三文楽士の休日 / The Place in the Sun

試走会 2007年6月25日 於 鈴鹿サーキット



ショート・レポート



2007年6月24日(日)19:04



 280000km

 ソーラーカーよりも長くつきあっている愛車スターレットの走行距離がキリ番に達したのは、ずぶ濡れの積み込み作業からの帰り道だった。誰もがそろそろクルマ代えたら?って云ってくれるのだが、マニュアルミッションのハイブリッドカーをどこのメーカーも作ってくれないから仕方がないのである。

 毎年、梅雨のまっただ中で開催される鈴鹿試走会、公道上を走ることが出来ないソーラーカーに取っての貴重な催しではあるのだが、晴天に恵まれることは滅多にない。

 23日(土)は嘘のような快晴。このまま保ってくれとの祈りもむなしく試走会前日の24日(日)は朝から土砂降りであった。予報では雨は夜半にはあがるとのこと。一度帰って、夜中に再度集まるか?、あるいは早朝未明に積み込みを行うか?。メンバーの生活圏は滋賀県東部から大阪府にまで広がっている。もう一度集まるとなると、かなり睡眠時間を削らなくてはならない。

 迷えるオジサン達の背中を、刻一刻と迫る夕闇が押した。インターネットニュースの雨雲の予想分布と西側の空を見比べ、わずかな雨雲の切れ目を狙って積み込み作業を開始。小降りになった隙にとサンレイク号をトラックの荷台に載せたまでは良かったのだが、小荷物を積み込み始めた頃、無情にも雨は勢いを取り戻し、結局、全員、ずぶ濡れになってしまったのであった。


 まずは電装系に雨がかからないようにビニルで覆い、さらにはコクピットとシャーシ内のメカニックにも覆いを取り付け、最後にカウルを被せるのである。もちろんバッテリーボックスは独立に防水対策を行う。本番では、ドライバーはこの覆いから頭だけを出し、あたかも巨大なポンチョを纏ったような出で立ちで操縦することになるのである。
 ご承知の通り、ソーラーカーレースは雨でも予定通り開催される。いざと云うときに素早く雨対策ができるかどうかはチームの総合力の見せ場でもあるのだ。


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2007年6月25日(月)04:40


 試走会当日 朝4時40分に自宅を出る。雨は未明まで残っていた様子。結果的に昨日、雨の中で無理矢理積み込んだのは正解だったようだ。

2007年6月25日(月)06:20

 途中、朝食を取りながら鈴鹿サーキット到着は6時20頃。車両搬入は6時からだが、既に10チームほどがピットに陣取り、続々とトラックが到着している。11ヶ月ぶりに再会するお馴染みの顔々々。


 雨こそ降ってはいないが重い雲がサーキット上空を覆う。路面は濡れたまま、風もないので、これではなかなか乾いてはくれないだろう。


 隣のピットを覗けば、プライベーターの星:パンダサンチームの細川さんと冨高さんが既にセットアップ中。手伝っているのは、あれれ、バカボンズの黒幕サンとウェブマスターさんじゃあありませんか?


 今年は、なんとエンジョイクラスでのエントリー。スリムなカウルはまだ未完成。

 ところで、バカボンズさん、ホームページはどうしちゃったの?


 神奈川工業大学。このサイトにも頻繁に足跡を残していってくださってます。


 昨年からスーパーチャレンジクラスに格上げ?になった柏会。


 昨年はエンジョイからチャレンジにクラスアップし、発電量の差を物ともせずクラス3位、総合8位に食い込むすばらしい走りを見せてくれた紀北工業高等学校。


 サンレイクと同じピットに陣取ったのは地元の鈴鹿高専、私の母校でもある。でも、今の現役学生は、私が卒業した年には、まだ生まれていなかったんだなあ。


 静岡工科自動車大学校。工科専門学校時代から頻繁にモデルチェンジを繰り返している馬力には脱帽。


 尼崎工業高等学校搬入中。


 謎の素材で作られた謎の新車。ISF5000規格ではなくWSCフルサイズかと見間違えそうな、ものすごい存在感。黒幕氏に長野県のタブラヂチームだと教えて頂いた。


 初出場の大正工業若葉会

2007年6月25日(月)07:00


 7時頃、ようやくサンレイク本体到着。昨年はトラックの幌に水が溜まっているのに気づかずに幌止めのゴムバンドを外してしまい、あわや、車体を潰してしまいそうになった(パネル痛めたのは事実)。今回の往路、雨は降っていなかったとはいえ、まずは荷台によじ登り、安全確認した上で荷ほどき開始。早速おろしてアライメント調整開始。なにせ、昨日は一日中土砂降り、狭い車庫では調整したくてもできずに悶々としていたのだった。

 7時からすでに随時運行しているコース下見バスに乗り込み、路面を確認してきたドライバー高橋の一言「びしょびしょ」。
 モーターチューンした結果を確認するには全速で走ってみなければならないのだが、このコンディションでは、とても無理。恨めしそうに空を見上げるが、太陽はいっこうに顔を出しそうもない。



