The Place in the Sun

三文楽士の休日

ABU DHABI SOLAR CHALLENGE 2015 and WORLD FUTURE ENERGY SUMMIT

ADSC2015 阿布達比太陽周走記/THE ARABIAN SOLAR RALLY ROAD




第3章 アメリカ製の物差し
Section 3 The Scale is Made in America


Day 2   車検第1日目   The 1st Day of Scrutineering




Day 2 車検第1日目 The 1st Day of Scrutineering

2015年1月12日  12(Mon).Jan.2015.

 昨夜は、睡魔に負けて21時頃に夕食も食べずにスリープダウン。
 今朝は午前2時に目が覚めた。体内時計は(日本時間)午前7時なので眠れない

06:00  Centro Yas Island by Rotana, Abu Dhabi, UAE



レストランに降りてゆくと、みなさん既にお食事中だ。

 何人か新しい顔が増えている。そのなかの一人、恰幅の良い(年配メンバーは、みんな似たような体型だが)ヒゲのオッサンが電気系のチーフ・インスペクターのスティーブだった。第1回の目の GM SUNRACE からソーラーカーレースのオフィシャルを担当しているというベテラン。当然、米国メンバーの多くとは何度も一緒に仕事をしてきているわけなので、皆とは気安く会話を交わしているのだが、これが早口のUS英語(しかもタメクチなんだろう)。正直なところ聞き取れない。今日から共同作業して行かなくてはならないのだが・・・・・一抹の不安。



06:40 乗り合わせてYMCに向かう

Yas Marina Circuit

07:00 Yas Marina Circuit ヤス・マリーナ・サーキットに到着

07:20 インスペクター・ミーティング 車検の手順についてざっと確認。

 「車検の公用語は英語って事でいいよな?」「もちろん」

 そりゃあ、僕以外は全員ネイティブだもんなあ。



Inspector meeting

07:55 8時から参加者全員のミーティングなので会場のメディアセンターに向かうが、



YMC Media Center (Team Meeting)

 誰もいない・・・・・・・・・・・・・・ダン氏が渋い顔で

    「ガレージに呼び行け」

08:10 チーム・ミーティングが10分遅れで始まった



 最初は「時間を守れ」というダン氏の苦言。次いで大会趣旨。

 「俺は32年前からソーラーカーをやってる。ここで32歳以下はどれぐらい居る?手を挙げろ」

半数以上が手を挙げた。

 「いいか、よくおぼえておけ、君たちは「ソーラーカー世代」だ。(You are "Solar Car Age".)

 

 グレッグ(レギュレーション・マネージャー、インスペクター全体のまとめ役)から車検に関する注意事項、ゲイル(技術コーディネーター)から、その他モロモロの連絡など。



調子悪かったプロジェクターが、説明の終わり頃になってようやく使えるようになった。

 再びダン氏が前に立ち、チームのロールコールが始まった。



本来はこれを一番最初にやりたかった様だ。恐らくASCの儀式なのだろう。



卒業式よろしく呼ばれるとチーム全員が立ち上がって雄叫びをあげる。
順番は無作為。オキナワチームは「Okinawa Hai-Sai !!」


 

左:各項目別車検場の位置。鈴鹿と同様、パドックエリア全体を使って行われる。
右:最後はビルによる無線器(Radio)の説明 。スポンサーの表示をお忘れ無く。




09:00 車検開始。

 

 車検の項目は、(1)ドライバー、(2)車両サイズ、(3)電気系、(4)BPS(バッテリー保護システム)、(5)機械系、(6)ダイナミクス、(7)アレイ(ソーラーパネル)、(8)サポートカーの全8項目。(1)〜(5)がOKにならないと、(6)のダイナミクス試験には進めない。

 検査結果はR(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)の4ランク。
  R(赤):不合格、安全上の重篤な問題あり。
  Y(黄):軽微な問題があり要改善だが、ダイナミクス試験には進んで良い。
  B(青):要改善だが予選には出場可。
  G(緑):合格。
 ということで、全てがG(緑)かB(青)にならないと車検落ち。さらに本戦スタート前に全部G(緑)にしないと予選落ちと同じ、ということになる。



