三文楽士の休日

Phaethon2004

ギリシャ・ソーラーカーラリー道中記

 




*** 忘れ得ぬ地 「パトラ」 ***




 

2004年 5月 26日 水曜日 ラリー第3LEG オリンピア〜パトラ 173.42km

 10:30 オリンピア遺跡にほど近い車両保管場所からスタート。オリンピアの街の中を通り抜けて田園地帯に入る。バルカン半島の東海岸側に位置するアテネに比較し、西海岸側の緑は鮮やか。今日は昨日の山道とは別の海沿いの比較的平坦な道をパトラに戻るコースである。途中、ソーラーカーから「車がふらつき、時々制御不能になる。足回りがおかしい」と連絡が入り、道ばたに緊急避難して点検する一幕もあったが、特に異常なし。風が強く、巡航速度も速いため、風に煽られたのだ。サンレイク号は全長5m最大幅1.8mという大きさだが、ドライバー含めても全重量は200kg程度と、参加15台中で最も軽い。


 

道ばたで足回りをチェック。周囲は農場だが、たちまち人だかり。

 

「初日はどうなることか?と思ったが、この車、結構やるじゃないか」
なんて思いながら見ているのかな? クリスとサンレイク号

 

 本日最初のSS5はカーブの少ない広い道、車の最高速度の競い合いに等しい。Phaethon2004ではSS以外の一般道での規定時間はかなり緩やかになっているため、トラブルなく走れさえすれば減点は無し。つまりSSの結果の積算のみで事実上順位が決まるのである。SSは毎日のコース内に二カ所(数km)設けられており、上位は芦屋大とOSUがコンマ数秒単位でデッドヒートを繰り広げている。


SS開始 電光掲示板をみてスタート SS ゴール地点

 

パトラは近い

 

SS5を終え、高速道路に入る。これぞギリシャだ、と云いたくなるような青空の下、ときおり風に煽られながらも、サンレイク号は快調に海沿いのハイウエイをパトラに向かう。やがて見覚えのある景色、コリンティアコス湾を横切るRio-Antirrio大橋が見えてきた。

 

トンネル内を走るサンレイク号。太陽の下を走ることしか想定されていないので、
当然ながら前照灯は無い。競技規定の初版では前照灯を付けよとされていたが、後に不要と変更された。

 

         コリンティアコス湾を横断するRio-Antirrio大橋 実に雄大な眺め。

 

 

料金所に並ぶサンレイク号。料金はクリスが払ってくれる。 踏切を横断するサンレイク号。これまた前代未聞。
窓は付いていないし、手も届かないのである。
料金を取られる、ということは一人前の自動車と認められている証でもある。

                        

パトラ郊外の高速道路の側道を使ったSS6を終えて、再び本日のゴールであるパトラ大学の駐車場へ。15:30頃着。一昨日は暗い雲に覆われていた大学背後の山も、今日は緑に輝いている。「こんなにすごい景色だったのか」。そう、一昨日は景色を見渡す余裕もなかった。


再び帰ってきたパトラ大駐車場。雲一つ無いギリシャの空。

 

 パトラ大チームも到着、歓声が取り囲む。出迎えに来てくれていたマスターに無事到着の報告。しっかりと取り付けられているシャフトにマスターも満足そう。パトラ大メンバー曰く、「彼が作った部品は決して壊れない」。マスターとサンレイクとの感動の再会シーンを撮りそこねたダッシュさん。悔やむことしきり。


パトラ大学駐車場にてマスターと再会。「今日は自分のタイヤで走ってきました」

 

 東海大翔洋ファルコンチームでは整備中に電源をショートさせてしまい、クルーが火傷して病院に運ばれた。幸い、浅い火傷で済んだようだが、水膨れが痛々しい。 パトラ大チームは、冷却ファンの配線がメーカーのミスで逆になっており、そのトラブルの解決に2時間悩んだとのこと。

 

 パトラ大学チームと健闘をたたえ合う僕たちに審判長のソクラテス氏が新たなラリーマップを配る。なんだこりゃ?。突然のボーナス・ステージは、今夜のレセプションが行われる古城を改装したワイン工場Achaia Klaussまでのラリーであった。「ひょっとしてソーラーカーで行かなければならないのか?」。「ハッハッハッ、日没後にソーラーカーで走れとは云わんよ」。ようやく出るようになった軽口に、いつもは気むずかしそうな顔のソクラテス氏も笑顔を返してくれる。


パトラの夕日 古城を改装したワイン工場

 

20:30 ボーナス・ステージはサンレイクが征した。道に迷いながらも、レセプション会場へは僕たちが一番乗りだったのだ。時間通りなのだが、他のチームはまだ来ていない。一番乗りの御褒美は薄日が残る中、チームと家族で独占的な記念撮影ができること。ワイン工場見学では、120年前から寝かされているという巨大なワイン樽の紹介があった。ふたには見事な彫刻が施されている。

 

ワイン工場(古城)中庭の時計台 120年前から寝かされているワイン樽

 

 ホテルは一昨日と同じポートリオホテル。カジノもついたリゾート型の豪奢なホテルである。前回は午前3時に到着し2時間ほど仮眠しただけで日の出前にチェックアウト、ホテルの周りを散策するどころでは無かった。明日の朝は隣接している浜辺に出てみよう。コリンティアコス湾の水が塩辛いかどうか確かめておきたい。

 

 

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