Nikkan Fanfare Trumpet Memorial

ニッカン・ファンファーレ・トランペット 保存会

序文

 2004年9月12日に開催された陸上自衛隊中央音楽隊の定期演奏会のアンコールにて「東京オリンピックファンファーレ」が演奏された。奏者の一人は東京オリンピックの開会式ファンファーレ隊で実際にこの曲を演奏された方(当時19歳)だったという。2005年早々に定年退官された奏者氏のファンファーレトランペットにつけられた旗(フラッグ)は、40年前に使われた実物であった。*1)

 このエピソードは、富樫哲佳氏によりレポートされており、その内容はウェブ上に公開されている。*1) 氏に感動をもたらした音楽を、奏でるための楽器そのものもまた、その場に存在したはずだ。残念ながら、そのときに使われたファンファーレ・トランペットが、東京オリンピック開会式で使われたものであったかどうか、についてまでは言及されていないが、まず「実際に使われた物」であったと考えて間違いなかろう。


 東京オリンピックファンファーレは、オリンピック東京大会にて、昭和天皇による開会宣言の直後に演奏された。*6)  当時の写真集を眺めれば聖火台の下に30名のトランペット奏者からなるファンファーレ隊 *5) が整列している様子がわかる。使用されているトランペットは通常の型ではなく、ベルが長くのびた所謂「ファンファーレトランペット」である。ベルに、日の丸と五輪が描かれた旗(フラッグ)が装着されているところまではわかるが、楽器の委細まで見分けられるほど高解像度の写真は無い。*2)*3)*4)


東京オリンピック開会式

ファンファーレ隊部分拡大  同、さらに部分拡大

既に聖火台に火が点り、ファンファーレ隊の楽器が構えの位置についている
ところから、ファンファーレが演奏された直後の状況であると想定される。*2)

<追記>
 後日、ファンファーレ演奏中の画像を入手した。1976年1月にプレスされた「実用レコードシリーズK ファンファーレ集II」のジャケット写真である。発売元は日本コロンビア。なおこのレコードに東京オリンピックファンファーレは収録されていない。


東京オリンピックの開会式、ファンファーレ演奏中
同拡大画像

 2005年6月、インターネット・オークションに 二台のNikkan製ファンファーレトランペットが出品された。製造番号からは、その楽器が東京オリンピックの直前期に製作されたことが伺われた。この出品物を巡っては関西の珍楽器愛好家を二分する壮絶な獲得合戦が繰り広げられたのであるが、そのうちの一台が縁あって私の手元にある。

 件の楽器は、ラッカーは残っているものの、当時の輝きは既に失せていた。しかしながらヘコミや傷はほとんど無く、大切に保管されていたものか、あるいは存在を忘れられて倉庫の奥深くに眠っていた物であろうと想像される。ベースになった楽器は、ピストン周辺の部品の形状から、1960年前後のNikkanトランペットの普及モデル「No.1」ないし「No.2」であることがわかる。ベル径は120mmと小振り。曲管が少ない上にベルが遠いストレート管であり、音色はクールで鋭く、まさにファンファーレを演奏するために生まれたトランペットである。日々、この楽器を眺める内、私の心の中で一つの謎が次第に大きく膨らんできた。「はたして、このファンファーレ・トランペットは東京オリンピックで使われた物なのであろうか?」*7)。

ニッカン・ファンファーレ・トランペットを訪ね歩く旅はここから始まった。



========================================


お願い

 本会ではニッカン・ファンファーレ・トランペットに関する情報を求めております。当楽器を所有しておられる方、あるいはその所在をご存じの方がおられましたら、是非ともご連絡頂きたくお願い申し上げます。画像情報、および製造番号などの情報を頂戴できましたら、なお感謝いたします。連絡はこちらのサイトの掲示板にお願いいたします。

2007年12月末日 サイト管理人 三文楽士


========================================


参考資料、引用文献

*1) 富樫哲佳, 「音楽を伝える」ことの意義と素晴らしさ
  陸上自衛隊中央音楽隊 第60回定例演奏会(2004.09.12.)レポート,
  吹奏楽マガジン「バンドパワー」,
  http://www.bandpower.net/report01/2004/09/06.html

*2) 日本体育協会監修, 全国体育指導委員競技会編集, 第18回オリンピック東京大会,
  滋賀日日新聞社, p.17.,1995.02.05.

*3) 第18回オリンピック競技大会(1964/東京),
    頁アドレス :http://www.joc.or.jp/past_games/tokyo1964/index.html
  表紙の扉として演奏中のファンファーレ隊の画像(一部)が使われている。
    画像アドレス:http://www.joc.or.jp/past_games/tokyo1964/images/storyimage.jpg

  聖火台で燃える聖火と、陸上自衛隊所属の5機のジェット戦闘機が
  大空に描いた五輪マーク、聖火台の下に小さくファンファーレ隊
    頁アドレス :http://www.joc.or.jp/past_games/tokyo1964/story/vol01_03.html
    画像アドレス:http://www.joc.or.jp/past_games/tokyo1964/story/images/vol01_p0302.jpg

*4) NPOユーラシア21研究所、吹浦忠正理事長(当時はまだ学生で、五輪組織委員会の最年少メンバーであったとこと)
  のブログ http://blog.canpan.info/fukiura/archive/1111 に東京オリンピック開会式の裏話がおさめられている。
  初演奏者の人数記述については後日、訂正(26人→30人)された。

*5) 朝日テレビ「題名のない音楽会サイト」には
  「開会式当日は自衛隊音楽隊が演奏しました。」と説明されている。
  航空自衛隊航空中央音楽隊の渡邊准尉へのインタビューによって、ファンファーレ隊
  メンバーが全国の陸上自衛隊音楽隊からの選抜メンバーであったことが明らかにされている。
  http://www.tv-asahi.co.jp/daimei/html/onair/back/04/040718/index.html

*6) ファンファーレの初演は 開会式ではなく前日の10月9日16時〜、
  皇居二重橋前広場で行われた集火式で、演奏は警視庁音楽隊であった。
  続いて同日18時〜後楽園球場出行われた前夜祭でも演奏されたが、この時の
  演奏者については記録されていない

  集火式, 第18回オリンピック競技大会東京都報告書, p.26, 東京都, 1965,
  前夜祭, 第18回オリンピック競技大会東京都報告書, p.27, 東京都, 1965,

*7) 残念ながら、開会式におけるフェンファーレ演奏に使われた楽器は、別型のNo.4F型で
  あることが、その後の調査により判明している。プレイベント、各会場などでの
  ファンファーレ演奏で使用された楽器については明らかになっていない。

改訂 2008.01.04.
改訂 2008.01.05.
改訂 2008.01.10.
改訂 2008.02.08.
改訂 2008.02.15.
改訂、画像追加 2009.01.17.
改訂、陸上自衛隊広報センター展示個体、製造番号判明 2011.08.13.

ニッカン・ファンファーレ・トランペット 保存会 トップ

三文楽士の音楽室 トップ

Copyright Satoshi Maeda@The Place in the Sun
三文楽士の音楽室
2007.12.31