The Place in the Sun

三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP
DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2008

2008鈴鹿 予告編

「SUNLAKE EVO 製作記」
How to Make the SUNLAKE EVO

Volume 1


上:SUNLAKE EVO イメージスケッチ
下:仮想ライバル 芦屋大学 三号車

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2007年8月05日(日)夕刻 鈴鹿サーキット

ドリームカップ・ソーラーカーレース鈴鹿2007が終わった。




結果はチャレンジクラス、自己最低記録更新。

手に入ったのは、第2コーナーで採取した
袋いっぱいの砂利(グラベル)だけだった。

「このままでは終われない」

過去形で語られるのもやむ無しという気持ちが、
このとき、僕たちの心の中から完全に消え去った。



2007鈴鹿編
( FIA Altanative Energies Cup Dream Cup Solar-Car Race Suzuka 2007 )
結尾(コーダ)が欠けた夏の奏鳴曲(ソナタ)


2007年8月19日(日) 滋賀県某所 サンレイク来シーズン戦略会議

 新車を製作することだけが決定された。

 レース終了直後から新車製作を目的とした情報収集活動が開始され、2週間経過後の、この日には既に新車設計製作方針を決定するに十分な情報は集め終えていたことだけは追記しておこう。目的の共有こそがプロジェクトで最も重要な事項である。
 問題は、車両製作スキルを有するメンバー4人の勤務地が東京、大阪、大津に分散し、平均年齢も四捨五入すれば半世紀に達しているという点にある。この決定を意欲的と捉えるか無謀と考えるかは第三者に任せることとしよう。答えが11ヶ月後に出ることだけははっきりしている。

2007年8月23日(木) 都内某所 宣戦布告



 ソーラーカーの伝道者 Mr.Slim、□会のF北監督にSドライバー、○リンパスRSの△本監督、手前でぶれてるのは某チームの某監督、歴戦の勇士で、なおかつ現役の豪傑達の集いである。僕だけドライバー経験が無いのが、少し寂しい。・・・・この豪華メンバーに向かって某監督は高らかに宣戦布告してしまった。T原さんからはレジスタンス的にという指示がでていたのだが。

 ソーラーカーレースは、車両設計に着手した時点から既に始まっている。敵は他のチームではなく、限られた時間と資源しか投入できない自分たち自身が置かれた状況そのものだ。スターティング・グリッドに車両を置いた時、すでにレースは99%経過しているのである。残り1%までにたどり着いたソーラーカーに、太陽は平等にエネルギーを供給してくれる。


2007年9月02日(日) NEO解体 その1:シャーシ張り出し部削除



まず、乗り納め 前回、僕が乗ったときは、こんなにハンドルは軽くなかったな。



 Sunlake NEO はボディカウルを上下に分け、アンダーボディに相当する部分がカーボンFRP製のシャーシと一体化された構造になっていた。アンダーボディ部分は旧来から使用してきていたシャーシに、ザイロン補強スチレンボードで張り出す形で組み付けられていた訳である。新車は、まだ図面はおろか、イメージスケッチさえ出来上がっていないのだが、兎に角ゼロベースで見直すという方針の下、アンダーボディ部分を取り払う事にした。



さあ、ここまでバラしてしまうと、もう後戻りは出来ない。
サンレイクの新車製作は、毎回、ここから始まるのである。



後輪周りのダイニーマ/カーボンFRP部分も切り落とす。ここが重かったんだよなあ。


2007年9月09日(日) NEO解体 その2:メカ、電装系解体



 2004年の状態に戻ったシャーシ。2000年から使っている年代物、よく見るとあちこちに層間剥離が生じている。クリーニングしつつ、気長に修繕しなければ。


2007年9月15日(土) NEO解体 その3:パネル剥がし



 アッパーボディカウル側のソーラーパネル剥しに着手。初心者はくれぐれも慎重に。シリコンウエハは簡単に割れてしまう。そうなるとパネル一枚が「パー」。メタノールで慎重に両面テープを膨潤させ、ゆっくり、ゆっくり、カッターナイフの刃をボディとパネルの間に差し込んでゆく。決して「剥がそう」と思ってはならない。カッターナイフの刃を差し込むのは、メタノールによる粘着剤の膨潤を促進するためである。「剥がず」のではなく「剥がれるのを待つ」のである。

