The Place in the Sun

三文楽士の休日

ABU DHABI SOLAR CHALLENGE 2015 and WORLD FUTURE ENERGY SUMMIT

ADSC2015 阿布達比太陽周走記/THE ARABIAN SOLAR RALLY ROAD




終章 別れの火は何時も雨
Epilogue The Rainy Closing Day, Always


Day 9   WFES 閉会式    WFES and Closing Party


19(Mon).Jan.2015. Abu Dhabi Solar Challenge 2015 Exhibition(WFES) and Celemony

08:30 一週間以上お世話になったこのホテルともお別れだ。



 チェックアウトを済まし、ロビーで外を眺めながら、アブダビ国際空港に降り立ってから今日までの時間を頭の中で反芻していた。
外は雨模様。年に数日しか降らないであろう雨が、エントランスを濡らしている。



マレーシアも、ギリシャも最後の日だけが雨だった。そして今回も。

09:00 テクニカルチーム、ロビーに集合。



 ADSC2015は、いわば WFES:World Future Energy Summit 「世界未来エネルギーサミット=世界最大級の代替エネルギー関連の展示会」の前座だ。その開会式で「ザイード・フューチャー・エナジー賞:Zayed Future Energy Award」の表彰式が行われ、ソーラーカーレースの結果についても披露されるのだ。

 WFESには世界各国から要人が集まるため、セキュリティが厳しい。ダンさんがメンバーに新しいパスを配った。開会式と展示会に出席するための顔写真入りのパスカードである。僕たちは「ソーラーカーの展示員」という身分になった。

09:10  出発



 車二台に乗り合わせて、何度も彷徨ったE11を経てアブダビ市街を目指す。流石にもう道を間違うことはない。



 当初のスケジュールでは、この日の午前中にオンロード・イベントの最終ステージ(シャムスをスタートし、アブダビ国際展示場に隣接するFGBアリーナがゴール)があり、ゴール地点から国際展示場までソーラーカーでパレードして展示、という計画だったが。これはかなり非現実的だ。最終日のソーラーカーのコンディションは全く予想できないが、一つ云えることは、余裕綽々でゴールするソーラーカーなんてのは存在しないってこと。みなエネルギーを使い果たす寸前のはずで、タイヤもボロボロ、メカ的にもあちこちガタガタ、もちろんドライバーもクタクタのはずである。例えるなら、フルマラソンを終えた直後の選手に、すぐにドレスアップして、パーティに出席しろと云うに等しいのである。



 昨夜、トレーラーでマスダールシティに搬送されたソーラーカーは、今日、再びトレーラーで国際展示場近くまで運ばれ、そこから自走して国際展示場の中庭に設けられた展示スペースに並んでいるはずである。表彰式もそこで行われるはずだったが、なんせこの雨模様。場所と時間がコロコロ変わり、展示場に向かっている最中でさえ「また時間が変更された・・・・・」という電話がかかってくるような状況である。



 「ソーラーカー・タイムだな。」

 電話を切ったグレッグの呟きが可笑しくって、僕がクスクス笑っていたら、皆が釣られて車の中が大笑いになった。



09:58 アブダビ国際展示場駐車場

 空いている展示場を突っ切り、開会式会場へ。



 途中、中庭に展示してあるソーラーカーがチラリと見えた。

10:10  表彰式会場入り口

 入り口でセキュリティガードに止められる。グレッグと押し問答しているが、譲らない。ここまで天下無敵だったインスペクターの制服がここでは通用しない。あちらなら入れそうだ、と、別の入り口にも詰めてみるが状況代わらず。再び元の入り口に戻ると、ハンス・ソルストラップ氏らISFのボードメンバーも足止め状態だ。ハンス氏はザイード・フューチャー・エネルギー賞の候補者でもある。その人を入れないって云うのか?

10:16 しばし揉めているとドアが開けられた。



 中に入ってびっくり。なんて大きな会場なんだ、NHKホールの比じゃない・・・・なんて感心していたら、インスペクターグループからはぐれてしまったが、岩田さんと合流できた。

10:28  ステージに子供達が、

 色とりどりの民族衣装を着た子供達がステージ中央に置かれた階段状のひな壇にならんだ。




10:34  イベント主宰者でもあるアブダビ皇太子殿下入場、

  客席は全員起立、ステージの子供達は国歌斉唱のための歌唱団だった。

10:42  主催者挨拶と来賓祝辞

 最初にマスダール社会長(Dr.Sultan Ahmed Al Jaber/UAE Minister of State and Chairman of Masdar)の挨拶、次いで来賓のエジプト大統領(Abel Fattah el-Sisi/President Arab Republic of Egypt)のスピーチ。

