The Place in the Sun

三文楽士の休日

2012 大阪産業大学訪問記

 

JR学園都市線の住道駅から案内標識に従って学園へのシャトルバス乗り場へ向かう。
係の人に表敬訪問の旨を告げると、乗車時にこれを「乗務員に渡すように」と手渡された。



5分ほどバスに揺られると、巨大な本館建物が視界に入ってきた。



大学バスターミナルに掲げられたキャンパスマップ

左部分拡大  中央部拡大  右部拡大

都市近郊の私学としては相当に広大なキャンパスである。学生数は1万人を超え、関西地区で
3番目に大きい規模である。運営する学校法人は高校野球で有名な大阪桐蔭高等学校と同じ。



東部キャンパスの北側地図の拡大。本日の訪問先は CRYSTAL TERRACE と MONO工房2



クリスタルテラスの大きなウインドウに張られた大阪産業大学開発の数々エコカーのポスター

  

一歩中に入ると、そこは特大のショールームだった。



ズラリと並んだトロフィー



まずは、おなじみの OSU Model S'。
  4輪ソーラーカーで頂点を極めたのは
     (1)TdS1985のダイムラーベンツ社のシルバーアロー
     (2)WSC1996のホンダ、ドリーム96
     (3)ソーラーカーレース鈴鹿2009,2010でのOSU Model S'
  の3台である。



ボディは銀色の飛滴を連想させる流麗な流線形。



シャーシの方は筋骨隆々とした筋肉質。しかし、あまりゴツゴツした感じがしないのは、
端部にすべてRが付けられているからだ。タイヤカバー一つをとっても曲面が艶めかしい。



コンパクトにまとめられ、かつ視認性が良さそうな操作系、どこぞのソーラーカーとはエライ違いである。

 

左:ペダル系 ドライバーの体格にあわせて位置が調整できるように配慮されている。
右:バッテリーと制御系回路が納められたのボックス

 

左:前輪サスペンション、    右:後輪サスペンション
カーボンFRPのアップライトは絶妙の曲線。Aアームの仕上げも美しすぎます。

 

左:後輪に組み込まれたホイールインモーター    右:白い消火器



トリプルジャンクション太陽電池のモジューリングも極薄に仕上げられている。
大阪産業大学のソーラーカーでは、サンパワー社のシリコンセルを使用していた頃から、
積水樹脂と共同開発するなど、太陽電池パネルの仕上げには強い拘りが感じられる。



カウルの裏側に失礼して後方を観察。テール部分の補強により、
空力的に重要な流線型の裾の形状と剛性を確保している。



カウル裏側から前方。キャノピー部開閉のためのヒンジもカーボンFRP製。

 

サイドのダクトホースはカウル前方に設けられた空気孔につながっている。
どこからともなく風が入ってくる、どこぞのソーラーカーとは大違いである。



Model S' コーナーの最後は、ドリームカップに導いた三浦ドライバー嬢とのスナップで


 

パナソニックのオキシライド乾電池で時速100km/hr超を記録した「OXYRIDE号」
一見、エコラン風だが、隣のエコランカーと比較すると、違いががよくわかる。

4輪で、小さく細長いボディながら、トレッドを広く取って安定性を上げ、形状が単調に
ならないようデザイン性にも気が配られている。ムスタングを想わせる派手なペインティングは、
意匠的にはおとなしいデザインが多い藤田先生の作品の中では異彩を放っている



カリーナEV、市販車ベースのコンバート電気自動車にもソーラーパネル

 

でも、そちらより、その手前の白く小さい車体に目が吸い寄せられた。
ベース車体はどこかで見たことがあるような・・・・・・・
江口倫郎氏がデザインしたエレクトリック・レーシングカー「EE−GO−1」である。

しかし、後尾の無骨さが、周囲と調和していない。



なんとその正体は、おそらく世界で唯一であろう「熱電発電ビークル」であった。 パネル拡大

 
左:バイオマス発酵から得られたバイオガス(ブタン、プロパン)を
   ガスバーナーで燃焼させ熱媒を加熱し「温熱側」とする。
右:一方、「冷熱側」はこちらのラジエーターで冷却する。

 

左:熱電発電ユニット。内側が温熱、外側が冷熱、間にゼーベック効果で
   温度差を電位差に変換する熱電モジュールが組み込まれている。
右:得られた電気エネルギーでこのモーターを回す。