2007年6月25日(月)09:25


 午前の部は9:00からだが、アライメント調整に手間取り、ピットを出たのは9:25。路面が濡れているので、様子を見ながらということで、そろそろと送り出したのだが。

 一周目、なかなか帰ってこないと思ったら、シケインで360度ターンをしてしまい、しばらく止まっていたらしい。


 本日のドライバーは高橋一人。午前中はモーターチューンの感触を掴むために自由に走ってもらうことにした。

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 と、いうことでピットは暇になってしまったので、他チームの偵察&取材開始。


 長野県工科短期大学校の「Fizzer」登場。毎年、機械科の課題授業として同じ型から車体を起こして鈴鹿に参加。一昨年は前二輪にインホイールモーターを仕込み、エンジョイクラス三位入賞。昨年は後輪に可変界磁式モーターを搭載し見事エンジョイクラス優勝。


 セッティング作業中、後ろから失礼。まだあちこち仕上がっていないようだ。しっかし、すごいホイールだなあと近づいて後輪をよく見れば、


 これがTIGAと同じ、可変界磁式モーター。


 結局、午前の部は出走せず。でも午後の部後半、コースに出てからは調子良さそうに飛ばしてました。昨年のゼッケンをそのまま貼ってるので、外形は再利用している様子。


 エンジョイ・パンダサン、相当なスピードでホームストレートを突っ走って行くのだが、風切り音がきわめて低い。素朴な形だが空力特性は相当良さそう。でも細川さんはいまいち御不満な様子。チャレンジ、ドリームで表彰台に上った細川さんの三階級制覇に向けての作業はまだまだ続きそうだ。


 同じ滋賀県から参加のポリテクカレッジ滋賀SPD(SolarPowerDreamer)。今年は新車2台での参加とのこと。WSC出場経験もある古参チームだが、昨年まではツシマエレクトリック車のDCブラシモーターを使用。エンジョイクラス出場の一台には(推定)旧車両モーターを流用(左)。


 チャレンジ仕様車の方は、シャーシに旧車両を一部再利用した様子が伺えるが、駆動系にはMitsubaモーター+GHクラフト製CFRPホイールを採用。ソーラーパネルの貼り方からはドリームクラスを視野に入れている様子が見て取れる。



2007年6月25日(月)10:40

 結局午前中は路面が乾かないうちに終了。午後に期待したいが、上空は相変わらず厚い雲。心なしかパラパラと小雨まで降る始末。


 11時前、突如現れた救いの軍団???

 いったいどこに隠れていたのか?と思うほどの、爆走仕様ガソリン車が勢揃い。○○クラブ:愛好家の集いとのこと。ナンバープレートが付いてない車もあるぞ。小さな子供連れも乗ってるし、まったくもう。

 ともかく、これだけの(太いタイヤ履いた)台数が走ってくれれば路面も少しは乾くだろう。

 ソーラーカーレースに慣れた私の耳には、とにかくガソリンエンジンの音は五月蠅くってしかたがない。ソーラーカーのテスト走行ではドライバーもピットクルーも全身の神経を感覚器官に集中させ、車両の以上がないかを探る。モーターの駆動音、タイヤと地面の摩擦音、車体の風切り音、聴覚は車両のコンディションを検知する重要なセンサーなのである。


 この間を利用して、再び他チームの偵察?取材?開始。まずは芦屋大学さんのピット。


 TIGAのコクピットにはお守りのSUNナンバープレートが置かれている。


 Mitsuba製 インホイール可変界磁モーター。ローター側のコイルが剥きだしなんですよねえ。砂利を巻き上げるようなコースではないから良いけれど


 スパッツには台湾ラリーのゼッケンが。


 サンレイクピットにコース記録保持の走る営業マン:野村氏登場。午前の部の初っぱなに高橋が360度ターンしたのと同じ場所でスピンし、コース脇に突っ込んだそうな。「下手にハンドル操作すると、かえって危ないのでそのまま突っ込んだ。」とのこと。人生初めての経験で、相当へこんでいるとは本人の弁。意外に(失礼)ふだんは安全運転なんですね。まあ、立ち直りは早そうな人なので、本番はいつものように片倫走行でシケインをすり抜けてくれるでしょう。コース脇でTIGAを砂利から掘り起こして押してる野村氏に手を振った高橋は、その手でコクピット内に取り付けたサイドミラーを落としてしまい、狭い車内で苦労して手で探しながら走っていたらしい。おいおい。


2007年6月25日(月)13:00


 午後の部は13時から。昼休みに調達した携帯電話用イヤホンをガムテープで耳に貼り付け、再び高橋が乗り込む。爆走集団が走り回ってくれたおかげでコースはほどよく乾き、この調子だと全開で走れそうだ。今度はレース本番並に一周ごとにデータを取り、モーターチューンと車体改良の効果を確かめなければならない。