車検スケジュール(第1日目)。

 各検査にそれぞれ1時間が割り振られ、タイムスケジュールに従って順繰りに検査されていく仕組み。時間はかかるが、鈴鹿のように順番待ちで延々と行列する(その間、ほとんど作業できない)必要はなく合理的だ。

 僕の担当は「電気系」の検査。とはいっても何度も書いているように車検担当は初体験。電気系主任検査員のスティーブとは事前に電子メールでやりとりしており、初日は彼の検査のやり方を見て学ばせて貰うということにしてある。車両規則は必ずしも全てが1/0で判定できるものばかりでは無く、判定基準が曖昧な場合が少なくない。合否の判定基準が検査員によって異なるなんてことになってはまずいので、そこを把握するのが一番の目的だ。

 本日の電気系の最初はイタリアのオンダ・ソラーレ・チームだが、準備に手間取っているようなので、先に隣で始まったBPS(バッテリー保護システム)検査の様子を観察することにした。BPSについては規則書の5.4.に定められている。



BPS検査のトップはプリンシピア・カレッジ・チーム

 

 リチウム系バッテリーには能動的保護 (Active Protection) すなわちバッテリーの異常を自動的に検知して自動的に保護動作を行うBPSが求められている。(参加15台中、ニッケル水素電池を使った1台を除き、他はリチウム系バッテリーを採用)。まず、バッテリーボックスを開けて、中をチェックする。暗くて解りにくいがバッテリーボックス内の左側が保護回路ブロックになっている。(BPSはバッテリー筐体内に設置しなければならないことになっている)真っ黒なところは大きな放熱板。

 

検査は大きく分けて二項目、
 (1)保護回路部分をバッテリーから電気的に切り離し、実際に保護回路の入力側に
   電圧を印可、徐々に電圧を上げて行き、過電圧相当電圧に達した時点で
   シャットダウン動作をするかどうかを確認する。
 (2)保護回路の温度検出部を加熱し、バッテリーの定格使用温度(仕様書による、45℃程度)を
   越えた際にシャットダウン動作をするかどうか。

 プリンシピア・チームをはじめとする米国チームはASCで慣れているはず。今回BPS検査を担当しているボブ(ロバート)とデイルは検査員チームでは新顔らしい。結構時間がかかっていたのはそのせいかな? 米国以外のチームは要領が解っていないので、まず回路を切り離すところから、大汗をかいていたようだ。

09:24 オンダ・ソラーレ・チーム 電気系車検開始



 そうこうしているうちに、オンダ・ソラーレが車検場にやってきた。スティーブのお手並みを拝見させて頂くことにしよう。彼の検査の進め方は事前にメールで送ってくれた車検手順(入門)書に、概ね従っていた。

(1)チーム責任者、電気系、バッテリー系の担当者に、検査の手順を大まかに説明。

(2)車両を、車両前に3〜5m程度駆動できる余地を空けて停車するように指示。

(3)車両をセットアップ(実際に走れる状態=ほぼフルセットアップ状態)し、ドライバーに乗り込んでもらう。ヘルメットなどは不要。

(4)外部停止スイッチの動作確認
 ドライバーに極低速で車体を動かすように指示し、検査員が外部スイッチを操作して動力が停止するかどうかを確認。止まるのを確認したらリセットして、もう一度同じ事を行う。オンダ・ソラーレ・チームの車両「EMILIA3」は引っ張るタイプのスイッチが車体横に設置されている。

 

(5)バッテリーの排気を確認。
 規則書には流量まで記載されているが、排気口に手をかざして、空気が流れていることが確認できればOK。



 この車両はドライバー座席の下に排気口があるというので潜り込んで検査している・・・・・・が、ファンは付けてあるのだが排気が弱すぎて空気の流れを確認できず、判定はY(黄)。

