供給システムに依存するガソリン車と同じだ。系統連携から解き放たれた自由こそが独立型システムの目指すところであり、自立型ソーラーカーは、その象徴的な姿である。

 人類最大の罪は、光を自在に操れるようになったと錯覚して夜と昼の区別を曖昧にしてしまった事。自立型ソーラーカーの様な太陽のチカラを直感的に見える形で享受できるシステムが身近にたくさんあったなら、僕たちは自然に対してもっと謙虚になれると思うのだ。

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2008鈴鹿 風の化身編

SUNLAKE EVOLUTION SECTION FOUR

着稿  2008.08.14.
第一稿 2008.10.06.
微改訂 2008.10.15.
微改訂 2008.11.16.
一部追記 2008.11.18.

Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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