Nikkan Fanfare Trumpet Memorial

ニッカン・ファンファーレ・トランペット 保存会

東京オリンピック・ファンファーレ


 最後にニッカン・ファンファーレ・トランペットとは切っても切れない曲「東京オリンピック・ファンファーレ」について述べておきたい。本サイトが主題とするトランペットはこの曲を演奏するために製作されたのである。

 東京オリンピックのためのファンファーレはオリンピック組織委員会とNHKが公募した作品の中から選ばれた。作曲者「今井光也」氏は当時、諏訪交響楽団の指揮者を務めていた。諏訪交響楽団は大正末期に創設された日本のアマチュア交響楽団の草分けの一つである。今井光也氏には、他にいくつかの校歌、社歌を作曲している。

東京オリンピック・ファンファーレ 主旋律(inBb)

 ド2   ファ4   ソ8.シb16
↑ド1
↓ファ2  シb4   ↑ド8.ミb16
 ファ1
 ソ4.ソ16ソ16 3(ファ8レ8ファ8)3(ソ8シb8ラ8)
 ソ4.ソ16ソ16 3(ファ8レ8ファ8)3(ソ8シb8ラ8)
 ソ4.ラ8ファ8ソ8シb8ラ8
 ソ1

(難読陳謝。MMLを使った経験がある世代には判読いただけると思う。)

 Wikipediaでは2008年1月まで「ペンタトニックで始まる金管楽器のみによる華々しい響きをもつこの作品は」と解説されていたが、web情報は丸飲みすべきでないという良例(自戒を込めて)である。まず、この曲はペンタ(五)トニック(音階)では無い。「金管楽器のみ」という記述は誤りとまでは云えないが、より適切には「トランペットのみ」とすべきであろう。「華々しい」という形容は不適切であり、曲を知らない人には誤った印象を与えかねない(現在、Wikipediaの内容は改訂されている)。曲想が演歌調とか、アレンジが素人くさい、などと評する向きもあるが、いずれもこの曲の本質を理解した上での論評とは言い難い。

 東京オリンピック・ファンファーレは、冒頭のsus47の印象が強く残るため日本の陰旋律の雰囲気を感じるが、先の譜例に示したように単なる自然短音階である。、

 楽曲構成上は
  前半 sus47の分散上昇和音 二回
  後半 簡潔な三連符刻みの繰り返し
 という極めてシンプルな形である。

 和声的には、冒頭2小節はユニゾン、続く2小節で二声に別れ、次いで四声と次第に厚くなってゆくが、結びの和音は祝典音楽には珍しくFmという短和音であり、決して「華々しい響き」とは云えない。

 全体を通して発せられるのは「君が代」和声に通ずる高潔で荘厳な響きである。トランペット四声という最小限の構成と、わずか8小節という短い時間の中に、第二次大戦後の荒廃からオリンピックを開催するにまで復興した日本の多くの人々の想いを凝縮した、歴史に残る名曲であると思う。

 この曲には、シルキー風の明るいトランペットの響きは勿論、ドイツ風の重厚な響きや、VACHのStrad.、YAMAHAのXENOのようなダークな響きも似合わない。 ニッカン・ファンファーレ・トランペットの持つクールでストレートな音が最も相応しい。ファンファーレが公募された時期は明らかではないが、公募作選定がおこなわれたのは1962年11月である。楽器が開発されていた時期と、ファンファーレが公募されていた時期とは重なっており、楽器製作の時点ではファンファーレは完成していなかった訳であるが、東京オリンピックの開会式での演奏という共通の目的に向かった楽器製作者の意図と作曲者の想いは重なっていたのである。
公開 2007.12.29.
改訂 2008.01.05.
改訂 2008.02.06.

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