(6)カウルを開け(ドライバーは降りて良い)電気系が見える状態にして、担当者に電気系システムの構成を説明するように指示。
・主電力ケーブルの太さ
 注:ケーブルに電流容量が書いてあれば良いのだが、米国ではAWG(American Wire Gauge)規格が一般的で、電線の表示もそれに従っている。日本(JIS)式の電線断面積(SQ、俗に「○○スケ」)は通じない。最終的には見るからに十分太い場合にはOKを出していたが、ギリギリの線径を選択している場合はAWGとJISの換算表などの説明資料を準備しておいた方がよい。それ以前に古いいケーブルを再利用していたりすると表示自体が消えている場合が少なくないので注意。
・フューズ、ブレイカーの仕様が適性か
 注:定格表示が読めるように取り付けておくのが好ましい。読めない場合は取り外して見せるか、あるいはスペアパーツを見せる。ブレイカーについては仕様書を見せる。ハードコピーでも、PC画面でもOK。英語の仕様書が望ましいが、僕が立ち会っていれば特例的に日本語でもOK。

 

・配線全体、コネクタ等々が適正に使用されているか
・主電源スイッチの表示、高電圧表示等が適性か(文字高さ10mm以上)
 等を順次確認してゆく。

 

写真左:CFRP板バネを使った「EMILIA3」のサスペンション
写真右:電気回路系はコクピットの後ろに集約されている。

(7)バッテリーボックスを開け、バッテリー構成、排気システムの動作と配線と部品類の定格を確認

 「バッテリーの構成を説明してくれ。」
 実際にセルの個数を数えて事前申請書との整合性を確認。影になっていたり、完全にパッケージされていて個数が数えれない場合は、ボックス組み立て時の写真や動画でもOKの様子。とにかく実際にセルの個数が数えられるように。

 
 排気システムの動作については主に口頭での質疑応答。(明文化されていないが)主旨は「万が一バッテリーから有害なガスが発生した場合に、そのガスがコクピットに流れ込まないようになっていること。バッテリー筐体内は常に負圧であるべき。」ということなので、
・バッテリーボックスがソーラーカーに電気的に接続されている状態では常に換気システムが動いていること。
・その換気に要する電力は主バッテリー自身から得ていること。
・換気システムがドライバーの意図的な手動操作でON/OFFできないようになっていること。
 (エネマネの観点からは主バッテリーのエネルギーを走行以外に使いたくないので、こっそりOFFにしたくなる。)
・バッテリー保護回路が働いて主バッテリーがダウンしてしまった場合にも換気が停止しない仕組みになっていること=自動的に補助バッテリーに切り替わること。
以上が実現できるシステムになっている必要がある。

Reguration 5.5.D. Ventilation:
Battery enclosures must be equipped with a forced ventilation system rated at a minimum of 280 L/min exhaust flow. Such ventilation systems should pull exhaust to the exterior of the solarcar and must be powered by the battery system. It must operate whenever the battery system is electrically connected to the solarcar or to the solar array. In the event of a Battery Protection Trip provisions should be made to power this fan from the Supplemental battery.
<参考訳>
 規則書 5.5.D. 換気:バッテリー筐体(バッテリーボックス)は、280リットル/分の排気流の最小定格強制換気システムを装備しなければならない。このような換気システムはソーラーカーの外部に排気を引く必要があり、(主)電池システムにより駆動される必要がある。それは、バッテリーシステムを電気的にソーラーカーや太陽電池アレイに接続されるたびに、動作しなければならない。バッテリー保護トリップ条項が発生した場合に、電力供給は補助バッテリからこのファンになされるべきである。

