三文楽士の休日 / The Place in the Sun / マレーシア編

赤道直下のソーラーカーレース
World Solar Car Championship Malaysia 2001

第5章 憧れのセパン



2001.06.11(月) LEG2 SEPANG

03:30 行動開始 今日から朝のお祈りに悩まされることはない。なにせ、それより早く起きなければならないのだ。

04:00 BCにて、シャーシとアッパーとの連結部の仕上げ。予備パネルはしっかりと、くっついている。後尾の形がちょっと崩れているが贅沢は云うまい。本日はセパン国際サーキットまで約1時間かけて移動し、そこでレースが行われる。かなりの強行軍である。

04:30 トランポへの積み込み完了。OnTime

05:10 メンバー用のバスが一台しか来ない。サポートカーには工具類が積み込んであるため乗ることができないのだ。高橋、前田、が座席にあぶれてしまったが、運良くオフィシャルのベンツに同乗できることになった。初日、ベンツタクシーに乗り損ねていたので、少しだけ損を取り返した気分。

06:00 コンボイ編成に手間取り、予定より1時間遅れでBCスタート。周囲は雷雲に囲まれている。ひょっとして雨か?

06:50 セパン国際サーキット着。


午前7時は夜明け前、まだ暗い。太陽が真上に来るのは正午ではなく13時過ぎ。

07:10 車両の積み降ろし完了。ピットは広くて気持ちがよい。サーキット周辺は見渡す限り椰子の木である。


気が付けば既に明るい。

07:40 サポートカーによるコース試走。


しっぽの形が悪いが、内部はしっかり固まっていいるのでブラブラはしない。

08:05 スタート地点に待機。あこがれのセパン国際サーキットを最初に走るドライバーは高橋。 スタート前のブリーフィングがモメているようだ。ドライバー交代を一カ所で、だって? なおさら事故の危険が増えるじゃないか! 悲しい思いをするのは昨日の僕らだけで十分だ。


スターティンググリッド 前方から




スターティンググリッド 後方から

09:00 スタート。 グリッドは13。高橋は、昨日の鬱憤を振り払うかのような闘志むき出しの猛スタートを切り、7台をごぼう抜きにしてサイドを駆け抜け、一気に先頭集団に絡む。プラットホームには両腕を突き上げて雄叫びをあげる僕たちがいた。


ロケットスタート高橋の猛ダッシュ。普通は電力消費節約を優先するので、こういうことはしない。

青字部引用

 昨日の成績が12位なので、この日のスタートは12番グリッド。 えらい後ろの方に来てしまったものだ。(トホホ)

 この日の先発ドライバーは私kazuoが務める。 例によって定刻よりも数分遅れでレースはスタートした。 シグナルが青に変わったと同時にSunLake号は猛ダッシュ! たちまち数台をゴボウ抜きし、上位集団にカラむが、ここで思わぬモノが目に飛び込んできた。「黄旗!?」  そういえば車検日に行なわれたブリーフィングで、オフィシャル側から 「スタート時は危険なので、黄旗が出ているつもりで走って下さいね」 とか言っていたような記憶がある。(この時点でようやく思い出した) とはいえこの時点で何台も抜いているので、今さらどうしようもないが 余計なペナルティを食らってもアホらしいので、しばらくは前のクルマについて走る。 が、すぐにイライラして耐えられなくなってきた。

 というのも、前のクルマは走り方のペースがSunLake号と明らかに違うのだ。 SunLake号はコーナリング重視のセッティングの為、基本的にコーナーは速く 反対に最高速は大して上がらない。 これに対し、前を走るクルマはこれと全く正反対のセッティングだった。 従ってこれを追い越せないとなると、コーナーで異常接近してしまい、その結果、ブレーキを踏まされることになる。 (エネルギー勝負のソーラーカーレースではブレーキは禁物なのだ)

 コース上では相変わらずコースマーシャルが狂ったように黄旗を振りマクっている。

「もうガマンならん!!!コイツらホンマに黄旗の意味知ってるのか?」

ピットに電話してこのことを知らせると「かまわん、行け行け」と有り難い返事が・・・

「では行かせていただきます」

 黄旗を振っているオッサンの真ん前で1台抜いてやった。こっちをジっと見ている。 「あ、オッサン怒ったかな?」と一瞬思ったが、気にせずその後も抜きマクった。 1周してきて、再び黄旗のオッサンの前を通る。やっぱりこっちをジっと見てやがる。 黒旗とか振られたらヤだな〜と思ったので、とりあえずオッサンに向かって愛想良く手を振ってみた。さあオッサンはどうでるか・・・  なんとオッサンもこっちに向かってニッコリ笑ってサムアップ。