繰り返す

 「剥がす」のではなく、「剥がれるのを待つ」のである。この忍耐を持たない者は、決して、この作業に手を出してはならない。



集中力が必要な作業なので焦りは禁物。今日はここまで。

2007年09月30日(日) エコカーフェスタ2007泉大津

2007泉大津(Team Asuka Debut)編
( Eco Car Festa 2007 in IZUMIOHTSU PHOENIX )
MAIDEN BOYAGE

2007年10月13日(土)〜14日(日) ソーラーバイクレース浜松

2007浜松編
( Solar Bike Race in Hamamatsu 2007 )
ソーラーバイクレース参戦記 II
「The Wind from HAMAMATSU」


2007年10月27日(土) 滋賀県某所 サンレイク秘密会議



到着した新しいパネルを眺め、イメージを膨らませる。

製法的には、サンレイクが過去に試行したユニセクシュアル・ファブリケーションの集大成に。 ペーパーモデル



 構造のイメージと細部の補強方法を摺り合わせてイメージを醸成してゆく。細かい部品や製作工程設計はすべて頭の中なので、このプロセスが非常に重要。激論になる場合も少なくない。いや、むしろ、たいていは激論になる。ディスカッションの中でプロセスの理解が進み、新しいアイデアが湧き、合理的な製法が生まれ、形成された合意が腹に落ちるのである。


2007年11月03日(土) 滋賀県 サンレイクガレージ 「大掃除」



パネルを全て剥がしおえたNEOのカウル。今日でお別れ



同、裏側 表裏にザイロンクロスを積層した発泡スチレンボード製



後尾部との境目が座屈破壊したため、カーボンクロスを
4重に張り込み補強修理してある。(黒い部分)



 新車の材料となる特大発泡スチロールブロックや補強クロス類を収納し、かつ、ボディ製作スペースを確保しなければならない。昔年の垢を全て放り出さないと、とても収納できそうもない。



よく、これだけ入っていたものだ。



小型トラックいっぱいのゴミを廃棄


2007年11月10日(土) 滋賀県 サンレイクガレージ 「基礎工事開始」



ボディ・カウル製作のための土台となる床の製作開始。まず垂木を組んで、



 コンパネを貼り付ける。基礎のコンクリートが必ずしも平らではないので、水準器を使って高さを確認しながら、薄い板を挟み込んで慎重に調整する。



 シャーシを所定の位置に置いてみる。裏返しじゃないかって? そう、今回の製作方法は、過去、見えない事を口実?、あるいは見て見ぬふりしていたために雑な仕上げになってしまっていた車体裏側の仕上げを改善し、空力学特性追求しようという思想から生まれた新提案のフリップ・ビルドアップ工法:裏返しにして天板を基礎にして逆に積み上げていこうという作戦なのである。


2007年11月10日(土) 滋賀県 サンレイクガレージ 「天板受け型製作 1」



大工作業が続く。



コンパネを車体リブのネガ型にカットし、井形に組み合わせると、
裏返しにした天板のイメージが見えてくる。


2007年11月23日(金) 滋賀県 サンレイクガレージ 「天板受け型製作 2」



 その上に5.5mm厚の合板を貼り付ける。今回の車体のパネル面は平板を曲げて組み合わせる多二次曲面とするため、この合板のカットサイズが天板部材のカットサイズと一致するのである。曲面と曲面の継ぎ目、早い話が車体中央の稜線をいかに上手く出すかがポイントなのだが、手書き図面にそのような複雑な曲線があるわけもなく、全ては現物あわせなのである。これは、うまくカーブをフィットさせることが出来た記念写真。



 勤労に感謝しながら作業は続く。平面に戻ろうとする合板をチカラでねじ伏せ、井形に合わせて変形させてネジ止めするのだが、今度は井形が合板の復元力に負けて浮き上がってきてしまう。結局、各部を床面にL金具で固定せざるを得なくなり時間を食ってしまった。



