JAMELLA:日本メロフォン連盟 / Japan Mellophone Alliance

序文



 それはインターネット掲示板への、ある投稿からはじまった。

 先日、メロフォン(正確にはメロフォニアム)を入手しました。が、この楽器のことがイマイチよく分かりません。マウスピースもちゃんとした物がついていない状態です。   この楽器を持っている方、
  また色々知っている方、
  あ〜やっちゃった・・・と思っている方、
何でもかまいませんからいっぱい書き込んでやってください。それでは宜しくお願いします。

 メロフォン。それは日本では、ほぼ絶滅したアルト音域の金管楽器。50歳前後のブラスバンド経験者なら、だれもが音楽室の片隅におかれていたメロフォンを思い起こすことだろう。現役ホルン吹きなら、最初はメロフォンだった、という人が少なからずいるはずだ。その楽器は、新しいフレンチホルンが来るたびに一台、また一台と楽器倉庫の隅に追いやられ、そしていつの間にか、姿を消してしまっていた。

 メロフォンについて詳しく知りたければ、国内屈指のマニアが管理しているこのページを見て頂ければよい。

http://sendai.cool.ne.jp/burukong/samo/

 およそアルト音域の楽器がみなそうであるようにメロフォンもまた、試行錯誤〜改良改造の時代を歩んできたのがよくわかるだろう。年代物のメロフォンには高度に複雑な転調システムを備えた物や、4通りの換管を有する物まであり、まさに金管楽器のガラパゴスゾウガメである。

 ビッグバンド・ジャズの通なら、スタンケントン楽団にメロフォニアムアンサンブルが加わっていたのを知っているだろう。メロフォニアム、それは厳密にはコーン社がフロントベルメロフォンに付けた商品名だ。ジャズ用に開発されたその楽器は、やがてマーチングバンドに重宝され、やがて各社が製作しだし、その系譜は今日のマーチングメロフォンへと続いていく。その間に、あの愛嬌のある丸い形は失われ単なる肥満体のラッパという情けない姿に変わりはててしまったが。

    話題を戻そう。

 先の投稿者が投げかけた疑問に応える声が、やがて少しずつ集まりだした。

 最初は、マウスピースをいかにして手に入れるか?という話題が主体だったが、やがて話題は「メロフォンの本当の音は?」という点に集中していった。

 遠い記憶の中のメロフォンは合奏の中でいつも調子はずれの音をモコモコ出している音痴な楽器だった。それが本当の音なのか?。そもそもメロフォンはフレンチホルンの代用楽器、あるいは入門楽器だったのだろうか?。代用楽器だったら、なぜ、わざわざ右巻き/左巻きを入れ替えたのか?。入門楽器だとしたら、いったい誰が複雑な転調システムを取り付けようとするだろうか?。あの斬新なサウンドを生み出し続けたスタンケントン楽団がアンサンブルの中に取り入れるだろうか?

 そもそも、なんとか苦労して手に入れたマウスピースも、Vカップあり、Uカップあり。楽器自体のレシーバー径さえ、メーカーによってまちまち。疑問はふくらみ続けるが、誰も正答を出すことはできない。「本当のメロフォンの音」を聞いたことがある人はいないのだ。

 メロフォンとは何か?。議論を深めるに連れて、メンバーの疑問は確信に、そして信念に変わっていった。メロフォンは決してフレンチホルンの代用楽器でも、初心者向けの入門楽器でもない。金管楽器の進化の過程で産み落とされたアルト楽器のあるべき姿の一つに間違いない。そして我々がメロフォンの真の音色を探求せずに、いったい誰がそれを為すというのだ?。

 音色を掲示板上の文字だけで伝えるのは無理がある。掲示板でのやりとりがオフ会に向かったのは必然だった。

 第1回 2004年 夏
 第2回 2005年 夏

http://sendai.cool.ne.jp/burukong/samo/jpg/ofkai_mello_name.jpg
 第3回 2006年 黄金週間
 第4回 2006年 夏

http://sendai.cool.ne.jp/burukong/samo/offkai.htm


 関西圏が中心だが、遠くは長崎、神奈川からの参加もあった。先のHP管理者は宮城県在住故、毎回涙を飲んでいる。回を追う毎に、持ち込まれる楽器のヴァリエーションは増えていった。まさにアルト音域金管楽器の進化、試行錯誤の過程を再現するかのように奇々怪々な異形の楽器が持ち込まれ、音色と吹奏感、マウスピースとの相性が語り合われた。他のアルト楽器と比較検討することで、ますますメロフォンの独自性は確かな物となり、メンバーの思いは信念から信仰に近づいていった。*1)*2)

*1) 今やフロントベルメロフォンは我々の間では「御神体」と呼ばれている。

*2) 音色の追求は口実で、要するにコレクションを見せっこしたかっただけなのだが、誰もおくびにもそんなことは云わない。

 アンサンブルにおいては、当初は、トランペットアンサンブル譜やホルンアンサンブル譜が流用されていたが、やがてオリジナルのメロフォン合奏用のアレンジもレパートリーに加えられるようになった。異形、異音色、モダンピッチ、オールドピッチの共存するアルト楽器のアンサンブルは毎回抱腹絶倒の出来であった。紙面でサウンドを公開出来ないのが実に残念だ。

 そして、2007年5月5日 OBA:大阪ブラスアライアンスにおいて、ついに第5回目のオフ会が催されたのである。OBAは店頭にメロフォンが置かれている(但し非売品)全国でも数少ない管楽器専門店である。集まったメロフォナーは関西圏中心に奈良、大阪、兵庫、滋賀から10名。今回は純粋にメロフォンアンサンブルを楽しむことを主題に置いたため、集まった楽器の大多数(二本を除き)はメロフォンの範疇であった。饗宴 は13時から17時まで続けられ、さらに場所を二次会場に移し、夜半過ぎまで異形のアルト楽器についての深遠な議論が続けられたのであった。


 by AZU  初稿 20070508


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JAMELLA : 日本メロフォン連盟
2007.08.14.