The Place in the Sun

三文楽士の休日

2009 WORLD SOLAR-CAR RALLYE
2009 JAPAN INTERCOLLEGE SOLAR AND FC CHAMPIONSHIP

2009秋田偏

〜 遙かなる大潟 〜


セクション4 火を噴く太陽神

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12:40 大潟富士へ


 干拓博物館の隣の「道の駅」で、昼食代わりにパンプキンドーナツとパンプキンタルトをパクついている間に天気は回復し、ときおり晴れ間も見えるようになった。朝は頭が雲に覆われていた寒風山に登ってみようと走り出したが、途中で思い直し、ソーラースポーツラインにクロスする農道を使って、中間点と折り返し地点を見に行くことにした。 大潟村周辺地図

12:55 みゆき橋着



みゆき橋チェックポイント



この小山が日本で一番低い山「大潟富士」

 海抜ゼロmの人口の山:大潟富士がある「みゆき橋」立体交差がコースの中ほど、そこから未舗装の測道を走ると折り返し地点に至る。



大潟富士の山頂からのソーラースポーツライン眺望



みゆき橋の案内看板 看板部拡大

13:03 折り返し点に向かう

 走っていると、測道脇に車が止まっており、数人がコースを心配そうに見ている(金沢工大のみなさんだった)。彼等の視線の先には白煙をあげるソーラーカー!?


 「どーした? バッテリーか?」
 「いや、モーターだと思います。」

なら、そんなに心配しなくて良いか・・・しかしモーターがそんなに燃え続けるか?

 「いや、バッテリーかもしれません・・・・。」

 彼は、かなり動転している様子。無理もない。煙の色が黄色く変わってきた。風向きが外れているので煙の臭いは解らない。車両から消火器を取り出したが、火元が解らないドライバー氏は、消火器を使いあぐねている。


 止まっていたのは、水素燃料電池FCとソーラーのハイブリッドカー「アポロンディーヌ」であった。バッテリーはLiイオンだったかニッケル水素だったか? 燃料電池と、ソーラーと二次電池を、どういう風にバランス&コントロールしているのかは解らないが、FC主体で走っている最中に、天気が急に良くなり二次電池が過充電というのは十分ありそうな話である。


 オフィシャルがかけつけ、まずは水素ボンベのコックを閉めるためにカウルが外された。煙を発しているのはどうやら電気回路が収められた一角のようだ。既に素手では触れないほどに熱くなっている。

 オフィシャル氏が黄旗の柄をつかって、ボックスカバーを開けた瞬間、炎が上がった。「ウワッ」と声が上がり、すかさず消火器。



中央部拡大

 炎を発したのはパワー系の電気回路の塩ビ被覆導線の様子。測道までパチパチとショートしているような音が聞こえていた。隣におかれたバッテリーボックスもなんとか外されたが、その時には既に黒く焼けただれていた。プログラムによれば、今年の改良の中心は電気回路系ということだが、手を入れたのが仇になったということか?




バッテリーカバー部拡大




チームメンバーも駆けつけ、診断中


 無事消火され、車両運搬のトランスポーターもやってきたので、現場を後に、折り返し地点に向かった。そのころには夏の日差しが照りつけており、朝はトロトロとしか走っていなかったソーラーカーがブイブイと走っている。



遠ざかった厚い雲


 折り返し地点は、ソーラースポーツラインの数少ないコーナーの中でも、最も曲率が小さいヘアピンカーブであるが、WSRでは、カーブには厳密な速度制限が設けられており、鈴鹿のようにコーナリング性能が試されているわけではない。

 

 折り返し地点は制限速度15km/hr、追い越し禁止なので、格好のシャッタースポットなのだが、動画的にはとってもかったるい。(立体交差部ではコースがS字カーブになっており、速度制限25km/hr、追い越し禁止。)こういうポイントでの減速〜再加速で、如何にエネルギーをセーブするかがドライバーの腕にかかっている。




14:00 スタート地点に戻る。

 側道を通ってスタート地点に戻った。レースは終盤の駆け引きの真っ最中。15時のチェッカー前にコントロールラインを通過し、最後の一往復に入るかどうかは、バッテリー残量との相談になる。16時までに帰って来れないと、その周回がリセットされ、さらにペナルティで一周減算。昔々、ライデンシャフトが学生部門を制した際に、エントラント氏が「最後の一周は、俺の髪の毛と引き替えだ」と叫んだと伝えられる勝負所であるが、これまた見た目には皆淡々と走っているだけである。



静かに走り続ける車両達



玉川大学のピットテントだけが少々慌ただしい。



溶け落ちかけた「アポロンディーヌ」のバッテリーボックス

15:00 チェッカータイム



完走の喜びが笑みに現れる。



実行委員長氏のチェッカーに迎えられる完走車両達


 この時、本人は気付いていなかったが、シッカリと大会公式カメラマンにアリバイ写真を撮られていたことに後日、気が付いた。

アリバイ写真その1    アリバイ写真その2


16:00 競技終了

 キャンプ生活の場でもあったピットの撤収作業が始まる。大仕事である。ウロウロしているとじゃまになるので、昼間に取りやめた寒風山登頂計画を実行に移すことにした。



道路標識を案内に



鬱蒼とした秋田杉の森の中を進むと、突然



視界が開けた!

 この山の山頂からは八郎潟全体を見下ろすことが出来るはずだが、天気は下り坂で、山頂は雲に隠れ、下界を見渡すことは出来なかった。しかし、途中の展望台からでも十分に干拓地のスケールを感じることは出来た。干拓地は琵琶湖の周囲にも結構あるのだが、八郎潟のスケールは群を抜いている。戦後の食糧増産計画が作り上げた超巨大な人工構造体なのだが、今は全てが緑に覆われており違和感は感じない。しかし、八郎潟の地面は海面より低く、全長52kmに及ぶ長大な堤防と排水ポンプが命綱なのである。



残念ながら山頂は霧



少し下った所からの八郎潟眺望。向こう側が霞んで見えない



右側は日本海

18:00 表彰式


 ソーラースポーツラインに戻るとちょうど表彰式が始まるところだった。WSRソーラー部門優勝は呉港高等学校、二位が再輝、三位が芦屋大学。エナックス型車両が1,2フィニッシュでありました。ハーフサイズのストッククラスではプロミネンスがクラス優勝。おめでとうございます。呉港高等学校の武田理事長さんにお祝い申し上げたら、「来年は一緒に出ましょうよー」と返されてしまった。各部門の結果まではメモれませんでした。すみませんが公式サイトをご覧下さい。



ステージで賞状と賞品の授与を受けると、



すかさず、記念撮影

 表彰式が始まった頃から、ポツン、ポツンと来ていたが、半ば過ぎから次第に本格化。式が終わる頃には、しっかり傘が欲しいレベルの雨になっていた。

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仮公開 2009.09.00.
公開  2011.03.26.

Copyright Satoshi Maeda@Solar Car Archaeolgy Research Institute
太陽能車考古学研究所
2006.01.01