The Place in the Sun

三文楽士の休日

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP
DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2010

2010鈴鹿 予告編




2010試走会レポート

2010年6月28日(月)

5:53 出発


 数日前の週間予報では鈴鹿の雨の確率40%。梅雨前線の影響で太平洋側の方が天気は悪そうだ。二晩続けて蒸し暑く、寝苦しい夜だったが、時折激しさを増す雨のため、窓を開けることも出来なかった。

6:16 ソーラーカー発祥の地の一つである京セラ八日市事業所横を通過。


 サンレイク号を積載した本体は6時に基地を出発しているはず。

6:43 新名神高速の案内掲示板には不吉な表示が・・・・・。


  新名神開通以来、国道一号線はガラ空きなので、迷わず地道を進む。

6:50 鈴鹿峠に登る道はセミ・ウェット。


 雲は厚そう。先ほどの電光掲示板の表示もあり、少々不安。今日の主題は初心者ドライバー北村の練習。なにがなんでも晴れて欲しい。
 不安を感じながら峠を越えると、雲の切れ間に青空。サーキットの観覧車が見えるところまでくると、ほぼ「晴」。

 

7:25 鈴鹿サーキット9番ゲート到着。


 9番ゲートはイベント出場者のための専用入り口。いつもは、門番よろしく男性の守衛氏が立ちはだかるのだが、今日は珍しく女性だった。



7:35 高橋と合流



何番ピットに陣取ろうか・・・・とウロウロしている間に、文句なしの快晴に

 サレジオ高専チーム、神奈川工科大学チームと同じ27−28番ピットに御一緒させて頂くことにした。

 

コンパクトにまとめられた秀麗なデザインのサレシアン号は
Phaethon2004参加のための産学協同プロジェクトで作られた。

 本体からは、7:24に「関に到着」と連絡があったが、20分ほどの時間差で朝の渋滞に巻き込まれた様子。なかなか現れないので、例によってピット散策。

         

 お馴染みサン方に混ざって、如何にも製作途上の車両が参加しているのも試走会ならでは



ユニフォームの背中には「OKINAWA」の文字



こちらでは業界重鎮の中川先生と藤田先生が密談?御挨拶中。
中川先生は芦屋大学から大阪工業大学に移籍されたのです。


7:45 監督と合流。

 亀山に宿泊していたはずなので、一番乗りかと思っていたのだが・・・・・朝から、またまたブラバス君が駄々をこねていたようだ。鈴鹿サーキット北山さんにご挨拶。

7:50 初心者ドライバー優先のコース見学バス、随時運行とのアナウンス


 当チームも該当しているのだが、


バカボンズさん、試走会でお会いするのお珍しいではありませんか、
「試したいことがあるんですよ」って? 怖いなあ・・・もう。

8:04 本体のユニック車到着



8:25 受付

 荷下ろしを終え、セットアップは任せ、ピット2Fの受付に並んでいると。
「ヤッ、どうも」と肩を叩かれた。


 構想18年。暖めに暖めて、ドリームカップ最後の歳に初参加「太陽アザラシ」チームの皆さんでした。サンレイクと同じ27−28番ピットで御一緒することに。

  「間に合いましたね。」
  「今朝の3時にようやく動いたんで、なんとかね。」

 最後はSOFIXの大藪氏もつきっきりで突貫作業に付き合われたとのこと。本拠地は大阪の西の端なので移動には3時間程かかるはず。逆算すると睡眠時間は・・・・。

8:45 セットアップ作業

 

