Solar Car Archaeorogy Research Institute
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ソーラーカーの歴史 第二巻 「日本のソーラーカーイベント」

ソーラーカーレース in 栃木

Solar Car Race in TOCHIGI


■■■ <概要> ■■■

 栃木県主催の環境フェア「クリーンアップフェア」の一環として1997年〜1999年にかけて3回開催された。実際の大会の運営には、自社所有のテストコースを会場として無償提供した地元自動車部品メーカー栃木富士産業と宇都宮大学関係者のバックアップがあったものと思われる。*1)

 大会終了後の2000年以後も「走行会」という形で継続され、関東圏のソーラーカーチームにとって、WSR、JISC、WEM出場に向けてのテストデータ取得のための貴重な場となっている。走行会の英語名「Tochigi Solar Spirits」からは、本会を文字通りの単なる試走の場としてだけでなく、ソーラーカー愛好家の集いの場としたい、という主催者の意志を感じとることができる。


■■■ <詳細> ■■■

名称:クリーンアップフェア(年号)ソーラーカー・レース IN TOCHIGI

日程

 第1回 1997年 9月13日 *2)
 第2回 1998年 8月23日 *3)
 第3回 1999年 8月22日 *4)*5)*6)

 とちぎ・ソーラーカー走行会2000 2000年 7月9日 *7)
 とちぎ・ソーラーカー走行会2001 2001年 開催日不明 *1)
 とちぎ・ソーラーカー走行会2002 2002年 開催日不明 *1)
 とちぎ・ソーラーカー走行会2003 2003年 7月12〜13日 *8)*9)
 とちぎ・ソーラーカー走行会2004 2004年 開催日不明 *24)
 とちぎ・ソーラーカー走行会2005 2005年 7月16〜17日 *10)
 とちぎ・ソーラーカー走行会2006 2006年 7月15〜16日 *26)

場所:

  1997〜2005年
   栃木富士産業株式会社試験場テストコース (1周約1.792Kmのオーバルコース)
   栃木県栃木市大光寺町字藤葉新田1141

  2006年〜    GKNドライブライントルクテクノロジー株式会社試験場テストコース  注)

  注) 栃木富士産業株式会社は 2005年11月、社名を GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 に変更した。*19)

主催:栃木県クリーンアップフェア実行委員会 *6)

共催:栃木県ソーラーカー研究会 *6)

    なお試走会の主催は「栃木県ソーラーカー研究会」

クラス *6)

  (1)ソーラー発電量500W未満クラス
  (2)ソーラー発電量500W以上クラス

車両規則 *6)

   車体サイズ:ドライバーが乗車した状態で
     全長6m以内、全幅2m以内、車両の全高 1〜1.6m
   バッテリー
       鉛蓄電池のみ。最大容量は1kw(10時間放電率)

競技内容 *6)

 (1)最高速・ブレーキテスト(車検と予選を兼ねる)
   50mのまでの間に到達するスピードを競う。(50mライン通過までの時間を計り平均速度を算出)
   20m以内に停止できなければ失格。
   速度(km/hr)の数値をポイントとする(小数点以下切り捨て)

 (2)周回競技
   2時間/休憩(充電)1時間/2時間
   2ヒート計4時間でのコース周回数をポイントとする。
    (1997年については2ヒート合計3.5時間 *21))
  1997年の第1回大会では両者のポイントの合計でもって順位が決められた。
  1998年、1999年では最高速ブレーキテストとを分け、各々独立に順位が決められた。
  なお周回競技のグリッド順は最高速ブレーキテストの順番とされた。


■■■ <個別データ> ■■■

1997年 クリーンアップフェア '97ソーラーカーレース IN TOCHIGI

 1997年の第一回大会については東工大Meisterチーム早川氏、小森氏による詳細なレポート *12)の他、JonaSunのBBS(5位までの順位)*2)、プロミネンスウエッブサイト*11)に記録が残されている。*2)*11)*12) 東京工業大学Meisterチームは仕様バッテリーが鉛限定であることに大会直前に気づき、出場を辞退した *12)
 当日の天候は雨交じりだったようで、周回競技において最も周回数の多かったFINEとJonaSunでさえ、平均速度は35km/hr程度であった。なお、Japan Crested Ibis はHONDAのWSC90参加メンバーにより結成されたプライベートチーム(ル・ソレイユから改名)、FINEはカネカ製アモルファス太陽電池を搭載したWSC96の完走車。おなじくJona SunもWSC96を完走、秋田県外に出るのは豪州遠征以外では初であったとのことである。

