警察博物館は、東京都中央区京橋3-5-1、東京駅の南東、有楽町駅の東方、いずれからも徒歩10分程度の距離にある。
7階建ての建物の内、4階までが展示スペースに充てられており、展示の主体は、警察の歴史に関するものと、殉職された警察官の功績および遺品である。音楽隊に関するスペースが比較的大きくとられており、明治〜昭和初期にかけて、警察および軍が導入した楽器類や初期国産楽器の試作品等が展示されている。数は多くはないものの、一見に値する貴重なものばかりである。また明治13年(1880年)にフランツ・エッケルトによりアレンジされたとされる「君が代」の二種類の吹奏楽譜(もちろん当時の編成)など楽譜資料も展示されており興味は尽きない。撮影禁止なのが何とも残念である。
これら音楽隊の楽器展示コーナーの最後を締めくくる形で警視庁音楽隊所蔵のニッカン No.4F型 ファンファーレ・トランペットが二本並べて展示されている。40年以上の時間を経てなお、ラッカー剥げがほとんどない良好な状態が維持されている。なお、旗は取り外されている。展示されている状態にて製造番号を確認することはできなかったが、ウエブサイト経由での問い合わせに対し、警視庁広報課より電話とファクシミリにて No4-14 、No4-20 であると丁重な回答をいただいた。
展示説明書きには
ファンファーレトランペットと、書かれており、これら2本の個体が東京オリンピックのファンファーレ演奏に使用されたことはわかるが、開会式で使用されたか物かどうかは断定できない。なお、ファンファーレは、開会式前日に行われた聖火の集火式と前夜祭でも、少なくとも集火式での式典演奏は警視庁音楽隊によることが記録されている。ただしその演奏に使用された楽器を特定できるまでの資料は見つかっていない。*1)
昭和39年 開催された第18回オリンピック東京大会でファンファーレの際に使用されたもの
展示の様子
撮影禁止とのことで、拙画にてご勘弁いただきたい。傍らにはオリンピック・マーチの楽譜が置かれている。
警察博物館全景
以下、展示されていた他の楽器類についてリストを付しておく。なお[]内は拙注。
ヘッケル ロータリーコルネット
明治12〜13年 宮内庁雅楽部が輸入
大正末期 陸軍戸山学校に移管
ビューグル[フリューゲルホルン] パリ・ベッソン
明治19年 警視庁音楽隊
フランス 信号ラッパ Eb [二重巻き、主管にてチューニング可能]
大正9年 陸軍戸山学校で使用されたもの
フランス 信号ラッパ Bb [年代不詳]
大正10年使用
四管ラッパ(シャルマイ)
マルティトランペットともいう ドイツ製
信号喇叭 [輸入品は「ラッパ」、国産品は「喇叭」と使い分けされている]
明治17年大阪砲兵工廠江名製作所で試作された記録あり。
[三巻型と二巻型とが各一台展示されている。いずれもマウスピースレシーバー部にネジ式のストッパーがありチューニング可能。]
九〇年式信号喇叭 [三巻のコンパクト型]
昭和9年 日本管楽器製造所が改良
携帯に便利
極寒時 ベークライト製マウスピースを用いた。
ヘリコンバス [4ロータリー、おそらくEb管] ドイツ ヘッケル社製
明治12〜13年 宮内庁雅楽部が輸入
大正末期 陸軍戸山学校に移管
ビューグル Bb型 [フリューゲルホルン]
昭和12年 軍楽隊で使用 日本製
[メーカー名、ベル彫刻、製造番号などは見あたらない。マウスピースはBACH6]
法螺貝喇叭 ニッカン製
戦時中の試作楽器
昭和17年頃のもの右方向巻きと左方向巻がある。
[真鍮製の法螺貝でした。かなり重そう。]
この次に
ファンファーレトランペット
昭和39年 開催された第18回オリンピック東京大会でファンファーレの際に使用されたもの
が展示されている。
後に、警察博物館にて筆写した資料の多くが「警視庁音楽隊創設50周年記念誌」に掲載されていることを知った。*3)
展示室の様子(パンフレットより引用)*2)
注 *2) ウエルカムけいしちょう(警視庁発行の小冊子)
手前の陳列台に真鍮製法螺貝喇叭とビューグル、
次の陳列台にファンファーレトランペットが見える。
関連リンク
警察博物館 警察博物館 バーチャルツアー 警察博物館4階に音楽隊コーナーがあり、
楽器、楽譜類画展示されている。
(展示されている楽器の一部)
資料
*1) 集火式, 第18回オリンピック競技大会東京都報告書, p.26, 東京都, 1965,
前夜祭, 第18回オリンピック競技大会東京都報告書, p.27, 東京都, 1965,
*2) ウエルカムけいしちょう(警視庁発行の小冊子)
*3) 警視庁音楽隊創設50周年記念誌 −−都民と共に−−
公開 2008.01.##.
改訂 2008.02.15.
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2007.12.31