The Place in the Sun

三文楽士の休日 2006新しい夏編

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP
DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2006

資料編


甲羅干し百景

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甲羅干し:ドリームカップソーラーカーレース鈴鹿 レース二日目、ドリーム/チャレンジクラス第二ヒートのスタートは13時からだが、実質的にレースが始まるのは、国際レーシングコースでエンジョイクラスの4時間耐久レースの真っ最中になる午前10時。 この時刻に、夜間の不正充電を防ぐためにオフィシャルの厳重な管理下にあったバッテリーの保管が解除され、各チーム一斉に太陽光発電による充電を開始するのである。

 これが所謂「甲羅干し」。車両は動いていないが、ある意味、最もソーラーカーレースらしい光景と云えるかもしれない。甲羅干しに憧れてエンジョイからチャレンジにクラスアップするチームもあるほどで、鈴鹿では一種のステイタスになっているのかな?

 多くのチームが使っている結晶系シリコン太陽電池は光電変換効率の温度依存性が大きい(温度が低い方が効率が高い)ため、各チーム、少しでも電力をストックしようと太陽電池の冷却に工夫を凝らす。ZDP命名の「ひえひえグランプリ」。最近のソーラーカーレース報道の目は、トップチームの華やかなスピードの競り合いにばかり向かっているようなので、ここで少しばかり最近の甲羅干しの様子を紹介してみたいと思う。

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芦屋大学ソーラーカープロジェクトの「Sky Ace IIχ」(左)、と「Sky Ace TIGA」(右)

 Sky Ace IIχ の方は、オーソドックスに噴霧器で水を吹き付けて冷却中。一方の Sky Ace TIGA は何もせず。GaAsタイプは光電変換効率の温度依存性が比較的小さい上に、圧倒的に発電量が多いので、冷却の必要無し。11:30頃には TIGA の方は撤収準備にかかっていたのでバッテリーが満杯になってしまったのだろう。リチウム系のバッテリーは過充電で簡単にパンク(高い授業料払って経験済み)、一つ間違えるともっと凄いことになるのでエネルギーの積算値管理がとっても大切。

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TIGAの兄弟車 兵庫県立尼崎工業高等学校 尼工−CHALLENGER

 日照量を最大限に受けれるように車体の角度を調整する。各チーム、そのためのスタンドを工夫するのだが、こちらは手前に古タイヤ、向こう側には人間ジャッキ?。冷却はオーソドックスに噴霧器。水冷は冷却効率は高いが、漏電も心配。絶縁に自信のない車両では、ほどほどに。

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和歌山県 紀北工業高等学校 生産技術部 紀北 SOLAR

 オーソドックスに噴霧器を使用。車体はコンパクトでキュート。見れば見るほど良くできている。 甲羅干しタイムは、どの車も静止しており、しかもアッパーカウルを外している場合が多いので、他チームの車両をジックリ観察研究できる絶好のチャンスでもある。

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バカボンズ スカラバイウス

 滋賀県長浜市、大手光学機器、事務機器メーカーC社の社内クラブチーム。今年はGIGAさんがドロップということで残念なことに社会人チームがまた1チーム減ってしまった。色々困難はありますが、お互い頑張りましょう。ところで、みなさん、ソーラーカー置いて何処に??

 なんの工夫もないパネル配置に見えるが、このパネル配置の結果がドリーム/チャレンジクラスで最もスリムな車体幅1450mmを実現している。なんと紀北Solarよりも50mm狭い!!。公表車重140kgはドリーム/チャレンジクラス中最軽量。エンジョイクラス含めても屈指の軽さ。鉛バッテリー込みの重さなんですよね?