 ホームストレートを走るサンレイクNEO、後方は三重県立津工業高校の「TENTEL」


 プラットホームには危険防止策が新設されていた。ホームよりを走ると写真写りが・・・・


 三重県立上野工業高等学校。部員が多いのはいいですねえ。うらやましい。


 静岡TVの取材を受けている栢会。当チームには、最近とんとプレスからのアクセスが無い。春先にTV取材の申し込みがあり、OKと返事した後で、モーターチューンの最中だった事を思いだし、あわててスケジュール確認したのに、以後はナシのつぶて。△△テレビさん、もうちょっと礼儀作法を身につけている製作会社使ってよね。


 静岡工科自動車大学校ピット、○井先生、お疲れの様子。朝見た時にはカウル後半部も取り付けてあったのだが、試走時には取り外され、後輪むき出しの状態で走行テスト。


 左端でピットアウトして行くのが静岡工科自動車大学校の新車。

 中央は和歌山大学。試走中にパネルが剥がれてしまったようで応急修理中。捲れあがっているパネルがばたつくのも気にせず、全速でピットレーンを走っていたが、パネルはもう少し大事にしよう。ピットレーンの制限速度守らないと本番では減点されます。

 右側で作業中なのが、芦屋大学の二号車。1996年製なので既に11年選手。芦屋大学は毎年二台で出場し、ドリームクラスは大学の名を賭けた勝負車、もう一台は教育的側面から現役学生の自主性にまかせた運用を行っている。


 アッパーカウル無しで疾走中の謎の車両。危なっかしいなあと思ってみていたら、


 後輪が外れてコースアウト。幸いドライバーに怪我は無かったようだ。TVモニターにはドライバー氏がロックリングらしき輪を拾っている様子が映し出されていた。もしや?と思い搬送されてきたピットを訪ねると


 謎の車両は昨年チャレンジクラス4位の長野工業高等学校「BIG WAVE SONIC」だった。後輪は想像したとおりMitsuba(しかも可変界磁)モーターにGHクラフト製CFRPホイール。ロックリングが緩んで後輪が外れ、外れた後輪がシャーシ後部を下側から突き破っている。アッパーカウルが装着されていたらかなりの枚数のソーラーパネルが損傷していただろう。タイヤを失ったインホイールモーターは自らが地面を直接走る形となりローター外周部には無惨な爪痕が刻み込まれてしまっていた。昨年のエコカーフェスタ湖東でのマックススピード、昨年鈴鹿試走会のキョンシーチームと同じ事故だ。かくいう我々サンレイクも一昨年、後輪ロックリングが緩み、あわや、同じ事故を起こしてしまうところだった。

 ここに名を出してしまったチームの皆さんには、大変申し訳ないが、同じ事故を繰り返さないためにお許しいただきたい。MitsubaモーターとGHクラフト製CFRPホイールを組み合わせている場合には、モーターとホイールの相対位置とロックリングの締め込みに細心の注意が必要だ。


 昨年、新設された観客席最高段からS字を望む

 このあたりまで読んで頂いた方の中には「あれれ?」と疑問に思った人もいるかもしれない。そう、芦屋大学と並ぶ関西の雄、OSU大阪産業大学の姿が見えないのだ。仮エントリーリストには確かに名前は挙がっていたし、そもそも今大会のポスターは OSU Model S' のドアップなのだが・・・・・・。

 どうやら、松下電器産業との共同で進められている、乾電池で時速100km以上を目指すプロジェクト「 OXYRIDE SPEED CHALLENGE 」が忙しく、ソーラーカーに手が回らないとのこと。試走会はおろか、本番出場さえ危ないという噂。

 豪州 AURORA の David Fewchuk 氏からは、新車製作、厳しいが、鈴鹿に向けて頑張るって連絡をいただいていたのだが、どうやらこちらも間に合わず、今年の外国勢は台湾チームだけになりそうな情勢。WSC20周年の年に、それってちょっと寂しすぎます。


 コントロールタワー前のゲートをくぐるサンレイクNEO


2007年6月25日(月)14:40


 試走会午後の部終了。結局晴れてはくれなかったが雨も降らず。昨年よりは満足すべき試走会であったが、肝心のデータの方は「・・・・・・・・・・」平澤監督の表情は渋いまま。スピード落ちたけど消費はあまり変わらんなあ。


 インターネットの気象情報頁は、西方に不穏な雨雲が接近しているのを伝えていた。我々が大津に帰り着くであろう時刻、京都では雨が降っていることになっている。ぐずぐずしてはいられない。反省会は後回しにして撤収準備開始。積み卸し時に雨に遭遇する可能性があるため、昨夕の積み込みと同じように大急ぎで雨対策してからトラックへの積み込みを開始。


 この後か明日の午前に別の走行会がある様子で、パドックにはランボルギーニやフェラーリが、またまた爆音を轟かせて集まって来ていたのだが・・・・・・・・。


2007年6月25日(月)18;34


 道草もせずにサンレイク基地に急行。格納終了とほぼ同時に大粒の雨が降り出したのだった。





公開 2007.06.30.
追記・訂正 2007.07.07.
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