参加チーム、結果
No.
クラス
チーム名
車両名
最高速
1H
2H
Total
Penalty
総合
ポイント
総合
順位
クラス
順位
km/hr
(point)
lap
lap
lap
(point)
lap
(point)
1
1
宇都宮工業高等学校
U・K hopeT
43
30
25
55
0
98
4
1
2
1
MATSUKAWA 77
(宇都宮大学)
華厳
53
21
18
39
0
92
7
2
3
1
東工-WIN
(東京工業高等学校)
ヴァイフリューゲル
50
23
5
28
0
78
9
4
4
1
欠番
-
-
-
-
-
-
-
-
-
5
1
チーム カイロス
(日本基督教短大他)
カイロス
39
26
11
37
0
76
11
6
6
1
東京電機大学
精密機械工学科
チキチキ丸
26
10
1
11
0
37
14
7
7
1
ポリテクカレッジ千葉
POLYTECH GO GO!!
50
30
8
38
10
78
10
5
11
2
足利工大付属高校A
瀬南3号
45
12
1
13
0
58
13
7
12
2
足利工大付属高校B
ブルー メリデアン
34
28
13
41
0
75
12
6
13
2
Meister(推定)
Leidenshaft(推定)
-
-
-
-
-
-
-
-
14
2
小山高専
TEAM-UBUKATA
KANOW-TECH
50
20
26
46
0
96
5
4
15
2
日産自動車整備
専門学校
S390GT3 ソラリアン
46
34
25
59
10
95
6
5
16
2
JAPANESE
CRESTED IBIS
(本田技研栃木研究所)
FINE
39
39
30
69
0
108
2
2
17
2
H・A・Tレーシングチーム
EBARA-ECO-TECH
64
35
28
63
0
127
1
1
18
1
チーム・プロミネンス
ザ・ウインド・
フロム・ザ・サン
36
28
24
52
0
88
8
3
19
2
Team Jona Sun
Jona Sun
37
40
29
69
0
106
3
3

クラス1:500w未満 クラス2 500w以上


1998年 クリーンアップフェア '98ソーラーカーレース IN TOCHIGI

 事実上の公式ページである栃木ソーラーカー研究所(宇都宮大学の浦井勇氏)のページに公式記録が残されている*13) 大会の様子については JonaSun(山本久博)氏のサイト、*14)*15) および東工大Meisterチームの小森氏のサイト*22) abechan 's HP2*23) に詳細なレポートがある。

 レース中に東工大Meisterチームの Leidenschaft号がピット内で暴走する事故が生じた。幸い人的被害はメンバーの捻挫で済み、間一髪で隣接ピットのJunaSunへの衝突を免れたため物的被害は自損のみで対外的な大事には至らなかった模様である。しかしながらLeidenshaft号にとっては、ピットとして張られていたテントの支柱の下に車体が潜り込む形となったため太陽電池パネルの約1/3が損傷を受けており、被害甚大であった。
 同チームの早川氏が、本事故の詳細と原因解析についてのレポートを残している。 *16)*17) 同様の事故の再発防止のために、当事者にとっては忌まわしい記憶であろう事故の詳細をあえて公開している姿勢を評価したい。

参加チーム、結果
チーム名車両名クラス最高速
ポイント
最高速
順位
周回数周回競技
総合順位
Team Jona SunJona Sun23781151
JAPANESE CRESTED IBISFINE229101092
日産自動車整備専門学校NISSAN S390GT324061053
H・A・T レーシングチームEBARA ECO-TECH25011044
小山高専TEAM-UBUKATAKANOW-Tech2443925
Meister (東京工業大学)Leidenschaft2462876
足利工業高校XIFOS 定時-星12013867
プロミネンスThe Wind From The Sun1349818
SECTSP9812312769
宇都宮工業高校UK ESPEC126116510
東工-WIN(東京工業高等学校)ヴァイフリューゲル(夢)14255111
足利工大付属高校瀬南 24343912
TEAM GAJI GAJI-TYPE R 118143513
宇都宮大学ソーラーカーチームそれいけドライバー13971714