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OSU 大阪産業大学 OSU model S'

 こういう角度も「有り」なんですね。車体に変なネジレが加わらない。一考の価値有り。独特の色合いのソーラーパネルはサンパワー社の極薄セルを積水樹脂がこれまた極薄にラミネートした一品。シリコン系ながら20%超の変換効率。

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立命館大学 EV-Racing ブラタリアス

 こちらも人間ジャッキ。昔は、学生チームの多くが人間ジャッキだったが、最近は少なくなった。まだ頑張る?。発泡スチロール削りだしで作った外形の表面のみをFRP化して補強したボディは超軽量だが、甲羅干し後は水を吸ってずっしり重くなる。この水は、第二ヒート走行中に徐々に蒸発し、蒸気化潜熱で太陽電池パネルを裏から冷却する(と、信じる事にしている)。

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再輝チーム ENAX

 今年はOSUと同じサンパワー社の太陽電池に貼り替え。レース直前には東京青山のHONDA本社一階のショールームに特別展示されていた。充電台なんて余計な物は使わず、足下の古タイヤを利用。ドイツのHeliodetも同じようにトランク等のあり合わせの物で車体を傾けるだけ。もちろん、こっちのスタイルの方が圧倒的に実用車っぽい。

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堺市立工業高等学校 科学部 SCIENCE 706

 スプレーで水撒きしているが、控えめ。アッパーカウルをガッチリ支えて縦にも横にも傾けることが出来るスタンドの様にお見受けします。
 春の湖東エコカーフェスタには電気のエコラン:WEM部門にのみ出場。その時には、「部員は新3年生3名のみ。新1年生から部員が入らなかったら、来年度は廃部。そうなったらソーラーカーを売りに出す。」なんて仰っておられましたが、部員数は1、2、3、4、・・・・。まだまだ引退はできそうにないですねY田先生s。

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金沢工業大学 夢工房 KIT GoldenEagle

 なにやら離れたところでメータ見ながら、「もう少し上げて。行きすぎた、ちょっと下げろ」と、角度調整中。冷却水はPETボトルでジャブジャブとふんだんにかけています。
 車体サイズ1500mm幅×4000mm長の低車高コンパクトサイズの4輪車。高さは850mmは、エンジョイクラス含めた前参加車中で最も低いレベル。キャノピー中でアイポイント700mmを確保しなければならないので、額の広い人はドライバーにはなれない?。
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サレジオ高専ソーラーカープロジェクト SALESIO

 旧校名は育英高専。キャスター付きの充電台が良い感じ。こちらもドリームクラスながら車体サイズは1500mm幅×4000mm長とKIT GoldenEagle と同じサイズで、同様に低車高の4輪車。スパッツはなくスカートでタイヤ全体を覆い隠すレーシングカートの思想である。こういうタイプの元祖は HAT レーシングチームの EBARA ECO-TECH だろう。確かに瞬発力では群を抜いている。

 車体を薄くして空力改善を狙ったが極限が再輝チームのENAX号だが、レース自体がここまで高速化してくると、重心の高さがコーナーで致命傷となりかねなくなってくる。事実TIGAもENAXもレース中はしょっちゅう片輪を浮かしているようだ。車体重心を低くし、車体幅を狭くすることにより前方投影面積を小さくしようという考え方も今後のトレンドの一つとなるかもしれない。

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鈴鹿工業高等専門学校 DEVel

 ペットボトルでジャブジャブ水まき。通常、甲羅干し中は、電装系に水がかかるのを恐れて、パネルが貼り付けられているアッパーカウルとシャーシを分離するチームが多いが、このチームはシャーシに乗せたまま。アンダーカウルをシャーシの下から履かせる構造になっているため分離するのがややこしいらしい。シャーシは、本編の「2006年2月26日、鈴鹿サーキット主催、ソーラーカー製作講習会」に紹介したとおり、非常にコンパクトに仕上がっている。