  

11:00  ザイードフューチャーエナジー賞の最終候補紹介



 ザイードフューチャーエナジー賞の最終候補30団体の紹介。1団体約1分程度のヴィデオ映像で紹介されて行く。分野が多彩かつ巧みな編集で飽きさせない。

                

11:37  生涯功労賞の発表

 最初に生涯功労賞(Life Time Achievement)が発表された。元アメリカ副大統領、「不都合な真実」著者のアル・ゴア氏である。その当人が会場に来ているのである。こりゃ警護が厳しくってあたりまえだ。



 次いで、大企業部門、中小企業部門、NPO部門、ハイスクール部門(南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア)の最優秀賞が順に発表されていった。 結果は以下の通り。○印が最優秀賞
Zayed Future Energy Prize
Large Corporation 大企業部門
  ○Panasonic/JAPAN
   Enel Green Power/ITALY
   First Solar/USA
   IKEA/SWEDEN

Small and Medium Size Enterprise 中小企業部門
   SELCO/INDIA
  ○M-Kopa/KENYA
   EocoNation/BELGIUM

Non-Profit Organisation(NPO/NGO) NPO部門
   SolarAid/UK
   Practical Action/UK
   World Resources Institute/USA
   Electricians sans Frontieres/FRANCE
  ○Liter of Light/PHILIPPINES

Global High Schools ハイスクール部門
The Americas 南北アメリカ
   Colegio Franklin Delano Roosevelt/PERU.
   DGEyC E.S.E.T. No 4 El Palomar/ARGENTINA
  ○Munro Academy/CANADA

Europe ヨーロッパ
  ○Petru Rares National College/ROMANIA

Africa アフリカ
   Abaarso school of science and technology/COMALILAND
   Alliance Girls High School/KENYA
  ○Waterford Kamhlaba/SWAZILAND

Asia アジア
   Rishi Valley Education Centre/INDIA
   Amra Bint Abdul Rahman/UAE
   Royal College /SRI LANKA
  ○Addu High School/MALDIVES

Oceania オセアニア
   Lume Rural Training Center/VANUATU
   Cashmere High School/NEW ZEALAND
  ○Melbourne Girls School/AUSTRALIA

11:54 最後に、FINALIST揃ってお決まりの記念撮影タイム



11:55  ADSC表彰式

 ここで式典は一区切り、出席者の多くは展示関係者でもあるのでゾロゾロと退席して展示場に引き上げてしまうが、舞台は再び回転しステージスクリーンはADSC2015表彰式の会場に切り替わった。



 先ほどまでの女性司会者に交代した男性司会者が中継会場に呼びかけると、

 

 

 見覚えあるユニフォームのクルー達が画面に映し出された。ADSC参加各チーム代表者たちだ。

 さきほどまでステージにいたVIP達、ムハンマド皇太子殿下、エジプト大統領、アル・ゴア氏ら別会場に移動して、そこでADSC上位3チームの表彰式が行われた。

 続いてADSC本戦の様子をまとめたダイジェスト・ヴィデオが流された。

                   

12:06 開会式終了



 雪崩のように開会式会場から出て、僕たちも、また開会式会場で表彰式を見守っていたソーラーカーチームのメンバー達も、向かう先は、ソーラーカーが雨ざらしになっている中庭の展示会場である。



 会場の外は土砂降り状態。



 しかし、中庭に出る扉は警備員によって閉ざされており「ここから出ることは罷りならん、あちらに回れ。」ということで、ゾロゾロと別の出口を探して移動。結局、あっちもダメ、こっちもダメ。要するにVIPの退出が完了するまで要所はクローズなのだ。やむなく会場二階からロビー越しにソーラーカーを見守りながら時期を待つ。



12:36 雨は小降りになってきた。このまま止みそうだ。

12:47 WFES展示会場へ



 日本コーナーがあったので立ち寄ってみる INPEXグループがPIチームのテスト走行時の動画などを流していた。



 JAXAブースに超薄膜太陽電池の展示。一見してモックアップと解るチープさが、少々頂けないなあ・・・・。と眺めていると「日本の方ですか?」と(日本語で)話しかけられた。まだまだ日本人の気配を消すには修行がたらないようだ。

 すると、そこにヒロシマチームのメンバーであるUAE大学の方々が。
 「表彰式の会場はどこだ?」
 「表彰式はもう、終わってしまいましたよ。」
 「え??」

 僕たちは、うまく入れたが、彼らはセキュリティーで止められて入れて貰えなかったらしい。ものすごく残念がっていた。



 F1シミュレーター。若いインスペクター連中に誘われたが遠慮。



 巨大な?エコランカー??