クラス1:太陽電池出力 500W未満   2:太陽電池出力 500W以上
最高速ポイント50mに達するまでの時間を計測し平均時速を算出。数値そのものがポイントになる。
小数点以下切り捨て。なお50mライン通過後20m以内に停止できない場合は失格。
周回競技1周1.792kmのオーバルコースの周回数。
第一ヒート2時間、1時間の休憩(充電時間)を挟み第2ヒート2時間での合計周回数


1999年 クリーンアップフェア '99ソーラーカーレース IN TOCHIGI

 栃木ソーラーカー研究所に開催要領と公式結果の記録がある。*4)*5) またプロミネンス・チームのサイトにて参戦レポートと公式結果シートそのものの画像を見ることができる。*18)
 前年の大会に比較すると、公式記録以外の参加チームによるウエブサイト等がほとんど見られない。公式結果に記載されているのは車両名のみであるため、前後の他のソーラーカーイベントなどの記録を参考にチーム名を推定したが、数チームの名称が不明である。

参加チーム、結果
チーム名車両名クラス最高速
ポイント
最高速
順位
周回数周回競技
総合順位
再輝u−124941131
H・A・TレーシングチームEBARA ECO-TECH25811122
宇都宮工業高校UK ESPEKC126141073
日産自動車整備専門学校NISSAN R390 GT324931074
プロミネンスThe Wind From The Sun1368945
小山高専TEAM-UBUKATAKanow-Tech2502886
宮崎県立佐土原高等学校(?) Silver Arrow 1475787
SECTSP99 12912708
茨城県立総和工業高等学校てるてるぼうず1号12316699
足利工業大学牛山研究室ベラ ソラ Y233106810
JAPANESE CRESTED IBISFINE222176511
(不明)NICE U131115512
MATSUKAWA 77
(宇都宮大学)
華厳  14064813
動力研究会(PIONEER)つうきんくん(改)ソーラー2126154214
栃木県立佐野松陽高等学校
情報制御科
SOLAR AID O号113184115
日産自動車整備専門学校NISSAN R391 プロトタイプ13393216
TEAM GAJIGAJI129133017
足利工大付属高校TKAUJI−X 14072118

クラス1:太陽電池出力 500W未満   2:太陽電池出力 500W以上
最高速ポイント50mに達するまでの時間を計測し平均時速を算出。数値そのものがポイントになる。
小数点以下切り捨て。なお50mライン通過後20m以内に停止できない場合は失格。
周回競技1周1.792kmのオーバルコースの周回数。
第一ヒート2時間、1時間の休憩(充電時間)を挟み第2ヒート2時間での合計周回数


走行会(2000年以後) 「とちぎ・ソーラーカー走行会200X」(Tochigi Solar Spirits)

 2000年については小山高専チームのレポートが残されている。*7)

 2001年、2002年の開催についての直接的な記録を見つけることはできないが、会場の無償提供を続けてきた栃木富士産業(当時)の栗原社長の言葉により間接的に裏付けられている。*1)

 2003年については栃木ソーラーカー研究所のサイトにて開催要領が掲示されている。競技会では無いものの、走行前には車検があり、また開会と閉会の式典、途中には最高速の計測タイムが設けられているなど、安全面への十分な配慮の元に、走行会全体がレース同様の規律のもとに運営されていたことが解る。
 「走行会」という名称、さらに本開催要領の中に記載されている英語名「Tochigi Solar Spirits」からは走行会を単なる試走の場ではなく、ソーラーカー愛好家の集いの場としたい、という主催者の意志を感じとることができる。

 2004年についての直接的な記録は見あたらないが、プロミネンスチームのブログに間接的な記載がある。*24)

 2005年についてはプロミネンスチームによりレポートされている。*10)

 2006年についてはプロミネンスチームのブログ、長野県工科短期大学校、栃木県産業技術大学校などにレポートされている。*26) なお、長野県工科短期大学校、制御技術科の課題製作として作製されたソーラーカー Fizzer18 は、翌8月4〜6日に行われたドリームカップソーラーカーレース鈴鹿2006エンジョイクラスにて優勝を遂げた。