「やっぱりコイツらルールも知らんと旗振ってたんや」

それからもそのオッサンはワタシが前を通ると毎回手を振ってくれた。

http://www.geocities.co.jp/Outdoors/8250/wscc2.html  (by Kazuo)

2番手ドライバー 「今まで経験したどのソーラーカーレースよりも暑い」(平澤)


ピットに笑顔が戻った。

青字部引用

 その後はピットの指示に従ってラップを重ね、約2時間が経過した時点では、いつのまにかトップを走っていた。 ここでドライバー交代。ピットインし、エースドライバーH氏と交代する。 しかしここでなんとタイヤの状況をチェックしていたピットクルーが一言。

「タイヤ、結構減ってるよ」

 # 白状します。この一言を発したのは私(筆者)です。 #

 ここで私も「いや、そんなことないでしょう」と自信を持って言えれば 良かったのだが、実は私自身も少し心当たりがあった。 ヘアピンに何度かオーバースピード気味に進入して派手にタイヤを滑らせていたのだ。 私の不安そうな顔を見ながらH氏はコースイン。 お気の毒にもタイヤ温存の走りを余儀なく強いられ、淡々とラップを重ねる。 結局、思う存分コースを攻められないままさらに1時間半が経過し、 タイヤ交換とドライバー交代のため本日2度目のピットイン。

 SunLake号のタイヤ交換は非常に工数が多い。 タイヤは3輪とも空気抵抗軽減の為、完全にボディに隠れている。 そのためタイヤ交換する為には、まずボディを外さないといけない。 しかもこのボディをシャーシに固定しているのは、おびただしいまでに 貼りめぐらされたガムテープなのだ。(悲しいかなSunLake号はこれが無いと走れない) ピットクルー全員(もちろんドライバーも)でまずはガムテープ剥がしから始まる。 その後3人でボディを持ち上げ、シャーシと分離すればようやく作業可能な状態になる。 前後に分担してタイヤ交換を実施。終われば再びボディをかぶせ、シャーシと接合。 当然ここでもガムテープである。熱く焼けた路面に寝そべっての辛い作業だ。 結局タイヤ交換には約15分を要し、今日のアンカーS監督にドライバー交代。 新品タイヤでしかも電力は余り気味。当然ピットからの指令は「イケイケドンドン」である。 S監督は例によってアツい走りでコーナーを攻めマクり、当チーム最速ラップを叩き出す。 (その影でH氏が泣いていたのは言うまでもない)

http://www.geocities.co.jp/Outdoors/8250/wscc2.html  (by Kazuo)

 3番手ドライバー下村監督。途中から アーチャンとハヤチャンもお父さんの応援に駆けつけた。「(ソーラーカーなのに)日陰を走りたくなる」 (下村) コクピット内に紛れ込んだ蠅が、あまりの暑さに動かなくなったらしい。


セパン国際サーキットのプラットホーム。しかし、観客が一人もいないのは寂しい。

15:00 終了。順調に周回を重ね、52周回をこなし、この日だけの結果では、4位、トータル結果も9位に浮上。ドライバーも3人ともフルにサーキットを走れて満足気。結局、雨も降らず一安心。


レース終了後、車両をピット裏に出し、夕刻まで太陽光による充電

 日没まで早速の充電 昨日ほどには日差しは無く、フル充電には至らず。MPPTウチワ扇ぎを担当した僕は、疲労+眠気のため、30分間ダウン。

 

広い上に車両も少ないので、鈴鹿のように充電場所を取り合う必要もない

19:00 撤収開始 トランポへの積み込み


全員ぐったり

20:30 セパン発。高橋は脱水症状寸前。売店も自販機もない。かといって、生水を飲むのは怖い。

21:30 BC着 トランポから車を降ろし、走行中に痛めたカウルと、ボディの修理。ラチェットの調子が悪く後輪セッティングをフィックスに変更。

22:30 作業終了

23:00 例の屋台でエネルギー補給とセブン−イレブンにて買い出し。ホテルの部屋で飲むビールはうまい。


命の水 ハイネケン

24:00 明日もまた早い。

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三文楽士の休日 / The Place in the Sun / マレーシア編
赤道直下のソーラーカーレース
WSCC MALAYSIA 2001
World Solar Car Championship Malaysia 2001 10-12 JUNE

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第6章 祝福の雨

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