The Place in the Sun

三文楽士の休日

SOLAR BYKE RACE IN HAMAMATSU 2014

2014浜松巡礼編

2014 PILGRIMAGE TO HAMAMATSU


ペロポネソスの既視感  PELOPONNESOS DEJA VU



第三章 逆極性の挑発

Section 3: The Provocation by Reverse Polarity

2014年09月20日 15:15  浜松オートレース場

 コース上ではスプリントレースの準備が行われていた。この隙に、少しは練習しようと、夜間の部で乗る予定の僕が(マトモに乗るのは初めて)交換したバッテリーに接続すると、突然車輪が回り出した。逆に。

 「あれ?」

 そこで気付くべきだった。再確認して3度目に皆を呼び寄せたときに「ポン、プシュー」と嫌な音がして、コントローラーから煙が吹き出した。直感的に電解コンデンサのパンクだと悟った。バッテリーの極性を示す目印が逆に付いていたのだ。

15:30  スプリントレース(1日目)

 「じゅうきゅーばんーーん」

スプリント競技の招集に

 「19番、今は走れませーん。」

と悲しく答えながらコントローラの筐体を分解した。

 電解コンデンサ2個がパンクし、中身が基板全体に飛び散って悲惨な状態だ。パンクしていない2個も膨らんでいるので、すでにダメになっているだろう。さらに、基板を外してみると、なんと裏側の太い銅箔回路がガラエポ層から剥がれているではないか。剥離面の樹脂は黒く焦げ、剥がれた銅箔は反り返って切れていた。とんでも無い異常大電流が流れた証拠である。

 目眩がした。



電解コンデンサが見事に破裂している。

 過ぎたことを悔やんでもしょうがない。スプリントと夜の部を棄権して、明日走れるように、なんとかしよう。明朝の第3ステージまでには16時間以上ある。しかし、手元にあるのは半田ゴテとテスターのみ。予備の電子部品など全く持ち合わせていない。
 似たような電動バイクが手に入れば、そのコントローラーを移植すれば良かろう。メンバーが手分けして近隣のバイクショップや、電気部品を置いていそうなショップを探して片っ端から電話をかけるが、残念ながら浜松近隣では見つかりそうもない。そもそもがネット通販で購入した中国製モーターとコントローラーのセットである。ヒットするのはアリババサイトだけだ。


16:30  3班に分かれて行動開始。

 出来ることが絞られてきた。壊れた基板を睨んでいても始まらない。6人のメンバーを3班に分けて行動開始した。

 部品調達班 明らかに壊れた部品=電解コンデンサの調達
 大津往復班 サンレイク・ガレージまで、部品取りに使えそうなポケバイを取りに帰る。
 現地対策班 現地に残り、故障解析を続け、部品調達班と大津往復班に必要な情報を連絡すると共に、部品が手に入った場合に行うことになる作業の準備をしておく。

 今だから云えるが、この時点でコントローラーが修復できる可能性は1%も無いと思っていた。制御系のICがやられていると思っていたからだ。秋葉原や日本橋ならともかく、浜松でマニアックな専用ICが手にはいるとは思えなかった。基板にこびりついた電解コンデンサの残骸をブラシで掃除しているメンバーに向かって口には出せなかったが。

17:00  6時間耐久レース 第2ステージ開始

 コースでは第2ステージ=夜間の部が始まった。日没は間近。照明もない野外ピットでは作業できないので車検場の建物(バッテリー保管所)に車体を運び込んで作業の準備を始めた。



 土地感のある唯一の地元メンバー:中村と、トラブル嗅覚の持ち主:松丸による部品調達班が吹っ飛んだのと同じ電解コンデンサを見つけて帰ってきたときには、周囲は既に暗くなっていた。

 途中、コントローラを見送って直結ON/OFF制御も考えてプッシュスイッチも探してきて貰ったが、電流容量が足りず、接点が焼き付くリスクが高いので見送った。大容量のリレーがあれば良いのだが、2006年のトラブル時にFujio号に搭載した直結用リレーは、大きな工場の制御配電盤からもぎ取ったパーツ、まず街中のパーツショップでは手に入らない。



(同じ頃、大津往復組は一路、西を目指して走っていた。)

 半田ゴテを使って小さな基板との格闘が始まった。元々電子回路は苦手である。さらに仕事で電気系を触ることは無いに等しい。半田ゴテを使うのは、単純に電線を繋ぐ時だけで回路基板の部品を外したり付けたりなんて作業は20年ぶりくらいである。

 パンクした電解コンデンサを取り替えてみると、モーターは回った。一瞬喜んだが、回りっぱなしである。

 「パワーFETが逝っちゃったんじゃないか?」

 方向指示器やブレーキランプなど灯火類の制御系は動いているので、当初、壊れていると思いこんでいた制御用ICは無事っぽい。おそらくはパワー用のFETが内部で短絡状態になって常時ON状態になってしまっているのだろう。気にかけて覗きに来てくださった山脇さんの診断である。

 互換部品があれば付け替えれるが手元にパーツはない。FETの型番を読んで検索をかけるが、見つからない。どうやら中国製のコピー品のようだ。



 「工房までくれば、ジャンクめいたコントローラが数台転がっている。使えるのがあるかもしれない。」

 神のごとき山脇氏のお言葉である。

 「お願いします。」

 第2ステージが終わると、バッテリーは事務局によって保管され、翌朝07:00のバッテリー開放時まで触ることはできない。作業自体はオートレース場の整備場を使えるのだが、バッテリーが無いためテストが出来ない。他に選択の余地は無かった。

18:30 日はとっぷりと暮れ、コース上はイルミネーションが美しい。



第2ステージ 日没後

 が、見とれている暇はなく、まずはピットの片付けである。

19:00  第2ステージ終了

 第2ステージが終了すると、各チームはバッテリーを事務局に預け、レース場は閉鎖されてしまう。修理に要りそうな機材をまとめ、ホテルにチェックインし、山脇さんが工房に戻れる21:00までに腹ごしらえをしておくことにした。今夜は長くなりそうだからだ。

    「政井君、すまんなあ、こんな状態に呼び出したりして・・・・」
    「いいえ、全然大丈夫です。トラブルがあったほうが面白いですよ。」

 あかん、この人、既に人生踏み外してる・・・・・・。

19:30  オートレース場からいったん撤収。


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2014浜松巡礼編 「ペロポネソスの既視感」

公開  2014.09.30.

Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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