栃木富士産業株式会社

 蛇足ながら。
  栃木富士産業株式会社(現 GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社)は富士重工業(SUBARU)と同じルーツとなる戦前の「中島飛行機株式会社」の栃木工場を利用して創設された企業である。*25
 第二次大戦中に中島飛行機はドイツからの技術情報等に基づき、独自にジェットエンジンやロケットエンジンの開発にも着手していた。旧日本軍の最初で最後のジェット機「橘花」が製作されたのは中島飛行機であった。戦後、中島飛行機はGHQにより解体されたわけであるが、これらの技術は解体により設立された企業の一つである富士精密工業、プリンス自動車を経由し日産自動車に受け継がれた。「ハマ零」創始者の山脇氏が勤務していたのはこの部門であったということになる。なお日産自動車の宇宙開発部門はルノーの資本参加直前に分離され、石川島播磨重工業に移された。


■■■ <資料> ■■■

*1) 青木孝子,「いま、社会の一員として─ 地域社会との共生をめざす企業と市民団体 ─」,経団連1%ニュースNo.59,2002 秋.
  http://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/1p-club/news/news059.html
*2) http://www.jonasun.com/oldsolarcar/what/what_b01.html
*3) http://solarcar.jonasun.com/race/srt98/2h.html
*4) http://ace.ees.utsunomiya-u.ac.jp/~urai/99.html
*5) http://ace.ees.utsunomiya-u.ac.jp/~urai/99taikai.PDF
*6) http://www1.vc-net.ne.jp/~miyaz/prominence/report/rep_99tochigi/report_tochigi99.html
*7) http://homepage1.nifty.com/Kano/test00.htm
*8) http://www.linkclub.or.jp/~terra-p/sub/car/car_top.html?content/~terra-p/sub/car/solar-car1.html
*9) http://ace.ees.utsunomiya-u.ac.jp/~urai/2003kaisai.pdf
*10) http://blog.livedoor.jp/team_prominence/archives/cat_194002.html
*11) http://www1.vc-net.ne.jp/~miyaz/prominence/
*12) 東工大Meisterチーム小森氏のサイト
  http://www.littleforest.jp/meister/tochigi97/index.html
  http://www.littleforest.jp/meister/tochigi97/entry.html
  http://www.littleforest.jp/meister/tochigi97/97TOCHIGI-Cars.htm
  http://www.littleforest.jp/meister/tochigi97/race.html
*13) http://ace.ees.utsunomiya-u.ac.jp/~urai/taikaikeka.html
*14) http://solarcar.jonasun.com/race/srt98/index.html
*15) http://solarcar.jonasun.com/race/srt98/entry.html
*16) http://www.tky.3web.ne.jp/~hay/meister/head.html
*17) http://www.tky.3web.ne.jp/~hay/meister/head/crash98/index.html
*18) http://www1.vc-net.ne.jp/~miyaz/prominence/report/rep_99tochigi/report_tochigi99.html
*19) http://www.gkndriveline-tt.com/comp/nr200502.pdf
*20) http://www1.vc-net.ne.jp/~miyaz/prominence/report/rep_99tochigi/tochigi_42.jpg
*21) http://www.littleforest.jp/meister/tochigi97/index.html
*22) http://www.littleforest.jp/meister/tochigi98/pre.html
   http://www.littleforest.jp/meister/tochigi98/1stheat.html
   http://www.littleforest.jp/meister/tochigi98/lunch.html
   http://www.littleforest.jp/meister/tochigi98/2ndheat.html
   http://www.littleforest.jp/meister/tochigi98/entry.html
   http://www.littleforest.jp/meister/tochigi98/result.html
*23) abechan 's HP2 : http://www.geocities.co.jp/MotorCity/2455/solar-car98.html
*24) http://portal.blog.livedoor.com/common_theme-54002.html?p=3
*25) http://www.ne.jp/asahi/airplane/museum/nakajima/naka-cont.html
*26) http://blog.livedoor.jp/team_prominence/archives/50945542.html
   http://blog.livedoor.jp/team_prominence/archives/51025038.html
   http://www.pit-nagano.ac.jp/exam/mail/20060719.html
   http://tochigi-it.ac.jp/honka/kikai/ecocar/kikaieco2.html



第一稿  2006.03.31.
一部改訂 2006.05.07.
2006年分追記 2006.09.04.
1997年分訂正 2007.01.28.

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◆◆◆ びわこソーラーカーフェスティバル(新旭風車村) ◆◆◆


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