注:排気システムに関して多くのチームが困惑していたことは否めない。条文そのものが言葉足らずな上に、規則書の当初案に盛り込まれていた排気ダクトの設置が改訂で削除されたためによけい混乱した。改訂によりダクトは必須項目から外されたが、現実にはファンから排気口までダクトを付けるのが最も簡単で現実的な対処法である。数チームが、タイヤハウスへの排気で対応しようとしたが、ダクトをスパッツ底面まで延ばすとタイヤと干渉する可能性が高いため、断念していた。

「EMILIA3」のバッテリー換気は、車両最前部に置かれたバッテリーボックスから、長いダクトを経て、コクピットのドライバー座席の後ろの空間に排出するようになっていた(さらに、車両最低部の床に排気口があるが、ダクトはそこまで繋がっていなかった。よって排気口に手を翳しても、ほとんど空気の流れを感じれない上に、排気がコクピット内に充満する可能性がある、と判断された。最終的にはダクトを排気口まで延長することで問題解決に至った。
(8)絶縁の確認 (Reg. 5.5.A)
  駆動電圧の+端子と車体の金属部分、CFRP部分
  駆動電圧の−端子(GND端子)と車体の金属部分、CFRP部分
の絶縁を確認(Reg.5.5Aには「500V印可で1MΩ以上」と記述されているが、実際にはテスターの抵抗測定にてオーバーレベルであれば合格。)数チームがモーターコントローラのGND側を車体に接続していたが、これはNG 。

(9)主バッテリーボックスを車体から取り外し(安全に取り外しが行われるかを観察。バッテリーボックスの固定方法についてもチェック。ベルト使用はOK、ただしバックル部はプラスチックではなく金属であること。)、総重量を測定して記録。同時にサンプルセル3本の重量も測定して記録。

 

(10)バッテリー保管用の箱をチェック。封印可能か、施錠した状態でバックルを外すことができないようになっているかを確認。保管箱は絶縁物で作られていることが好ましい。市販のプラスチック製の道具箱や衣装ケースを施錠できるように細工したもので十分。

(11)補助バッテリーの有無、用途、場所と表示を確認。

(12)バッテリー以外のストレージ技術使用有無の確認。(フライホイール、キャパシタ等)。

(13)アッパーカウルの裏側を確認し、感電の危険がないかどうかをチェック

(14)アクセル(ペダル)の場所と操作法、耐久性をチェック。
 足(手)を話した場合に自動的にゼロ位置に戻ること。アクセルペダルの場合は概ね問題ないが、手動アクセル=ボリューム操作の場合、バネなどを使った仕掛けが必要になる。

(15)クルーズコントロール搭載の有無、搭載している場合にはブレーキをかけた場合にクルーズコントロールが解除されるようになっているかを質問で確認。

(16)リモートコントロールが搭載されていないことを口頭で確認。

(17)延長コード(停車時充電=アッパーカウルを外して太陽の方向に傾けて充電する際に使う、パネルと車体との接続ケーブル)が車両に搭載されていることを確認。

(18)ダングリング・ワイヤー(アッパーカウルと車体を結びつけるワイヤー)をチェック。

(19)バッテリー封印をどのように行うか? 何時行うか?を質問。
 封印自体は主任検査員が実施する。大抵は予選日の朝を希望。バッテリーボックスを閉じた状態で封印できない場合、バッテリーセルを交換できないようにボックス内に糸を張って封印するのも可能)。

09:58 オンダ・ソラーレ・チーム、電気系車検終了



オンダ・ソラーレ・チームの電気系綜合判定はY(黄)。
バッテリーボックスの換気の他、メインフューズの定格電圧が足らなかった。




隣で機械系の車検を受けているのは スイスから参加の「ZHAW Solar Energy Racers」
(チューリッヒ応用科学大学 Zurich University of Applied Science)



さらにその隣は、ドライバー検査中。「ISU SCT」
(米国イリノイ州立大学 Illinois State University)