ようやく土台が完成したときにはあたりは真っ暗。

 雄型/雌型を使わない、ユニセクシュアル・ファブリケーションとは、通常の型を使った製法における雄型そのものを製品として使ってしまおうという一品物作りである。削り出し作業自体は大きな彫刻みたいな物だと思えば良い。製作作業における最大の課題は出来上がった立体物の表面に、いかに上手く繊維補強プラスチックによる強化層を形成してゆくか?というところにある。型が無い訳ので、固定し、圧力をかけるのが非常に難しい。

 そこで、今回は、比較的簡単な車体天面側の形状のネガ型を、合板を組み合わせて作ってしまい、その上に発泡スチロールブロックを置いて削っていこう、ということにした。半ばは雌型を直接作るのに等しい訳だが、成型に使うわけではない。裏返しの状態での作業になるが、複雑な形状である車体底面側の積層補強時に加重を加えてもボディ全体の変形を防ぐことが出来る。


2007年11月24日(土) 滋賀県 サンレイクガレージ 「ボディカウル用リブ製作」



いよいよ車体本体に着手。スチレンボードに図面を描き、切り抜いてゆく



 以前は、オーバーヘッドプロジェクタを使って拡大画像をスチレンボードに投影し、罫書いていくという手法を使っていたが、歪みが大きく寸法が狂い、後々、細部の調整で難儀することが多かった。今回は面倒だが1/10スケールの図面から寸法を読み取り、一枚一枚実寸で罫書いては切り抜きという地味な作業。しかし、ここを超えないと車体の形状は見えてこない。

同日夕刻、栗東市某所 太田鉄工所を訪問



NEOのカウルはここに収納されていた。
すでに展開図状に開かれており、まっぷたつ



後ろのカバーかけてあるのが名車33号、手前が制作中のア○カ号。
先のカウル部材の運命は?


2007年12月01日(土) 滋賀県 サンレイクガレージ 「横リブ仮組み」



 完成した横リブの仮組みを行ってみた。縦リブの底面側ラインは、シャーシとの組み合わせを見ながら微調整しなければならないので、まだ切り抜かれていない。



図面と見比べながら外形の曲面イメージを頭の中で熟成させる。

2007年12月08日(土) 滋賀県 サンレイクガレージ 「縦リブと天板の仮組み」



仮組をばらし、天板を並べ仮接合する



その上に、再度リブを組み立て、リブと天板のフィッティングをチェック。



縦リブの底面側ラインをカットし、シャーシを入れてみる。
かなり車体の形状が具現化してきた。早く削り出し工程に入りたい。

2007年12月15日(土) 滋賀県 サンレイクガレージ 「天板接合」



 ボディカウル最大の部品となる天板の製作、長さ5m、幅1.6m弱の巨大な多二次曲面体である。発泡スチレンボード製とはいえ、合板製の受け型が無ければ、自立して形状を保つことは出来ない。定尺(1.8m×0.9m)のスチレンボード6枚の継ぎ目を、カーボンクロス+エポキシを用いて貼り合わせてゆく。

 

スチレンボードの継ぎ目には、要所に小さな補強リブを入れる。
高さ1〜3cm程度ではあるが、剛性が大幅にアップ。


2007年12月19日(水) 都内某所 「ソーラー忘年会」



鉄道事故で出番をくじかれたが、



小田急線沿線某所で熱い思いが

 

夜更けまで語り合われた



富高さんは松葉杖。「バイクが倒れて挟まれた」。
そのバイクの排気量は、僕の自動車よりでかい・・・・・。

「僕も大型自動二輪倒して骨折した。」と某監督。

やっぱり、この人達、規格外だわ・・・・・・・。

2007年12月24日(月) 「サンレイク御用納め」



 天板の接合状態を確認し、今年の作業はここまで、後7ヶ月。 ご覧の通り、サンレイクの車体製作は半野外活動である。向こう数ヶ月は南・北陸とも揶揄される湖国の厳しい北風の中での作業となる。さらに、全く想定外の思わぬ伏兵との前代未聞の場外乱闘が始まるのだが、このときはまだ誰もそれを知らない。

to be continue

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三文楽士の休日

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2008鈴鹿 予告編

「SUNLAKE EVO 製作記 Volume 1」

第一稿 2008.05.24.
微改訂 2008.06.04.
微改訂 2008.06.29.