第6章 祝福の雨
2001.06.12(火) LEG3 PUTRAJAYA
03:45 食事を終え、ホテルロビーに集合
コンコルドホテル 朝ご飯の時間のお知らせ。
Breakfastの語源を調べたくなった。
04:00 BCに移動 昨夜の作業仕上げ確認
04:30 トランポへの積み込み完了。毎度早い。
夜明け前の積みこみ作業
05:30 コンボイ 移動開始。昨日よりは早くなった。
06:30 プトラジャヤ着
プトラジャヤはマレーシアの新しい行政都市。市街地を封鎖して作られるコースからは首相官邸も見える。一般道とはいえ、出来たばかりの街なので舗装はきれい。Shah Alam よりは、かなり楽に走れそう。
スタートまでの短い待ち時間を利用して充電
08:00 スタート位置待機 ドライバーは平澤
毎度おなじみとなった張り込み作業。一度に張り込まれるガムテープの総重量は2kg近かった。
遠方に見えるのはマレーシア首相官邸
09:00 スタート直前にドライバー平澤から緊急連絡 「何!、モーターコントローラーが動かない?」 急遽、スタート地点からピットまで手で押して上がる(登り坂だったのだ)連日の作業で疲れが溜まった身体にはキツイ。
09:07 コントローラーが動作し始める。原因不明。一周少々のロスになったが、なんとかスタート。満身創痍のSunlake号、後5時間、がんばっておくれ。
左:ドライバー交代と、再び潜り込んでの張り込み状態チェック。
右:ピット代わりのテント。今日は立命館大学チームと一緒。
青字部引用
ようやくピットに着き、各部を点検。どこにも異常は見られず、原因がわからない。 スイッチを入れ直すと・・・動き出した。結局原因不明のままスタート。 この間に約7分が経過。各チームはすでに2周目に入っている。
こうして出遅れたが、その後のSunLake号は順調にラップを重ねる。 ペース的には上位チームと互角の速さで、ピットの指示通りにラップタイムを揃えてくる。 消費電力も良好。さすがエースの走りである。
2時間半が経過し、ドライバーはH氏からkazuoに交代する。 市街地コースの為コーナリング速度が遅いのでタイヤは全く問題なし。 簡単な各部点検の後、すぐに再スタート。 走り出した直後はバッテリーもまだ元気だった。颯爽と上位チームを追う。 ・・・がレース終了まで残り1時間を切ったあたりからバッテリーの電圧計が下がりだした。 登り坂で異常に電流が流れるわりにはスピードがのってこない。いよいよ末期症状か・・・ ピットに電話してバッテリーがもうヤバいことを伝える。 まあこれは計算通りの展開のようで、ピットでは全く慌てている様子はない。 しかしあとちょっとで1つ順位が上がるとのこと。S監督から鬼の指令が飛ぶ。
「もうバッテリーやばいけど、ペース落としたくない。何か考えて!!!」
・・・何か考えてっつっても、そんなん出来るなら最初からやってまっせ。 開き直り半分でペースを保とうと努力するが、登りのトルクがもうダメだ。 30分前までは全然問題なくブチ抜いていた下位チームのクルマにも追いつけない。 レース終了5分前、このコース一の急な登り坂でついにバッテリーは力尽きた。 再びピットに電話し、完全に止まってしまったことを伝える。 そのまま数分間太陽光充電すれば再び動き出せるとのことなので、一旦メインスイッチを切り2分ほど待ってみた。チェッカーの1分前、少しでも前に行ってやろうと動き出す。 すると・・・コースマーシャルが寄ってきてレース終了を告げられた。
「なんでスタートは遅れるクセにチェッカーは時間前に出るんだ!!!」
と思ったが、マレー語で抗議出来るワケでもないのであえなくここで終了。 運良く1つ前を走っていたチームもバッテリーが尽きてピットストップしていたらしく 順位は1つ上がったとのこと。ラッキー!!!