 同じ会場で同時開催されている IWS International Water Summit という水関係の展示会 に移動。
 実は、僕の勤務先も展示している。(中東での海水淡水化ビジネスではソコソコのシェア)



 バーレーンとオマーンに各1プラント、他はみなサウジアラビアで、UAEには無いみたい。

13:30 Dubay Eye という番組(FMラジオかな?)のインタビューに答えている優勝したミシガンチーム。



 太陽電池飛行機、ソーラーインパルス2のプレゼンテーション。アブダビを起点に太陽エネルギーのみによる世界一周飛行に出発する予定。



13:40 空を睨みながら、ソーラーカー展示会場へ



 今回のWFESの目玉展示のはずが、天候のせいとはいえ、閑散とした状態。



 土砂降りの間は、中央の屋根の下に移動させていたが、天気が回復してきているみたいなので、ボチボチと本来の展示位置に移動中。



 しかし1〜3位の車両は見あたらない。何処だろう・・・・?

14:22 開会式会場の入り口近くを歩いていると、別の扉が開いている。なにげに覗くと・・・・



ここにあったのか、開会式で中継されていたのは、すぐ隣の会場だったんだ。

14:30  テクニカルチーム、4番ホールの前に集合。



14:45  「皆集まったか? よし行こう。」



 空いている展示場を突っ切って、駐車場へ。  向かう先は国際展示場の近くにあるシェイク・ザイード・グランドモスク Sheikh Zayed Grand Mosque Center である。



駐車場の向こうに Hyatt Capital Gate Abu Dhabi

 グランド・モスク見学は、イベント中、自由時間がほとんどゼロだったテクニカルチームの唯一の観光である。



 地図では、さほど遠くないのだが・・・・・例によってグルグル回らないと目的地にはたどり着けない。



 最初に着いた駐車場は閉鎖されており、別の駐車場へ、道路は迷路のように何重にもなっており、ほぼモスクを一周して・・・・・。




15:06  ようやく駐車場に到着



15:09  モスク入り口手前のチェックポイント。

 

神聖な場所であるモスクに入るにはドレスコードがある。

 もちろんアラブの正装が一番良いのだが、アブダビは他のアラブ諸国はもちろん、UAEの中でもドバイと並んでかなり緩い方なのだが・・・・・それでも男性は短パンと袖の無いシャツはダメ。ジーンズに、袖のあるポロシャツ(インスペクターシャツ)はOKだ。しかし女性はスカーフが必須。腕が見える上着や、ピッチリしたジーンズはNG。

   「貴女はOKかしら?」

 長袖シャツ着て、スカーフを準備していたエリカも、

   「ウーーンでも、このジーンズはダメそうだわ。」

 困っていると、地元の人があっちに行けばよい、と手仕草で教えてくれた。道しるべには「Garment」と書かれている。地下の駐車場に着替え所があり衣装を貸して貰えるらしい。

15:25  男性陣はしばし、待ちぼうけ



 誰かが 「ホッホー」 と、急に声をあげた。女性陣が、はにかみながらアバヤ(黒い衣装)を纏って出てきたのだ。皆、活発なアメリカ人だが、妙におしとやかである。



 まずは、女性陣の記念撮影。次いでモスクの中へ

                    


 モスクは白亜の大理石製。幾何学的な文様や植物を模した石や真珠貝の象眼細工が柱、壁一面にほどこされている。白い建物と黒いアバヤとのコントラストがありすぎて、ポートレートを撮ろうにもカメラの自動露出が上手く機能しない。

 主聖堂になる大きなドームがある一辺の区画は土足厳禁。さらにその中の、お祈りをする場所はイスラム教徒以外は入れない。風が強く、アバヤのスカーフが脱げそうになると、すぐに警備員が飛んできて注意を促す。



16:30  見学終了

 1時間弱かけてゆっくり見学させて頂き、女性陣の着替えを待って、さて、会場からのソーラーカー撤収を手伝うか、あるいは、パーティ会場になるマスダールシティへ一足先に向かうのか、と思っていたら・・・・・