10:40 本日2番目はフランスとモロッコの合同チーム「Eco Solar Breizh」。

 オンダ・ソラーレが終わった時点でオンタイムだったはずだが、2番目は、いきなり40分遅れ。こりゃ、先が思いやられる。



 Eco Solar Breizh はWSC2013出場を目的にフランスのブルターニュで結成されたチーム。豪州の後は、モロッコ・ソーラーチャレンジ、ヨーロピアン・ソーラーチャレンジ、アタカマ・ソーラーチャレンジに出場。アブダビが5回目のレースになる。

 

バッテリーボックスは車両後部に搭載されており、ボックス上部から強制吸気し
、 ボックスの底の換気口を通じて車体床から排気される。これならダクトは必要ないが、
強制吸気によりボックス内が陽圧になる可能性ありとのことで、吸気側ファンを
止めるか、取り外すように指示されていた。

 

使用しているバッテリーセルは、さきほどのオンダソラーレ他、多くのチームが
採用しているパナソニックの円筒型Liイオン電池。それが各8本収納できる
電池ボックスに収められたユニットが綺麗に並んでいる。電池ボックスの中で
各セルは少し隙間が空けてあり、ボックスの上下から空気を流せるようになっている。
(確かに強制吸気してやればセルの冷却効率は高そうだ。)

 「この電池ボックスは良いな。」
 「そうだろう。『Green+』って判定はないのか?」

 「座布団一枚」て云っても通じないだろうな。



動輪の駆動はベルト。モーターは確認できず。

 

「重量を量るので、バッテリーボックスを外してくれ。」
と云うと、担当者が青い防護服を着てフェイスガードを装着、さらに分厚いゴム手袋。ボルト/ナットで止められているバッテリーボックスと車体の電気接続を外しだしたが、手袋が分厚すぎてスパナを持つ手が怪しい。ボルトは剥き出しでプラス/マイナス端子間も10cm程しかない。下手にスパナを落としてショートさせたら酷いことになるだろう。

 見るに見かねて、
 「外した端子をビニールテープで(仮)絶縁被覆しないと危ないよ。」
とお願いした。

 防護服、フェイスガードとゴム手袋の意味を問うと「化学薬品からの防護(ケミカル・ハザード)だ。」との答え。確かにバッテリーボックスにも「高電圧危険」表示とともに「ケミカルハザード」の注意書きがある。でもねえ、ちょっと気を使うところがズレているんじゃないかな?



 判定はY「黄」。バッテリーボックスのファンの処置と、バッテリーボックスの固定が甘い点。

11:44 本日3番目、米国のイリノイ州立大学チーム



ISU : Illinois States University



ISU のソーラーカー "Mercury 4" は3輪のチェーン駆動



バッテリー換気の排気はダクトで床に。それとは別に車輪
スパッツから伸びているダクトはドライバーへの吸気。

 

左:絶縁テスト。
右:アッパーカウルの裏から太陽電池パネルの配線をチェック。



木製のバッテリー封印用ボックスに(個人的)親近感

12:04 ISU Solar Team get "All Green".



"All Green" にて一発合格。所要検査時間、約20分


 予想どおりだが要領がわかっている米国チームが断然有利である。

12:15 ランチタイム




 HQに戻ると・・・・・昨日の残りのバナナしかない。明日からは自前で何か軽食を仕入れてこよう。

13:30 午後の部、開始


 午後の最初は、スイスのチューリッヒ応用科学大学を拠点とする ZHAW Solar Energy Racers。



異様に大きく感じるキャノピーを除けば、コンパクトな設計

 

アッパーカウルはヒンジ式で、配線も綺麗にまとめられている。

 

独特な構造のシャーシとバッテリーパック



 一番モメたのがここ。規定ではアクセルから足ないし手を離したときに、自動で零点に戻らなければならない。アクセルペダルの場合は自然な動きであるが、アクセルが手動ボリュームの場合には、なんらかの仕掛けが必要だ。ZHAWのアクセルは手動ボリュームだが、ステアリングから手を離すと、動力が電気的にリセットされる別のスイッチが付けられており、ドライバーがステアリングハンドルを握っていない限り動かなくなっている。かなり長い間すったもんだしていたが、最終的には、ボリューム自体が零点に戻る訳ではないのでダメ、という判定になった。