久々のフルセットアップ。
 「シャーシ留めるトラスネジ、何処に仕舞ったっけ・・・」
捜し物している時間の方が長い。

9:00 ドライバー・ブリーフィング

9:30 TTI氏登場

 「おはようございます。」の大きな声に振り返ると、青空をバックにこの人物。



社会人エンジョイクラス、昨年3位チームの黒幕氏である。

   「今回は高校生チームで出るんだよね。試走するの?」
   「いや、今日は偵察だけ」

 来年度大会の概要が発表されるので、それを聞きに、というのが主目的。彼もまた鈴鹿の魔物に魅入られて人生を踏み外した一人。鈴鹿の行く末が気になるのは皆同じである。

   「ところで相棒は?」
   「最近、仕事が忙しいとか云って連絡が取れないのよ。」
   「彼女できたんとちゃうか?」
   「間違いない。ソーラーカーチームの士気が下がるときには、必ずオンナの影があるんや。」
   「いや、ウチは女房に突き放されていったから逆だったけど」」

 なんて話しをしながらも、念入りにセットアップ作業は続く。



しつこく、前輪平行度のチェックを繰り返す。


9:50 午前の部 開始10分前



硬い表情の北村



昨年まで北村が務めていたプラットホーム係には新人・瀬川



直前までコクピットドリルは続く


10:03 ピットアウト準備



キャノピーを閉じられると、後はすべてをドライバーがやらなければならない



お馴染みのソーラーカーが次々にピットロードに姿を現す。


10:05 サンレイク ピットアウト


 事前にテレビゲームでシミュレーションは繰り返していたようだが、本物のコースに出るのは初めて。ドライバーは、車両を操縦しつつ、携帯電話でピットに消費エネルギー、太陽光入力、バッテリーコンディションなどのデータを報告しなければならないのだが、まずはコースに慣れるのを優先し、電話の練習は様子を見ながらということにした。



「来たぞ」の声に慌ててプラットホームに駆け寄り、成り行きで押した
シャッターが捉えた北村一周目の記念写真。ソレナリのスピードは出ている。


 ピットでデータシートを睨む監督に「調子は?」と訪ねると
 「天気が良いのと、まだスピード出し切れてないのとで、全くバッテリーが減らない。」

 夏至を過ぎたばかりの上に快晴という最高の太陽光発電条件に恵まれ、今、サーキットでは理想的ソーラーカーが走っているのだ。

 遅い車は右側を、という基本に忠実に走ろうとする北村への監督からの指示は、

「ホームストレートはスタンド側(左側)を走れ。」
「・・・・・???」



「いや、写真を撮りたいだけなんやけど・・・・。」



芦屋大学TIGAとOSU Model S'のランデブー走行



サレジオ高専と神奈川工科大チームは調整中

10:53 安定して回っているようなので、他ピットの情報収集に・・・・・

 と、出かけた直後、あれれサンレイクがピットインしてきた。


 慌ててピットに引き返すと、接触しかけたので大事を取って点検にピットインとのこと。特に異常は無さそう。

 「落ち着いて行こう。」

サンレイクは柔構造(?)多少の接触はボディが吸収してくれる。

11:08 モニターにカウルが外れてコースアウトした車両が映し出された。


 ドライバーの背中の文字から判読するに、沖縄南部工業高等学校+TeamOKINAWAの様子。外れたカウルは仰向けになっている。幸い、太陽電池パネルはまだ未装着だった。



11:26 次に映し出されたのは鮮やかな緑色の車両。


 大阪の企業経営者(若旦那)チーム、若葉会。スピードを出しすぎてヘアピンカーブを曲がりきれなかった様で、真っ直ぐに突っ込んでいる。多くのドライバーは鈴鹿の国際サーキットを走るのは初体験。そろそろスピードに慣れてくる危険な時間帯だ。などと思っていると、