三つ並んだメーターは左から発電量(電流)、システム電圧、モーター電流

 冗談みたいなエネルギー源だが、時速4〜5kmで実際に走るとのこと。公称出力は150W、エネルギー変換効率は一桁%の下の方だろう。もちろん、この形式の熱電変換システムを組み込んだ自動車が実用化されるわけはない。しかし内燃機関の廃熱や、電気自動車系であってもかなりの熱を放出する燃料電池車などの廃熱を少しでも有効に使おうという技術に結びついて欲しい試みである。

 お次は、こちらもお馴染みの・・・・・・・、


ソラえもん号



以前は田宮模型に保管されていたようだが、レストア後はこちらに落ち着いている。
鈴鹿などの国内イベントだけでなく、WSCにもTdSにも出場と、華々しい戦歴を誇る。

 

こちらのミニドラは実は空気入れ。



プラモデルもある。



ソラえもん号のひみつ大図鑑



WSC2007ではソーラーカーによる本戦と平行して、各種エコカーも走行した。大阪産業大学は
ソーラーカー OSU Mosel S' と 水素燃料電池自動車 OSU T-3、さらに OXYRIDE号の三台で参加。



左から、水素燃料電池自動車 OSU T-3、ソーラーカー OSU Mosel S'、 OXYRIDE号 

次に案内して頂いたのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・



MONO工房2 大阪産業大学ソーラーカープロジェクトの活動拠点である。



さりげなく壁に張られた写真やポスターに、日本のソーラーカーの歴史が
ちりばめられている。2001年のシャーアラムのブルーモスクの前の黒い
車両が先代の OSU Model S だ。こいつ(失礼)は憎らしいくらいに強かった

と、想ったときに背中に強い殺気を感じて、振り返るとそこに・・・・・・・・・・・



「御本人」が居た。入ってきたときには(画像右側のドア)気が付かなかったのだ。



今では珍しくなった典型的な「ゴキブリ型」スタイルの精悍なマスク
背後から日照を受けて走り続けるWSCに特化した車体形状である。



見渡すと、いろいろと気になるものが・・・・・ムムッ!?、この木型は・・・・・・なるほどなるほど



昔の講習会資料で拝見した Model S' の風洞実験用モデル
後ろにチラリと見えるのはWSCC2001の幟旗



クリスタルテラスにも、さりげなく空力検討用のヴァリエーションが置かれていた。



mono工房2の出口には、入るときには気が付かなかったトラックが。
そうそう、このトラックに初めてあったのもマレーシアだった。今では
排ガス規制で走らせることができず、倉庫代わりになっているとのこと。

「実は、別のところに「最初に作ったソーラーカー」が置いてあるんですよ。」
「え!?最初のって???」
「デザイングランプリに出展した・・・・」
「えーーーー!!!、見たい見たい見たい見たい、是非是非お願いします。」
「じゃあ、」


ってことで向かったのは、キャンパスのほぼ中央くらいに位置する施設



大阪産業大学・新産業研究開発センター でありました。こちらの建物は
産学協同の研究施設なので、セキュリティカードがないと入れないのです。



入ってすぐに視界に飛び込んできたのは



公道ナンバーを取得している燃料電池車 OSU T-4



市販車改造ではなく、組立車で公道ナンバーを取得したのは日本初。
公道走行が行える燃料電池車としてはトヨタ、ホンダに次いで3番目

プレス発表資料



車体には製作に携わったプロジェクトメンバーの名前が記されている。



燃料電池本体は Hydrogenics社製の固体高分子型(PEFC)、ボンベから
水素ガスを供給するタイプである。出力は7.5kw=約10馬力である。


吹き抜けになっているエントラントから階段で二階にあがると、そこに



貴婦人がお待ちであった。まさか、お会いできるとは思っていなかった Simon '89 である。

この車両については こちら:Historical Solar Car Museum にて、ごゆっくり



踊り場から下をみれば、ソファーの後ろに何気なく・・・・



先代の燃料電池車 OSU FCV-3 のカウルが・・・・・・



と、いうことは、これが中身か?


まだまだ、奥が深そう。なんとか機会を作って、是非是非もう一度、じっくりと。

藤田先生、村上先生、ありがとうございました。


SUZUKA2012 TOP へ   三文楽士の休日トップへ


********************************************************


三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2012

2012 大阪産業大学訪問記

第一稿  2012.02.26.
公開  2012.09.30.

Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
The Place in the Sun