と、いうことで判定はR:赤
  (1)バッテリーファンはあるが、排気を車外に導くダクトがない。
  (2)テレメトリーシステムを切ること。
  (3)アクセル(ボリューム)が自動で零点に戻らない。

14:49 プリンシピア・カレッジ・チーム



 残念ながら10年前のPhaethon2004に出たメンバーは居ないようだ。

 

「かつて知ったる・・・・」という感じでスイスイ進み



15:02  プリンシピアカレッジチーム、所要時間約10分、オールG:緑で合格

 次は米国のオレゴン州立大 Oregon State University 略称「OSU」の順番であったが、「まだ準備できてない」ということで後回し。駆け込みで参加決定したらしく事前にアナウンスされた参加リストには載っていなかった。

15:57  ベルギーから参加の PUNCH Power Train チーム。



 名前の通り、自動車のパワートレインを製造している会社である。パワートレインとは、エンジンから車輪まで動力を伝達する一連の機構部品の総称だ。パワートレインはインホイールモーターを搭載した電気自動車では不要だ。すなわち自動車の電動化は、この手の企業の存続を揺るがす大問題なのである。

 

ヒンジで接続されたキャノピーと特徴的な形状の第2ロールバー

 

バッテリーボックス

 

パーツの仕様書内容確認はPCのディスプレイでもOK

16:48  PUNCHチーム 電機系車検終了。

  ・バッテリー換気の手動OFFスイッチを取ること。
  ・バッテリーボックスの固定が不十分。
  ・ブレイカーの容量が不足。
 以上3点の指摘で判定はY「黄」



偵察がてら電気系車検の予習に来ているのはPIチーム。



ヒロシマチーム、サポートカーテスト中。ソーラーカーの
前後を挟んで走る先導車と追跡車の緊急時の動きを確認する。
しかし・・・・・他の日本チームの姿が見えない。ちょっと不安。

17:30  本日最後は名門ミシガン州立大



最初のGMサンレースから活動を続けている老舗である。

 

左:バッテリーボックス内
右:米国チーム特有のロールバー

 

 後輪のサスペンションはエアサスを使ってコンパクトにまとめられている。
 前輪は、空力改善のため、スパッツ幅を極端に狭めており、舵を大きく切った場合にはタイヤがスパッツ横のの開閉部分を押し開ける構造である。一方、規則書ではタイヤがスパッツ内面に接触してはならないとされているため、苦肉の策で、タイヤと連動するCFRP製のインナーカバーを装着し、インナーカバーがスパッツの開閉部を押し開ける構造になっている。



17:50  ミシガン州立大学チーム オールG「緑」で一発合格。



「初日でGが3チームか、まあまあ(Good)だな」とスティーブ

 結局、初日に電気系車検を合格したのは米国3チームだけだった。

18:10  日没。夕焼け(紫っぽい幻想的な色)は数分で、いきなり空は真っ暗になる。



 やれやれ、(なんとか初日が)終わったーと、ホッとしていると、グレッグが

  「レストランに行くヤツは手を挙げろ」

 この日は、インスペクター全員で食事に行くことになった。ネットで調べ、車に乗り合わせてイタリアンレストラン。アブダビに来て、ようやくまともな食事にありつけた。パスタが一皿40-50ディルハム 日本円で\1500前後である。



 しかし車検って、する側に回ると、ホントに忙しい・・・・・今日は見ているのと、途中から絶縁チェックやバッテリーの重量チェックを手伝っただけにもかかわらずだ。・・・・・遊ぶ暇は全く無さそうだ。


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初稿(Place in the Sun BBS投稿)  2015.01.14.
web公開版  2015.03.07.
微改訂  2015.03.29.

Copyright Satoshi Maeda@Solar Car Archaeolgy Research Institute
太陽能車考古学研究所
2006.01.01
Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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