11:27 あれあれ、サンレイクがモニターに


 「何処や?」「デグナーだ」

 コーナーに後尾から突っ込んでいる。

11:30

 「壊れている様子は無さそうだな。」
 「電話こないな。」
 「初めてスピンしたら、かなりドキドキ、パニックているだろう。」


11:37 ピットイン

 ドライバー本人をヨソに、ピットはのんきである。画面を見ているとオフィシャルが押し出してくれた。残り時間も少ないので、そのままピットに格納して車両を点検確認する。



「ありゃりゃ、ここ逝ってるよ。」

 右前輪のサスペンション、ピローボールのネジ部分がグニャリ。Aアームも曲がっている。
 「こりゃ、ブレーキングで逝ったな。」



「トラブったのなら教えて。記事にするから。」

I上さん、そんなに嬉しそうな顔しなくっても・・・・・。

 直前に、遅い車両を一台追い抜き、減速しそこなってそのままカーブに入ってしまったとのこと。
 「晴れてる日にスピンしたのは、初めてじゃないか?」
 まあまあ、それも経験のウチ、ということで。


 ざっと見た限り、他にダメージは無さそう。ピローボールは予備に取り替え。Aアームに亀裂はないので、アライメント調整しなおせば午後も走れるだろう。横滑りしたタイヤは、かなり傷んでいるので交換しなければならない。

 

 調整を始めると、時間は「あっ」という間に過ぎる。平行して北村には高橋によるレクチャーがみっちり。気がついたときにはランチタイムは過ぎ去っていた。

13:10 2011年大会説明会

 

 今日の試走会参加の大きな目的の一つ。ホンダ、読売新聞の二大スポンサーが降板することにより、規模が縮小される2011年度の大会概要の説明会が行われた。詳細(当日の説明に使用されたパワーポイント画面)はこちら

 僕たちの願いは、ソーラーカーレースイベントが、ともかく今後も継続されること。

14:05 試走 午後の部開始


 午後の部は、直前のコースクローズドが遅れた影響で「5分遅れ運行」のアナウンス。最初はベテラン高橋。本人の久々の練習と、午前中のトラブルと再調整の影響を診断する車両チェックも兼ねて。不具合の中には車体の限界性能近くまで引き出してみないと顕在化しない物もある。


14:10 太陽アザラシチーム 初陣

 午前中は、やり残した車体細部の仕上げに費やされてしまっていた「太陽アザラシ号」がピットレーンに姿を現した。タイヤが取り付けられて初めて動いたのが本日の午前3時ということなので無理もない。



眩しい陽光の下だが、残念ながら太陽電池パネルはまだ未装着


 太陽アザラシ号を狙ってプラットホームで粘るが、なかなかホームストレートに帰って来ない・・・・と思いながらピットを振り返ると、何やら様子がおかしい。皆がモニターを不安げに見上げている。もしや・・・・・・・・。

14:30 悪い予感は的中



太陽アザラシ号が無惨な姿で帰ってきた。

 

ホイールからリムが溶接部で外れ、グニャグニャに変形してしまっている。


 シケインで横滑りしてリムが破壊したとのこと。元々トレッド幅が狭い設計の上に、サスペンションがかなり柔らかめに設定されていたため、曲がりきれなかったようだ。シケイン手前で減速していたサンレイクを追い抜き、「TIGAより速いスピードで飛び込んでいった。(高橋談)」ということなので、オーバースピードだったのは明らかだ。ドライバー氏には酷なデビューになってしまったが、本番当日でなかったこと、太陽電池パネル未装着だったことは不幸中の幸い。ざっと見たところシャーシ本体に致命的なダメージは無さそうだ。レース当日には、なんとかして姿を見せて頂きたい。

14:55 サンレイク ドライバー交代

 

 後輪の摺る音が少し気になる、とのことであったが、セッティングがうまくいっていないのだろう(この思いこみが大きな見逃しになるのだが)。今日の主目的は北村に少しでコースとドライビングに慣れて貰うことである。午前中の試乗では、なかなか6分/lap切れないので、昼休みには平澤、高橋の両ベテランからたっぷりとレクチャー。とはいえ、10年以上のソーラーカードライバー経験を言葉で伝えきれるはずもなく、聞かされている方は情報過多で溺れそうになっているに違いない。