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/8250/wscc2.html (by Kazuo)
13:59 定刻より1分早くチェッカー。
47周回、この日は5位、最終的には総合8位が確定した。優勝はOSU大阪産業大学のModel S’、2位 芦屋大学Sky Ace Tiga、3位 東海大付属翔洋高等学校 Falcon。
14:30 走行後のバッテリーチェック完了 記念撮影タイム。
出場者全員での記念撮影
詰めかけた報道陣
15:00 撤収開始。トランポに車と機材の積み込み。
15:42 コンボイスタート。 なんと!バスが道に迷ってしまった。どうやら高速料金をケチろうとして、一般道を走っていたようだ。田舎町に迷い込んでしまい、完全に方向を見失ってしまっている。お陰で、こちらは、これまで触れることの出来なかったマレーシア庶民の暮らしぶりを垣間見ることができた。住まいはたいへん質素だが、庭先にはパパイヤや椰子の実がたわわに実っている。
16:40 遠くに見えていた雷雲が気が付けば頭上にある。突然バケツをひっくり返したような雨。誇張では無い。道路は瞬く間に泥流が流れる川になり自動車はモーターボートのようにしぶきをあげて進む。
17:00 BC着 雨と雷はまだ続いている。トランポから車と機材を降ろす。レース直後で、どの車もバッテリーを使い果たしているはず、フル充電状態で雨に降られていたら、どうなっていただろうか。 アラーの神の手荒い祝福なのか?最後の最後まで楽しませてくれじゃないか。兎に角BCに運び込み、水を拭わなければ。
18:45 雨も止んだため、これから勢いでコンテナに積み込んでしまうことにする。ビショ濡れの物をコンテナに密封するのは、かなりためらいがあるが、しょうがない。電子回路と金属部分にはコッテリとグリス。
# 教訓:小物、道具用ケースにダンボール箱はダメ。
# 南国のスコールに遭遇したら、もう再利用不可能。
# マレーシアでは、日本で思っているほどに簡単にはダンボール箱は手に入らない。
19:45 コンテナ積み込み作業完了。簡単にコンテナのドアが開けれないように針金で ぐるぐる巻きに。
ずぶぬれのまま、やむなくコンテナに積みこむ。
20:15 表彰式会場へ。
UTMのメンバーと同席。彼らのソーラーカーの完成はレースの前日。それで動いたというだけでも立派な物だと思う。
23:00 パーティを抜け出し(会場ではビール×)ホテルのバーへ平澤、高橋、前田 東海大のキムヒデ先生と合流。疲労は極限に達しているはずなのに気が高ぶっているためか眠気は感じない。 平澤は、その後も、笹氏、堺市立工業高校の先生、キムヒデ先生と。 高橋、前田はホテル周辺の電柱からWSCCの掛け軸?を回収に行きました。我ながら、よくそんな元気が残っていたものだ。
2001.06.13(水) マレーシア出国
09:50 午前中から行動(観光)をおこすはずが、流石にみんな身体がついてこない。朝食は10:00までだという知らせに、あわてて食堂へ。体力が維持できたのは、朝食にて食べ放題、飲み放題のトロピカルフルーツのおかげだったのかもしれない。(飲み過ぎてオナカを壊した人もいたが)
12:00 まとめた荷物をホテルのフロントに預け、自由時間。各自クアラルンプール市内、あるいは近郊を散策した。 タクシー料金が安いので移動しやすい。マレーシアの劇辛料理はもうたくさんだったので、ガイドブック頼りに中華料理店で少し贅沢なランチ。その後は9日に仕入れた情報に従ってセントラルマーケットへ。 体育館のような形状の巨大な建物全体が、エスニック雑貨屋の集合体になっていると思って頂きたい。残念ながら目当てのサッペ(丸太を刳り抜いて作る巨大な弦楽器)は、お土産用の粗悪な物ばかり。 胡弓に似る弓奏弦楽器ルバーブは見あたらない。 インド系と思われる多弦の楽器のジャンク、おそらくは皮張りのトップであったと思われるところにベニヤ板が釘付けされた哀れな姿の楽器を見つけた。なんとか再生したみたいと思い、店のお姉さんと交渉、ついには電話で店主を呼び出してもらい、かなり粘ったが「非売品」とのことで突っぱねられた。 結局、別の店で未だに名前も国籍も解らない胡弓属の楽器と、ネパールの喇叭「ゴンカ」を購入した。
20:00 Shah Alam のホテルに再集合。ホテル日本人スタッフのJunkoさんお世話になりました。
21:00 クアラルンプール国際空港着。
23:45 マレーシア航空 MH052便で出発。 客席は空いている。夜食後のビールで心地よく寝入る という筋書きだったが、水平飛行に移る前、夜食時間前に皆、熟眠モード。
2001.06.14(木) 帰国
07:05 関空着
08:00 帰国審査等々終了。ここにてツアー解散。 まずは全員が無事に帰ってこれたことを、イベントオーガナイザーの皆さんとアラーの神に感謝します。 また、ツアーにお誘い頂いたことに対し、チームメンバーの皆さんに深く感謝致します。
夢のような日々が終わった。
一週間の内に積もり積もった仕事が、すぐに僕らを現実に引き戻してくれるだろう。
次の物語は、2001年7月10日(予定)日本に戻ってきたコンテナの扉を開くところから始まる。
Terima Kasih
了
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三文楽士の休日 / The Place in the Sun / マレーシア編
赤道直下のソーラーカーレース
WSCC MALAYSIA 2001
World Solar Car Championship Malaysia 2001 10-12 JUNE
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あとがき
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