 鈴鹿高専は第1回から連続出場の地元チーム。鈴鹿市の商工会議所が出資、車両開発を鈴鹿高専が担当。工業系の学校を核にし、地元の社会資本がスポンサーとなってソーラーカーを製作するという構図は、日本のソーラーカー発展期の初期に見られた典型的な様式の一つであった。その過程はMaxSpeedのウエッブサイトと、同校職員の城上、小倉、田中氏共著の「作ってみようソーラーカー」(パワー社)に詳しく記載されている。ちなみに城上氏、小倉氏は共に東芝から鈴鹿高専教授に転身、東芝在職中は電池関係の研究開発に従事。ソーラーカー開発当時の久保田学校長は、私の英文法の先生だった。

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静岡工科自動車大学校 Bullet↑VI

 噴霧器使っていますが、水かける量は控えめ。昔は青を基調にしたカラーリングだったが、最近は情熱のオレンジ。昨年末の幕張メッセ、SEMICONジャパンの太陽電池特設コーナーに展示されており、デジカメ忘れたことを後悔した。今回は同じピット。Malaysia以来です。

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国立高雄応用科学大学 National Kaohsiung University of Applied Science Apollo V

 台湾から2回目の参加。秋に予定されている 2006 World Solar Rally in Taiwan では事実上の事務局。Appolo V はWSC参加のために新に作製された車両。ボディ側面の曲率を改善して面積効率を高めると同時に車体全体を薄くして空力を改善している。Emcore製GaAs太陽電池を搭載。電力的には恐らく余裕なので、無理に冷却する必要はないが、みんな日陰に隠れてなにしているのかな?

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中東工科大学 METU Dream Solar Car Team

 昨年、初めてイスタンブールのF1サーキットコースを使ったソーラーカーレースが開催されたトルコからの参加。中東工科大学は首都アンカラにある国立大学。

 アンダーカウルはアルミ製で、比較的しっかりしているように見えたが、アッパーカウルは太陽電池パネルを支えるだけの剛性が無くガタガタ。某社会人チームのメンバー曰く、「太陽電池パネルの扱いがウチのボスより荒っぽい」と。

 水冷する気配は無かったが、それ以前に、あそこまで曲がって(割れて)いては、定格の1〜2割出るかどうかも怪しい。第二ヒートは結局ゼロ周、実際に走行していたのは第一ヒートの半分分ほどで総周回数17はちょっと寂しい。せっかくの海外からの参加、ゆっくりでも良いから完走して欲しかった。。

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久留米工業技術専門学校 ソーラーKIC

 車両を挟んで二人で立ち、クーラーボックスの中の冷水を両手に持ったビールジョッキ様のカップですくって、豪快にザバーッとぶっかけてました。今大会中、もっとも豪放な冷却方法!!。

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三重県立上野工業高校 Sun Ueno Tech S・S・Feeler

 地元三重県から参加の上野工業高等学校、毎年、8月末に鈴鹿サーキット(交通教習センター)で行われるもう一つのソーラーカーレース「テクノドリームフェア」でも好成績を残している。こちらはかわいらしく如雨露(ジョーロ)で水まき。

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Team Sunlake

 甲羅干し場所取り合戦でひときわ目立つこのフォルム。ざっと見渡したところ木造充電台はSunlakeだけのようだ。この充電台は2005年の大会直前週の夜中に突貫作業で作った代物。実際に会場に持ち込み、アッパーカウルを乗せてみると、非常にバランスが悪く (台のせいではない、カウルのオシリが重すぎたのだ。) 車検日の午後にDIYショップに走り、ピット内で大工仕事の続きをする羽目になってしまった。

 来年は、サレジオ高専に倣って「キャスター取り付けよう」と提案したら、「え? 来年もまだコレ使うの?」って監督にきりかえされた。  ううむ、どーしてくれよう・・・・・・。

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三文楽士の休日 2006新しい夏編

FIA ALTERNATIVE ENERGIES CUP DREAM CUP SOLAR CAR RACE SUZUKA 2006

ネオ・ストーリー 資料編

「甲羅干し百景」

第一稿 2006.08.19

Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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