「どう? レクチャーの効果は。」
「消費は順調に伸びているが、タイムが伸びんなあ。」

 コース上では北村の必死のドライビングが続く。午前中をピット作業に費やしていた車両も、午後の部ではコースに出てくる。中には完成直後どころか、シャーシだけの未完成車も少なくない。巡航スピードもドライバーの経験値も恐ろしく幅が広いのが試走会である。そういう車群の中で北村がもがいている。

「おっ! 今日のベストラップ 5分41秒。」


「5分34秒」  タイムは縮んだが消費は減らない。


「でも高橋君も、いきなり同じレベルで走られたら、それも困るやろ?」
「『10ウン年のドライバーキャリアは何だったんだ・・・・』ってことになるよな」

要するに求めているレベルが高すぎるのである。

15:50 そろそろチェッカー・タイム

 もうすぐチェッカーが振られる。マル一周走れる最後のチャンス。ここで監督から一見ソフトだが、鬼のような指示がドライバーに飛んだ。

「一回位、5分30秒切ってみない?」




先の キツーイ 一言に反応した北村が叩きだしたタイムは 5分24秒


15:55 チェッカー


16:00 車両をピットに回収



精神力を使い果たした北村ドライバー

 初の鈴鹿試走で、午前と午後、合わせてミッチリ2時間。コースも初めてなら、まともなスピードで車両を走らせるのも初めて。複数台車両に揉まれて走るのも初めてなら、計器の数値を携帯電話で読み上げながら走るのも初めて。しかも、その間ずうっと「ラップタイムを縮めろ。」との指示を実行しようと試行錯誤を続けていたのである。ご苦労様。でも本番はもっと頑張ってね。

 午前中、宮崎工業高校さんと「あわや」というシーン。午後には堺市立工業(本年度から堺市立高校)のサイエンス号と接触してしまったとのこと(済みません)。アッパーボディのカーボン層に10cm程の亀裂が入ってしまったが、太陽電池パネルには異常は無さそう。カーボン層の亀裂は、ボディ自体がそこまで変形して衝撃を吸収した証拠でもある。ここは上から貼り足せば問題ないだろう。



後輪スパッツの開口部がタイヤと擦れている。

 さて撤収、と車両装備を解体しだしたところで「?」。なぜ後輪開口部が擦れる?? 後輪のタイヤ自体は多少変形するが、メカ的に軸が左右にぶれることはない。この部分が擦れることはこれまで無かったはずだ。しかし、開口部分のエッジのカーボン層はほぼ摩滅して無くなっており、下地のザイロン繊維が解れて毛羽立っている。カーボンだけだったら 砕けていただろう。

何かおかしい???

 後輪の角度をチェックしてみる。後輪角度は勿論車体中心軸に合わせてある。しかし、よく見ると微妙に傾いている。アライメント調整時にこれを見逃すわけはない。

 おかしいな・・と高橋が車体後部に体重をかけて車体を揺すると・・・・・・「何? このグラグラ???」後輪サスペンションの下側のAアーム(実際はアルミ厚板の削りだし)の付け根が動いている。

 

 恐らく、皆、血の気が引いていただろう。

 何で?ここが、そう動く??? トラブルは、ほとんどの場合、想定していた最悪の事態が、実体となったときに発生する。想像したくないが、想像してしまう仮定が、たいていの場合は仮定でなくなってしまう。

 冷静に考えれば、答えは簡単だ。築10年、総走行距離は8000km超のシャーシ。数年前から、各部の補修を繰り返してきていたが、遂に、最もチカラが加わる部分=最も念入りに作ったはずの部分にまで疲労破壊が進行してしまったのだろう。後日の解体診断で、この推測は、悲しいかな、的中していたことが判明した。

17:00 ユニック車への積み込みを終え、鈴鹿を発つ。


19:00過ぎ サンレイク秘密基地到着

今日は疲労困憊しているので無理だが、翌週末を待たずに、被害の全体状況を診断しなければならない。


サービス精神旺盛なドリームカップは最後の最後まで僕たちを楽しませてくれるつもりのようだ。


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第一稿  2010.07.04.

Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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