 「さあ、ホテルに戻ってインスペクター・ミーティングだ。」

 「え? まだ、なんかあるの??」



グランドモスクから離れつつ・・・・・・



海沿いの道をYASアイランドに戻る。



YMCの横をすり抜けて再び、

17:02  Centro Yas Island by Rotana のロビー
 

 今朝方チェックアウトし、もう戻ることは無かろうと思っていたCentro yas Island by Rotana のロビーに逆戻り。他のメンバーは一度、各々の部屋に戻ってしまったが、既にチェックアウトしてしまった僕はロビーでウロウロ。

 なにをするかというと、部門賞の選考である。(数日前に「候補チームを推薦して欲しい」というメールが出されていたのだが、数日前からネット接続が不調だった僕は、ほとんどメールメッセージを読めずにいたのだ)

18:20  インスペクター・ミーティング終了

 議論は一段落。結果だけここにまとめておこう。
1位+ISF優勝トロフィー
 University of Michigan and Abu Dhabi University Solar Car Team
2位
 Yas form Petroleum Institute
3位
 Punch Powertrain Solar Team from KU Leuven

YMC最速ラップ賞
 Yas from Petroleum Institute
メカニカルデザイン賞
 Team Arrow from Queensland University of Technology
エレクトリカルデザイン賞
 Tokai from Tokai University
ベスト。チーム。マーケティング賞
 Punch Powertrain Solar Team from KU Leuven
シェル・イノベーション賞1位
 Yas form Petroleum Institute
 Principia and HCT Solar Car Team
シェル・イノベーション賞2位
 Apollo VI from National Kaohsiung University of Applied Sciences
チームワーク賞
 HIT and United Arab Emirates University Solar Car Team
スピリッツ・オブ・イベント賞
 Dr. Fahad Almaskari of the Petroleum Institute
ISFフィロソフィー賞
 Principia and HCT Solar Car Team
18:22  夕闇迫る中、 乗り合わせてマスダールシティに向かう。



18:32 マスダールシティ到着



 夕焼けの時間は短く、太陽が沈むとすぐに真っ暗になる。



 パーティ会場は大屋根があるマスダールシティのエントランスの階段スペース。登って行くと、最初に目に飛び込んできたのはソーラーカー「クワイエット・アチーバー号」の模型。1982年の年末から翌年初めにかけて、現ISF会長のハンス・ソルストラップとラリー・パーキンスによる豪州大陸に用いられたソーラーカーである。



 その隣には金色のクワイエット・アチーバー。銘板には「QUIET ACHIEVER AWARD」と刻まれているのでトロフィーのようだが、そんなのは部門賞にはなかったぞ???(ISFフィロソフィー賞のトロフィーでした。)

 パーティは、元々は野外で開催の予定だった様子だが、朝からの雨で、大屋根の下に変更された様子だ。パーティ開始まで30分を切っているが、まだステージ設営の大工仕事の真っ最中である。



会場内に張られたアラブ伝統のテント



 テントの中に太陽電池パネル??? よく見るとトロフィーだ。銘板にはミシガン大チームの車両名「 QUANTUM」。傍らのソファーではアラブ伝統のヘナペイント、さっそくキャシーが描いてもらっていた。

 アペタイザーが運ばれてきた。飲み物にワインやビールは無く、ジュース。 展示場からマスダールシティまでのソーラーカー搬送と、荷造りなどの作業を終えたチームメンバーがしだいに集まってくる。

           

 アラブ語、英語、フランス語、イタリア語、トルコ語、中国語、日本語、飛び交う言葉は様々だが、言葉の発するオーラがお互いの気持ちをココロに伝えあってくれている。皆、身体はクタクタのはずだが、表情からは満たされた気持ちが溢れている。



19:10 パーティは、始まったばかりだが、日本へのフライトの3時間前、これが僕が自分自身に課したタイムリミットだ。空港に向かわなければならない。

  「ダンさん。本当にありがとう。僕はまたアブダビに来るよ。できればソーラーカーと共に」

  「そうか、楽しみにしてるぞ、ガッハッハッハ」



 PIチームのドライバー、アブダラ氏にタクシーの手配をお願いしようとしたときに、ちょうどタクシーが一台、エントランスにやってきた。

 「ありがとう、僕はこれから日本に帰る。また会おう。
   次は新しいソーラーカーを見せてくれ。君たちのオリジナル・ソーラーカーを。」

 そう問いかけた僕に彼は力強く応えた。

 「YES」



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初稿(FB投稿)  2015.01.31.
画像追加  2015.07.23.

Copyright Satoshi Maeda@Solar Car Archaeolgy Research Institute
太陽能車考古学研究所
2006.01.01
Copyright Satoshi Maeda@Team Sunlake
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